3月議会、1項目目の一般質問です。
質問趣旨
市役所に手話通訳者の配置を求める
ろう者にとって、複雑な行政手続きや様々な相談をするためには専門の手話通訳者が必要です。ろう者との十分な意思疎通を保障することは、必要な行政サービスと思うが、いかがか。
1 聴覚障がい者(ろう者)のための生活支援のさらなる充実に向けて
聴覚障がい者、以下ろう者と表現したいと思いますが、ろう者にとって手話は言語であり、意思疎通の手段です。ろう者の基本的人権を保障するために、言語として手話を使える環境を法的に整える必要から、「手話言語法」制定を国に求める意見書はH28年3月までにすべての都道府県、すべての市町村で採択されました。本市議会においても、H26年12月に全会一致で採択されています。国においては未だ法制化には至っておりませんが、都道府県や市町村レベルでの条例制定の動きがみられます。
一方、H26年「障害者権利条約」を批准した日本は、H28年「障害者差別解消法」施行により、自治体において障害者に対する合理的配慮を法的義務としました。ろう者にとっては、日常生活のいたるところで手話通訳者等を介して意思疎通を図ることができれば、「きこえない」ことは障壁ではなくなります。そこで、ろう者の生活支援のさらなる充実のために、質問します。
(1)手話通訳者派遣事業のさらなる充実について
手話通訳者派遣事業は、ろう者が必要とするとき、手話通訳者を介して意思疎通を図る支援をする事業です。利用者と行政が身近で顔の見える関係のきずける基礎自治体においてこそ、利用者の様々なニーズに対して柔軟に対応していくことが可能となることから、地域生活支援事業に位置付けられています。本市では、この事業を今まで市の社会福祉協議会に委託していましたが、委託先を変えると聞いています。そこで本市の手話通訳者派遣事業の今後の方向性について伺います。
次に(2)今後の市の役割について、質問します。
これまで、市の障害福祉課は、手話通訳者派遣事業について、いろいろな場面で支援策を講じてきました。今後は、さらなる施策の充実に向けて、ろう者の様々なニーズを直接つかむことや、ろう者がより生活しやすくするために、手話通訳者派遣事業についての窓口になることが、障害福祉課の大きな役割と考えますがいかがでしょうか。
次に(3)市役所に手話通訳者の配置を求めることについて、質問します。
手話通訳者派遣事業とは別に、ろう者がいつ市役所へ行っても手話通訳者がいて、複雑な行政手続きや様々な生活の不安に対し十分な意思疎通ができる、そういう当たり前の市民生活を市が保障すること。これは、ろう者の長年の切実な要望です。そこで市役所への手話通訳者の配置を求めますがいかがでしょうか。参考までに、例えば、開庁時間に常時1人の手
話通訳者を配置した場合の人件費は、いくらになるか、伺います。
答弁 福祉部長
(1)(2)について
聴覚や言語機能などに障害のある方に対する手話通訳者の派遣につきましては、市が利用登録の窓口となり、手話通訳者の確保と派遣調整の業務を社会福祉協議会に委託して実施しています。利用者は希望する日時と利用目的を社会福祉協議会にFAXで申請することにより当日希望する場所に手話通訳者が派遣されます。利用者の状況としましては、本年2月末現在の登録者は61名、市登録の手話通訳者は18名となっています。市はこれまで社協委託により単独で事業を実施してまいりましたが、近年利用者の高齢化に伴う病院受診時の通訳要請など派遣希望が増加しており、希望日が重なると市登録の通訳者のみでは調整が難しくなる事例も生じています。手話通訳者の確保につきましては、近隣市町村の他、県内各地に在住の通訳者にも協力を呼び掛けてきましたが、必要数を確保することが難しい状況となっています。そこで本年4月より県全域にネットワークをもち、手話通訳者派遣に取り組んでいる一般社団法人茨城県聴覚障害者協会に委託先を変更する予定で準備を勧めています。委託先変更の理由としましては、第1に登録通訳者が103名所属しているため、利用希望日が重なった場合でも派遣調整が容易にできること。第2に利用者が市外に出かけた時に、現地の通訳者を利用できること。第3に専門的な通訳技術を習得したものとして厚生労働省令にもとづく手話通訳士技能検定試験に合格し登録を受けた手話通訳士が25名所属しており、利用者が権利関係など大事な話をするときにより専門的な通訳が可能になることなど、利用者の利便性向上に資することが見込まれるためです。
次に手話通訳者派遣業務の障害福祉課窓口への設置については、広域化によって県内全域の手話通訳者の中から利用者の希望日に合わせて通訳者を依頼することになるので、委託先に一元的に調整事務を実施することが適切であると考えています。なお現在も初回の登録は障害福祉課で受付をしているほか、利用に関する相談などに応じるなど、利用者のご意見を伺う機会は確保されているものと考えています。
