明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

日米ゴルフ観戦記(19)全米女子オープン観戦始末記

2023-07-13 10:53:00 | スポーツ・ゴルフ

今回もまた、予選を通らずにあえなく敗退した選手が大勢いたし、決勝に進んでもボロボロでスコアを作れなかった選手も大半であった。だが彼女等は何れも日本のトップツアーで優勝争いを繰り広げている強者揃いなのだ。なのに全く歯が立たずにスゴスゴと去っていく。何故だろうか?

男子プロでも過去のメジャーに勇んで挑戦した選手は一杯いるが、皆、同じような結果に終わっている。日本とアメリカの「レベルの違い」と言ってしまえばそれまでだが、その辺の問題も含めて、今回私の見た全米女子オープンの「個人的総括」を書いてみた。まず「全米女子オープン」という大会の難しさについて、一言。

私は毎週「日本とアメリカの女子のツアー」を欠かさず見ている熱心なファンである(単にゴルフが好きなだけだが、私自身のゴルフについてはブログ「理想スイング2023」をご覧下さい)。レギュラー・ステップアップ、ともに毎週のように開催されているが、最近は「60台前半のビッグスコア」も当たり前のように出てきていて、女子のレベルは相当上がっているな、と感心して見ていた。アメリカツアーでも、畑岡奈紗に続いて2年目の古江彩佳が堂々たる存在感を見せているし、勝みなみと西村優菜もルーキーで頑張っているので「いよいよ日本の波が来たか」と期待していた所だ。これまで韓国にやられっぱなしだったアメリカツアーも「徐々に日本勢が力を出し」てきて、飛距離でも世界に負けない「飛ばし屋の若手」が何人も出て来ているのは頼もしい。そこへもってきて過去最大の22人もの選手が参加しているとあれば、一大日本ブームが起きても「何ら不思議は無い」状態だったのである。

それが蓋を開けてみれば、相も変わらずの「ボロボロで予選敗退」が続出だ。・・・何とかならないの?

まあ、勇んで出て行った選手には「ちょっと酷」なことを言ってしまった。渋野日向子に「全英、初出場で優勝!」という快挙を目の前で見せられてしまった選手達にすれば、「私だって勝てるかも?」と思うのも無理は無い。実際、渋野よりゴルフが上手い選手やポテンシャルの高そうな選手は一杯いると思うのだ。今回参加した山下美夢有などは昨年度の年間平均スコア60台を日本人で初めて記録した程の逸材である。それに岩井ツインズや吉田優利やアマチュアながらドライバー平均飛距離が260ヤードを超える馬場咲希など、そうそうたるメンバーが参加しているし、アメリカツアーメンバーの畑岡・古江・笹生・勝・西村も虎視眈々と上位を狙っているのだ。言わば「万全の態勢」で臨んだ今年の全米女子オープンだったと言えよう。

結果は畑岡が最終組で回って4位T、古江が6位Tとジャンプアップしてトップ10に入って我々を楽しませてくれたが、後は木下彩13T、笹生20T、西郷33Tぐらいか目についただけで、岩井明愛・吉田・山下・西村・上田・馬場(アマ)などは予選落ち。渋野は14オーバーで133位Tと下位に甘んじた。まあこれは「いつもの光景」である。

これはある意味しょうがないのかも知れない。何しろ世界最高峰のメジャー「全米女子オープン」なのである。日本の公式戦ですら「アンダーパーが出るかどうか」というくらいセッティングが厳しくなるのだから、当然その数倍も難しくなるのは「考えれば当たり前」であろう(賞金もその分10倍位高い)。その最も厳しいコースに事前準備もせず、日曜日試合をしてそのまま飛行機に乗って「いきなりコースイン」した選手も多い筈だ。それで「上位に食い込むプレー」を期待する方が「無理・無理」というものである。やはり畑岡奈紗や古江彩佳のようにアメリカのツアーカードを取って、「1年間戦った上で」メジャーに挑む。そういう準備を着実にして、その上にさらに「時の運」が味方してようやく勝てるのがメジャーなんじゃないだろうか。それだけプレーが難しいから、それだけ優勝に「価値がある」とも言える。ファン目線で言えば「打つまでに考える事がめちゃくちゃ多い」だけに、それだけ「見ていて楽しい大会」と言っても間違いないだろう。

