2月1日発行の「広報みなみそうま2月号」に南相馬市成人式の様子が載っていた。
その中に新成人代表で佐々木日可吏さんが発表した「成人の誓い」が全文掲載されていました。これから南相馬市を盛り上げていくであろう若者たちの南相馬市に向けた気持ちが伝わるような誓いなのでここに全文掲載したいと思います。
成人の誓い
本日私たち新成人のためにこのような盛大な成人式を開催していただき誠にありがとうございます。市長様はじめ、ご来賓の皆様からのご祝辞、励ましのお言葉を頂きましたことを、新成人代表として感謝申し上げます。
今から1年10ヵ月程前、誰もが経験したことのない大規模な災害となった東日本大震災は、歴史に大きく記されるものとなり、犠牲になった方々もたくさんいました。私たちの地元、南相馬市も津波の被害に遭い、私の大切な友人や思い出の土地を一瞬でなくしました。大好きだった海岸沿いの景色も今は変わり果てた姿となり、震災を思い出すたびに心が痛み、津波に対する憎しみ、目に見えない放射線による影響に対しての悔しさでいっぱいになります。
しかし、復興に向けて少しずつ前進していることが目に見えますのは、一緒に震災を体験した家族や仲間など人と人が支えあってきたからです。たくさんの方々の繋がりがあるからこそ、立ち向かうことができているのだと感じております。
これから先、更なる復興に向けて、軸となるのが私たちであり、もう一度、笑顔のあふれる地元にしていくことが私たちの役目です。どんなに辛く、苦しい環境であっても人の支えあう力、人と人との繋がりで作られる、無限大の力からあれば、どんな困難も絶対に乗り越えられることができると、震災を通じて感じることができました。
震災のつらかった思い出が記憶から薄れていかぬよう、この南相馬で慈しまれて育った私たちが、その魅力と、命の尊さを後世に伝えていき、よりよい南相馬市を作り上げ、もう一度戻りたいと思えるような街にしていくことが私たちの使命と思っております。
当時は、食料不足、医療不足などの問題があり、二次被害で亡くなられた方もたくさんいることを知りました。生きたくても生きられない方がいたことを思うと、やりきれない思いに胸が詰まりますが、私たちはその亡くなられた方々の分も精一杯生き、私たちができること、私たちにしかできないことを、最大限に発揮し、責任と奉仕の心を持ち生活していかなければならないと感じております。
私は現在、大学で医療を学んでおります。昨年は山中教授がiPS細胞を作り出すことに成功し、ノーベル生理学賞を受賞するという、今後の医療発展に向けての進歩が期待される年にもなりました。山中教授は、たくさんの失敗と挫折を味わい、工夫を重ね、立ち上がり、今の自分があると言っておられました。そこから、失敗を恐れずに挑戦する気持ち、高い目標を掲げて努力することの大切さだけでなく、家族の愛の強さ、人間の力の無限大さを日本中が感じたことと思います。
私は、この南相馬市に生れたことを誇りに思います。医療従事者として地元に戻り、笑顔や思いやりのあふれる街にし、今まで支えてくださった多くの方々の健康を支え、地域に貢献していくことが、私の願いであり、使命だと考えています。
今日、新成人としての第一歩を踏み出すことができましたのは、私たちを二十年間教え導いてくださいました、家族、先生方、私たちの成長を見守ってくださいました地域の皆様、共に励ましあった友人の支えがあったからです。この感謝の気持ちと東日本大震災で亡くなられた方々の冥福をお祈りして、私たちのさらなる成長と、社会の一員として貢献することをここに誓い、新成人代表の言葉とさせていただきます。
新成人代表 佐々木 日可吏
震災と原発事故以来、南相馬市に戻り生活する人は中高年だけになるのではと思われましたが、若い年代の方も頑張っています。震災と原発事故の悲惨さを経験した若者たちは、気持ちや考え方が変わってしまったのではないでしょうか。あの甘えたような雰囲気よりも、しっかりした考えを持ったたくましさが感じられるようになりました。復興、復興と言いながら一向に進まない状況で3年目を迎えようとしている今、これからが本当に大変な状況になっていくと思われます。環境の良いところへ避難している若者たちは、もう南相馬市へ帰るという気持ちが薄れてきていると言います。帰ってきて大変な思いをするよりも移住して安定した生活を送ることを望んでいるんです。若者たちが南相馬市へ戻って頑張りたいと思えるような環境作りを急がなければなりませんね。
南相馬市に若者たちが戻り、活気あふれる街に復活してくれることを期待したいと思います。