女性アナウンサーの草分け的存在、吉川美代子氏(TBS)の新著が話題だ。「アナウンサーが教える 愛される話し方」(朝日新書)で、今月13日発売される。中身はアナウンサーの声の出し方、プレゼン、司会、スピーチのノウハウなのだが、その最終章が圧巻で、今の女子アナブームをケチョンケチョンにこきおろしているのである。
吉川氏は1977年にTBS入社後、37年間アナウンサー一筋で活躍してきた。来年5月に定年を迎える。
〈わたしはこれまでずっと「女子アナ」ではなく、「女性アナウンサー」としてプライドと自覚を持って仕事をしてきました〉という吉川氏。それだけに今の「女子アナ」が我慢ならなかったようだ。
吉川氏によると、今のアナウンサーには4つの亜種があり、「男性アナウンサー」「女性アナウンサー」「ベテランアナウンサー」そして「女子アナ」だという。吉川氏が許せなかったのは、最後の「女子アナ」になる。その批判の凄いこと。
〈「女子アナ」がアナウンサーの亜種であろうが、新種だろうが、週刊誌やスポーツ紙の記者やカメラマンにとっては、まさに飯の種、ありがたい存在に違いありません。一方で、心ある視聴者にとっては、タレントのようなかっこうをしたり、漢字を読み間違えたり、放送界の環境汚染源といえるかもしれません〉
〈必ずしも、「女子アナ」は放送局の社員とは限りません。タレント事務所に所属している「女子アナ」もいますが、ニュースを読む機会は多くありません。いまどきの高校生と変わらない遊び着ファッションと、甘えた声でニュースを読むことがあります。原稿の内容を理解しているのかは、はなはだ疑問です〉
〈放送局社員の「女子アナ」はどうでしょうか。わたしが新人アナウンサー研修で、みっちり教えたはずの発声や発音やアクセント、間違いやすい表現、言葉づかいなども、「女子アナ」にかかれば、無残にも砕けちり、粉々になって消えてゆくことがあります。(中略)漢字を読めないことを売り物にする「女子アナ」さえいます〉
極めつきは、以下の部分で、まさしく一刀両断だ。
〈パパラッチに追い回され、ボーイフレンドとのデートや買い物姿を写真に撮られる。(中略)でも「女子アナ」はめげません。細い脚を誇示するような短いスカートでしゃがむ。公道でキスをする。「女子アナ」はサービス精神旺盛なのでしょうか。これでは、写真週刊誌にねらわれても自業自得と言わざるを得ません〉
吉川美代子氏に改めて聞いた。
「80年代後半頃から、若い女性アナウンサーが『女子アナ』と呼ばれ、バラエティーに出るようになりました。技量より個性が重視された。最近はタレントが情報番組のMCを務める時代、局アナとの線引きが曖昧になっているし、自覚のない『女子アナ』がいるのも現状です。東日本大震災以降、いざというときは放送局のアナウンサーとしてきちんと情報発信していかなきゃいけないという意識が少しは芽生えてきた気がします。ですが、どうしたらいいのか、形にできないと意味がない。アナウンサーを名乗るなら、教養や技術を身につけて、自覚を持ちましょうと誰かが厳しく言わなきゃいけないと、メッセージを込めました」
女子アナに「反論」があるのなら聞きたいくらいだ。
※引用しました。
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