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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

空に架かる橋  14

2022-09-17 15:55:08 | 「空に架かる橋」

「いつまでも、こうしちゃいられないな」
明美の身体を嘗め尽くす役得を終えると、
男は明美の手をつかんで、
立ち上がらせた。
中にはいれと男にうながされた明美は
プログラムの実行を掛けられた
ロボットみたいにだった。
男の銃に威嚇されているわけでもなく、
明美が男の言葉にしたがったのは、
中に居る、あたし達のことがきになったからにちがいない。
銃口の先を歩く明美が診察室の
扉を開けた。
明美の眼にうつしだされたのは裸の患者達。
だけど、その人数はここに居た人数じゃない。
明美の見ている前で
二人の素裸の患者が兵士の銃に促されあゆみだしてゆく。
どこへ?
地下室への扉があけられ患者はその扉の向こうに追いやられる。
こんなとき程、明美の頭のよさが悲しくなる。
明美はその場所に千秋もあたしも、先生二人が居ない事を
その瞳で確認していた。
「ど・・どうして・・?」
明美は敵兵の行動を察したんだ。
銃口を向けていた男は明美の呟きをチャント聞いていた。
「役に立つものはころしゃあしないよ」
役に立つもの・・・。
この場合、医療に従事するあたし達の無事をいみするのだろうか?
「フォルマリン室に・・・つれていってるのね?」
それがどういういみであるか。
明美は察している。
男は明美の言葉に答えようとせず、
殺戮の組織の始めからの細胞のように
部隊の命令を把握している。
明美に
「お前は役に立つ・・・ころしゃしない」
と、一時の身の保全を確証だてる。
「次」
明美の後ろの突然の声に
明美が振り向いた。
その場所には
源次郎さんがたっていたんだ。
患者をフォルマリン室に送り出した兵士は
先の兵士と交代すると、
次の患者を抹殺の部屋につれてゆく。
明美は・・・・。
「まって・・」
精一杯の懇願がこもった声だった。
「まって・・・。そ・・そのひとは、民間人よ。兵士じゃない」
明美に応えた男の声は静かだった。
「だけどな・・・彼も・・役にたちゃあしない。
それどころか・・・いつなんどき、我々をおびやかすかわからない」
「どういう・・・こと」
「いつ、寝首をかられるか・・・この不安をちょうけしにしていい程・・・彼は役にたちゃしない」
不安?
不安をつみとるため・・・?
そのために民間人の
こんなよぼよぼのおじいさんまで、
フォルマリン浴槽に・・・?
男は明美にいった。
「おまえもいきのびていたければ、自分の役目に忠実になるしかないってことだ」
明美が男の言葉に不思議な顔をしたのは・・・。
男の言うように
生き延びたい自分なぞ居なかったせいだった。



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