1、畑岡奈紗
今回の主役は何と言っても畑岡奈紗である。彼女はアメリカのツアーメンバーであり、既に6勝もしている実力者だ。そして偉大な岡本綾子・天才宮里藍という大先輩が成し遂げられなかった全米女子オープン優勝という栄冠に、今「最も近くに迫っている」のが彼女なのである。そしてそして、3日目を終わって何と「トップ」に立っているではないか!(これに冷静でいられるファンが一人でもいるだろうか?)。あと一日、あと18ホールを無難に乗り切れば、黙っていても栄冠は彼女のものなのだ。誰もがその美しいシーンを待ち望んでいたであろう・・・

とまあ、期待はMAXに膨れ上がったが、結果は皆さんご存知の通りである。畑岡奈紗の試合後のインタビューでは、勝てなかったのは「パターが入らなかったこと」だと言っていた。どんな試合でも、結局は「パター」が決まらなければ勝つことはできない。勿論今回、ランキング上位の実力者が軒並みスコアを落としているのには色々と他にも理由はあるだろうし、パターだけが勝負を左右する訳では無いだろう。だが最終日堅実にパーを重ねて「勝ったコープーズと同じ69」で回った古江彩佳は、終わってみれば6位タイと見事トップ10でフィニッシュしてインタビューでは「やり切った顔」をしていたのが印象的であった。

普通に考えれば、畑岡の成績は「大変良くやった」と思う。優勝したコープーズは69・70・71・69と安定してアンダーパーをキープしていたのに比べて、畑岡は69と初日こそ良かったが2日目に74と崩れて最終日も76とオーバーパーを2回も打ってしまった。3日目が飛び抜けて「神懸かり的に」物凄い66というスコアを叩き出したが、これは彼女にしてみれば「一年に一度」位の奇跡的な出来だったんじゃないか?、と私は思う(彼女も本当はそう思ってるんじゃないかな)。

とにかく我々にしてみればアメリカのメジャーというのは一回のビッグスコアは出せなくても、少なくとも「アンダーで回ってくれば勝てる」というのが分っただけでも収穫である。コープーズは確かに派手さはなかったが正確なショットを連発し、殆んどミスと言える程の大きなミスを出さずに優勝した。それが出来たのは、ゴルフというゲームが「正確さを競う」ものであれば当然の結果だろう(ではコープーズがこのあと連勝し続けるのか?と言えば、それは NO である。彼女にとっても今回は「奇跡がやって来た」一週間の出来事だと思いたい)。しかし畑岡も、そういう意味ではコープーズ以上に優勝カップに相応しい実力があった、と私は確信している。ただ、今週は彼女の週ではなかっただけである。

では、他のランキング上位の選手も同じことだが、どうすれば彼女は「メジャーを取れる」のか?

解説のレジェンド岡本綾子が言っていたが、色々なシチュエーションに合わせてボールを自在に打ち分ける技術を練習するよりは、一つの持ち玉をとことん磨き上げて「自分のもの」にして勝負するほうが良いようである(私の記憶なので違っているかも知れない)。そしてパターは、インタビューで彼女が言ったように、如何に「タッチを合わせる」かが鍵である。全てはこの「強弱のコントロール」に掛かっているのだ。それをコントロールする為には、いつも「一定のメンタル」が不可欠であることは言うまでもない。では究極の質問、「3日目の神懸かりなパット」をどうやったら毎回だせるか?

或いはセカンドを一発で入る簡単なラインに乗せられるような「正確無比なアイアン」を身に付ける方が先なのか?。いやそれよりも、ラフやバンカーに入れないでフェアウェイキープ出来るドライバーの方が大事だろう・・・云々。

米メジャーはそもそもが、それら全てをクリアした実力者が満を持して挑んで来る高額賞金大会である。しかもこのあとにはエビアンがあり、そして全英というこれまた価値のある「ゴルフの最高峰」の大会が控えているのだ。畑岡奈紗には下を向いている暇はない。全米女子オープンは今回取れなかったが何れ取るとして、先に「全英を取っちゃう」というのも全然悪くはない考えなのでは?