今後については、市は事業の実施主体として、委託先との情報共有化を始め、運営状況の確認、必要に応じて指導助言など行いながら適正な運営がはかられるよう取り組むとともに、より一層利用者の声に耳を傾け、利便性の向上に努めてまいります。
答弁 総務部長
(3)について
本市では聴覚に障害がある方への市民サービス向上を図るため、窓口担当職員を中心に社会福祉協議会が主催する手話講座に毎年派遣をし、手話によりコミュニケーションを図ることができる職員の育成に努めています。また、様々な内容を説明するうえで、法律等の専門用語など講座で習得した基礎的な技術では説明が困難な場合や、手話ができる職員が不在の時には筆談等によっても対応しています。こうした対応により聴覚に障害のある方から特に大きな不満やご要望はいただいておりません。
なお、開庁時間に常時1人の手話通訳者を配置した場合の人件費については、嘱託職員や臨時職員などの非常勤の一般的な事務職として任をした場合には年額で約190万円となりますが、これは一番安いパターンですが、これは金額の問題ではなく、過去に実施した調査の結果からも、本市においては常時1名を配置すべきというには言えない状況であることから、引き続き職員研修等により窓口担当職員の手話技能の向上を図っていくとともに、関係団体の皆さんのご意見を伺いながら、市役所の窓口サービスの向上について検討を進めていきたいと考えています。
再質問
(1)今まで市の社会福祉協議会がやっていた手話通訳者派遣事業ですが、それをこの4月から県の聴覚障害者協会、「やすらぎ」と通称言ってますが、「やすらぎ」に委託変更するということで、いろいろ利便性が向上する理由をご答弁いただきましたが、県に手話通訳者が沢山そろっているかというと、現在手話通訳者103名ということで登録していますが、県に登録している手話通訳者も高齢化などの問題があり、実際に動ける通訳者は30人くらいだと聞いています。県内の自治体で独自に手話通訳者派遣事業を続けているのは4月からは水戸市だけになってしまい、あと本市を含めて43市町村は県に委託ということになります。43市町村への派遣を実動数30人くらいの通訳者で調整するということですから
県に委託したから、全く安心ですと任せきりにできる状況ではないというふうに考えています。県レベルでの手話通訳者の養成は喫緊の課題です。同様に本市においても手話通訳者の養成が喫緊の課題であると考えています。そこで手話通訳者の養成について、どのように考えているのか伺います。
答弁 福祉部長
本市に登録している手話通訳者は18名、現在派遣希望者が増加している状況の中において、その増加を図っていくことは必要であると考えています。
現在手話通訳奉仕員の育成については社会福祉協議会に委託しまして手話奉仕員要請研修事業などをおこなうとともに、手話通訳者を希望する方も対象としましてその講座の中にレベルアップ講座を用意して手話通訳者を目指す方の支援に努めています。今後、手話通訳者の増加を図るためにより多くの方に講座を受講していただくよう、引き続き市報また
「ゲンキネットひたちなか」などにより、さらなる周知に努めていきたいと考えています。
再質問
障害福祉課のほうで今後もろう者の相談に応じていく、意見を聞いてその声に耳を傾けていきますというご答弁ありましたけれど、そうはいっても、ろう者の方が障害福祉課の窓口に行って十分その窓口で手話で対応できるかというと、なかなか窓口の職員が手話で対応できるだけの力量を持っていないのが実情だと思います。それで、そういうときには筆談でという答弁でしたけれども、筆談というのはろう者の方にとっては非常に難しくて、私たちが普通に言葉を文字にしてやりとりするというそういうことにはならないんですね。日本語の助詞とかの使い方が、なかなか文字で表現できなくて、筆談で正確に情報をやり取りするというのは非常に難しい、それは窓口の職員が一番わかっているんじゃないかと思います。そこで今の答弁にあったように利用者の声に十分耳を傾けるということであれば、少なくとも障害福祉課の窓口に手話でしっかり意思疎通できる専門の手話通訳者を配置すべきではないかと考えますが、ご答弁お願いします。
答弁 総務課長
職員の手話講座への受講の状況を申し上げますと、研修は合併前から実施しておりまして、過去5年間での受講状況ですと延べ20名が受講し、その職員は福祉事務所を中心に現在配置されている状況です。講座の内容は、大体その年によって期間が違ったりするんですが、6か月から9か月、週1回実施されまして、全20回から30回実施されているという状況です。この研修にはスキルの維持アップの為に3年連続して受講して頑張っている職員もおります。このことが先ほどご答弁しました通り、聴覚障害者の方からご意見やご要望が出ていないことにつながっているのではないかと考えています。
