明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

酒の値段

2016-10-20 23:00:44 | 生命・健康・医療
「花の舞」純米吟醸、杜氏・土田一仁、特別限定酒。実に芳醇な甘い香りが、喉の奥を優しく撫でる。これは間違いなく、今までのんだ酒の中でも超一級の一品だと思う。静岡の酒は旨味がふくよかで、自然の恵みが米に豪華な味を付与している。4号瓶を買ったが、昼間冷蔵庫で保管し夜におちょこで2、3杯飲むを繰り返し、一週間ほどかかったが味の豪華さは落ちるどころか、むしろ香りがより妖艶な感じで、口の中に広がる存在感が増したように思える。

新潟の冷えた切れ味や東北の重めの沈んだ味とは違って、静岡の酒らしい豪華な味わいが、飲み手を天下人の気分にさせてくれる。静岡は以前より有名な酒の産地として気にはなっていたのだが、一度飲んだらやみつきになること請け合いである。味が深いというか芳醇というか、音楽で言えばピアノ独奏ではなく、ストコフスキーのオーケストラのように、音の幾重にも重ねられた複雑で甘美な和音のアンサンブルである。つまみはなんでも構わないが、出来ればそのままストレートに味わってもらいたい。

静岡の酒はまだまだあるので、たった一本飲んだだけで美味いの不味いのというのも失礼なのは十分承知している。僕のよく行くビックカメラ柏店の酒売場は、全国の酒を色々と取り揃えてあるので、今度は臥竜梅を飲んでみようとおもっている。少し前、G7で供された磯自慢などもリストに入っているし、開運 初亀 喜久酔 正雪 高砂と、インターネットで調べると有名所がずらっと出てくる。磯自慢はビックカメラで売ってなかったので、入手困難なのかもしれない。僕が写楽を探していると言ったら、写楽は取れませんと店長が言っていたので、物によっては難しいのだろう。昔からの付き合いというのも、酒によってはあるらしい。律儀な酒蔵である。そういう酒を小さな酒屋さんで見つけた時には、嬉しくなってつい買ってしまう。

ところで最近、酒で失敗しなくなった。と言っても飲み方ではない、買い方である。4合瓶で1400円以上の酒しか買わないことにしたら、「外れ」がなくなったのだ。酒の値段は市場価格で決まるのだから、美味い酒は高くなり、不味い酒は値が下がる。それで1400円が僕にとってのボーダーラインというわけである。うがった見方をすれば、不味くても高くすれば売れると思うかもしれないが、長くは続かない。やっぱりそれなりの価格に落ち着くのである。花の舞は1600円ぐらいしたと思ったので、特別張り込んだ口だったが、高いだけのことはある素晴らしい酒だった。

酒の値段は正直である。その点、ワインのほうが難しい。産地がいろいろ過ぎるのだろう、私はワインの味は分からないので構わないが、市場価格が機能していないのだと思う。余り通ぶったワイン評論が本になり過ぎたせいで、本当の価値がわからなくなったのだ。酒も余り評論が出回ると、酒本来の価格体系が崩れてしまう。十四代も写楽も、なければ「他の酒を呑む」で十分なのである。大枚はたいてプレミアつけて呑むほどではない、と最近は思っている。酒を余り持ち上げ過ぎないことが、長く酒と付き合う方法ではあるまいか、これは四合瓶1400円の縛りをつけた「ケガの功名」でもある。

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