□映画「海と大陸」
海の中に投げ込まれた漁の網。
ズームになりスクリーンを見ている私が網に絡めとられそうな錯覚に陥った。
網は罠（わな）のようでもあり、逃げられない運命の糸のようでもある。
海上には小さなオンボロ漁船。
楽しそうに網を引く２０才の青年フィリッポ（フィリッポ・プチッロ）と、彼を愛（いと）おしく見つめる祖父のエルネスト（ミンモ・クティッキオ）。
怖い程に碧（あお）い海が美しい。
小気味よくない、不思議なテンポで始まる冒頭から魅力的だ。
舞台はシチリア島南西にあるリノーサ島。
フィリッポの父は２年前に海で亡くなった漁師。
母ジュリエッタ（ドナテッラ・フィノッキアーロ）と叔父のニーノ（ジュゼッペ・フィオレッロ）はエルネストに漁を辞め廃船の助成金で新しい生活を始めるべきだと説得するがエルネストは動じない。
バカンスの季節、フィリッポとジュリエッタは家を改装し観光客に貸し、自分たちはガレージで生活することに。
最初の客はマウラ、ステファノ、マルコという３人組。
眩（まぶ）しい程チャーミングなミラノっ子のマウラに同世代のフィリッポは密かに恋心を抱く。
■難民を救う、救えず
漁に出たエルネストとフィリッポは沖でアフリカからの難民船を見つけ溺れかけている数人を陸まで運ぶ。
中でも妊娠し動けないサラ（ティムニット・Ｔ）を見捨てることができず、サラと息子をガレージで匿う事にする。
迷惑がるジュリエッタもサラを出産させ産後の体調を気遣う。
圧政から逃げてきた難民を案じるエルネストたちと、違法な難民は観光ビジネスのイメージダウンだと反発するニーノたち。
島民の心は揺れる。
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