先ほども答弁した通り、聴覚障害の方だけでなく、障害者の方全体に対する窓口のサービス向上には努める必要があると考えていますので、関係団体の皆様のご意見を伺いながら今後とも窓口サービスの向上について検討していきたいと考えています。
再質問
市の職員が社協で行う手話講座に積極的に参加されて、勉強されているということは非常に大切なことだと思いますけれども、それによって身につけた手話の力量と実際にろう者の方と手話でやり取りする力量というのは非常に差があるということなんです。
社協でやっている手話入門講座、1年受け、そのあとさらに次の基礎講座を1年受け、それでもまだまだろう者の方と手話でやり取りを十分にです、挨拶とか自己紹介くらいだったら、定型的なやりとりだったらできるかもしれないんですけれども、ろう者の方がほんとに生活上とか気持ちの上でのいろんな悩みを手話で表現してそれで手話でやり取りするまでの手話の力量には満たないということなんです。
そういう意味で本当に責任を持って手話でやり取りするためには、専門の手話通訳者がどうしても必要だというふうに思いますし、これは当事者の方から要望とか不満とかが出ていないとおっしゃいましたけど、これはほんとに大きな間違いで、10年来求めていることではないかと思います。窓口に手話通訳者をおいてほしいというのは。私はほんとにそういうことを聞いていますので、ぜひそういう声に耳を傾けて、専門の手話通訳者をおいてほしいと思います。
私の調べたところによりますと、県内6つの市で、市役所に手話通訳者を配置しています。役所に行けば手話通訳者がいて、どの窓口にもその手話通訳者が同行してくれる。日常の心配事を聞いてくれ、そのうえで該当する窓口を案内してくれる。それだけでなく、何か難しい文書などについて、こういうことだと手話で説明してくれたり、電話でのやり取りが必要な件に関しては、手話通訳者が間に入ってくれたり、そういうことが、市役所に行けば、大体解決するというふうに聞いております。日中、家族がいないときでも、わざわざ手話通訳者の派遣を依頼しなくても、自分が市役所に行けば、いろいろなことが解決する、これは、ろう者が普通の市民として自立して暮らすことを保障する、大切な行政サービスだと思います。
障がいを持っている方はろう者だけではないと、いろいろな障害者の方がいるので、すべての障害を持った方への窓口でのサービスの向上に努めますということでしたけれども、それでしたらば、障害者差別解消法が定められましたけれども、市役所のすべての職員が障害者への不当な差別的取り扱いの禁止及び合理的配慮の提供に関して適切に対応するために必要な要領を定めた、「職員対応要領」の策定が必要だと考えます。この策定は市町村においては努力義務とされているものですけれども、「職員対応要領」の策定については、いかがお考えかお聞きします。
答弁 総務部長
これは考え方の問題なのかなというところもありますが、手話通訳者の方、市役所の行政全般についてプロフェッショナルではないのかなというふうに思います。で、その方がその都度間に入るということは誤解を生むリスクが倍になるということも思うところであります。それから前回の質問の方で、筆談は大変だということをおっしゃいましたけれども、筆談というか、例えば専門用語ですね、それを文字でやり取りするということ、これは手話通訳者の方が入っても必要になることなのかなというふうに思っております。
ろう者の方が文字でのやり取りにどういうご不便をお持ちなのかまで私は存じませんけれども、そうしたことで対応は可能であるのかなと思われます。
それから、差別関係の要領については、関係団体の皆様のご意見も伺いながら、そういう必要があるということであれば、そういう対応をしていきたいと考えています。
再質問
筆談では、ろう者の方は非常に不便を強いられているという実態がありますので、そういうことも今後はしっかり調査して、ろう者の実情を知ってほしいと思います。
2011年3月の東日本大地震のとき、津波による死亡者は障害者が健常者の2倍にも上りました。体の不自由な障害者は自力では逃げられなかった、津波警報が聞こえなかったろう者は逃げなかった、そういう状況下で障害者の死亡率は健常者を大きく上回りました。
ろう者が安心してひたちなか市で暮らし続けるために、市としてどういう施策を考えているのか。大災害が起きた時に、聞こえない自分たちの命がどう守られるのか。そこまでの安心・安全をろう者は求めており、地域で手話通訳者派遣事業ができなくなった状況に対して、利便性以上に命の不安まで感じているのではないかと、私はそういう認識を持っています。
今後は、市としてしっかりこれはろう者だけに限らず、障害者全般についてですけれども
「職員対応要領」のことも言いましたけれども、いろいろな関係団体から意見を聞いてしっかり検討していっていただきたいと思います。
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