ということで、畑岡には今回は残念な結果に終わった訳だが一旦心を切り替えて心機一転、メジャーに1番近い人間として「全英優勝!」を目指して頑張って貰いたいものである。

2、古江彩佳
2番手は実はCMEポイントランキング4位の古江彩佳。驚くなかれ、畑岡よりも上なんである。アメリカに主戦場を移して2年目の今年はちょっぴり余裕も出て来て、世界ランクもトップ10間近という良い状態が続いている。そう言えば世界ランク1位のコ・ジンヨンと古江の「トップでの切り返しの間」が、何か似ていると一部のファンの間では評判のようだ(それ、私である)。今回も他の選手がボロボロとスコアを落としていたバックナインを、綺麗なパープレーでまとめたのは見事の一言と感心した。まあ、今年「メジャーを取ってやる!」とまでは意気込んでいるわけではないだろうが、全英は案外と「良いところ」までは行くのではないか(例えば2位とか)。スコアが伸びずに荒れた試合になって来れば、彼女にもチャンスがあると思う。

3、西郷真央
国内ツアーでは中々上位には顔を出せていない彼女だが、もともとアメリカ・ツアーに興味があると言っているそうだから、ゴルフ自体も復調してることだし来年あたりQTを受けて、勝や西村の後に続いて「米ツアーに本格参戦」するのではないか?と期待している。彼女はアメリカでも十分やっていける「抜群のゴルフセンス」を間違いなく持っている選手だとジャンボ尾崎も太鼓判を押しているだけに、今後とも彼女の同行には「大いに注目」したい所である。

4、三ヶ島かな
個人的には、私は最終日の「黒一色のウェア」はシックで超カッコ良かったと思っている。まあ、スコアの方は大した事無かったが、父娘で全米オープンに来れただけでも最高だろう。日本人は全体的に「ちんちくりん」の選手が多い中で、見た目にスタイルがまあまあ良くて、バッチリ「上品な雰囲気」が決まっていたのは流石である。帰ったら試合を少し休んでも、先ず「膝」を完全に治す事に専念したらどうだろう。それから再スタートしても良いように思う。ま、とにかく、お疲れ様でした!

5、勝と西村
勝は性格的に「明るい脳天気」だから、結果が悪くてもそれ程落ち込まないだろうけど、西村は相当「ガクっ」と来てるんじゃないだろうか?。勝は何しろ飛距離が出るから「何とかやれる」とは思って見ているが、西村はこれまでも「上位に来れた試合」というのが記憶に無い。体格的には宮里藍が世界ランク1位になった例もあるから一概にどうこう言えないが、それでも「それに代わる何か」がまだ見えてこないところに、彼女の苦しさ・難しさがあるように思う。上原彩子のように日本ではそれ程名前を知られていない場合は成績が出なくても何とかやって行けるが、西村のように日本では人気があった選手が「アメリカで毎回下位」というのは耐えられないのでは?。無理してアメリカで頑張らなくても、日本でそこそこやった方が「良くない?」って私は思うけどねぇ。西村よ、早く帰って来い!

6、山下美夢有
目下、日本ツアーで断トツ一位の彼女の立場にしてみれば、予選敗退というのは生半可には受け入れがたいものがあっただろうと想像する。彼女の武器である正確なドライバーとグリーンを捉えるアイアンの精度、特に「縦距離の合わせ方」はまさに職人技と言っても過言では無い。ツアー全体のスタッツを見ても、飛距離以外はすべてトップ5に入る凄い数値を揃えて来ているのだ。当然、成績もぶっちぎりの1位である。だから彼女が年間平均スコアで日本人初の60台を叩き出したのも、何ら不思議な事ではないのだ。なのに予選敗退とは・・・(コメントなし)。ゴルフに限らずスポーツの世界では「絶対」という言葉はない。そんな「絶対王者」山下にしても、あっけなく予選でペブルビーチを去らざるを得なかった。無念である。

とまあ、記事的にはだいぶ盛って書いたが実際は「それほど凹んで」はいないかも、若いだけに。まあ山下の場合はそれ程アメリカに行こうとか考えている訳じゃなく、日本でしっかり稼いで年に1億か2億で10年ほどガッポリ貯めたら、後は気楽に好きな事して「人生を楽しもう」ってタイプじゃないかな?、知らんけど。

・・・・・・・・・・・・

総括:さて、今回は駄目だったが次回以降に優勝する可能性がある選手は誰なのか?。個人的には畑岡に是非とも優勝して貰いたいと願ってはいるが、余りこの大会に思い入れがない選手、初出場に近いノーマークの選手が奇跡的なゴルフをして「知らないうちに優勝!」なんてことが十分有り得るのがこの全米女子オープンというメジャーなんである。そんな「超新星」が現れて来ることを期待して、今度は「ゴルフの最高峰・全英女子オープンを見ようと思う(またまた寝不足にならなきゃいいけど・・・)。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