明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

自分図書館の勧め

2018-05-23 17:00:00 | 今日の話題
ビュールレ・コレクションというのを「ぶらぶら美術」で取り上げていた。番組はルノワールの少女像をフィーチャーして進行していたが、私は別の興味をもって見ていた。ビュールレは武器製造業で財を築いた人のようであるが、芸術に造形が深かったようである。私もお金が有ったら、とちょっと羨ましい。それにしても印象派・後期印象派・それ以後が一堂に集められた個人収集は稀有のレベルである。

セザンヌを説明するところで司会の山田五郎がいみじくも「絵が下手でも良くなった」のはセザンヌからだ、と言っているのが「なるほどね」と思った。確かにマネからモネ・ルノワール・ドガと「一応対象と描かれたもの」は人間の認識の上では「ある程度は一致していた」のだが、もうセザンヌやゴッホになってくると「対象と絵とは別のもの」と考えなくてはならなくなってきている。ビュールレはそういう「絵画の変化」に沿って収集していたんだな、と知れるのである。

そんなことを考えていたら、私の蔵書を並べた図書館もあってもいいな、なんて思ってきた。私がその都度興味にまかせて読み漁った本を文庫から雑誌に至るまで年代順に網羅するのである。つまり私の好きな本だけを何の制約もなく並べている図書館だ。私という人間がどういう人なのかを知らなくても、その図書館の持つ「本を選んだ眼または精神」はなんとなくわかる。ああこういう事に興味があるんだな、と思ってくれて「同じ興味を共有してくれる人が集まる」うちに、ちっちゃなコミュニティが出来上がる。そんな「同類の集まり」があれば幸せである。

大好きな天智天皇・天武天皇関連、邪馬台国、倭の五王や継体天皇などの歴史書、平家物語・太平記・四鏡などの物語書、木曽義仲や平清盛などの伝記物、万葉・古今・新古今・西行などの詩歌、権記・小右記・方丈記・徒然草・枕草子などの古典、それに奈良・平安の都市関連本などなど。もちろん宇宙物理学や脳の科学、映画の解説に音楽CDに車、それにゴルフスイングの理論書も当然ながら並ぶ。つまり私が興味を持って読んだ本・雑誌など意味無くズラッと全部出しちゃうわけ。図書館というより私の家の書斎そのまんまにお邪魔した感覚を味わってくれれば成功である。

そもそも何を読んでいるかは「その人を一番端的に表す方法」だと思っている。本というのは好みが別れるものだ。恋愛小説が好きな人もいれば、科学技術解説書が好きな人もいる。人それぞれだ。マンガが好きな人はまた別なような気もするが、昨日テレビで録画しておいた「中国製作の三国志一回目」を見ていたら急に三国志を読みたくなって、Amazonで「井波律子訳の講談社学術文庫版三国志全4巻」を注文してしまった。ネットは疲れた時のストレス解消法でもある。

友達の家に招かれて書斎に入れてくれるような間柄であれば、わざわざネットで買う必要も無いわけで、そういう意味でも「お気に入りの図書館」があれば、毎日通ってもいいのにと思ってしまう。柏の市立図書館はやや遠くて読書環境は良いとは言えないが、何より「読みたい本が少ない」ので余り行っていない。まあ、色んな人が色々な目的でやって来るので全部に対応するのも難しいのはよく分かる。そこで自分図書館である。

ベラスケスを見に行ってから絵画もレパートリーに入ってきたので、読書・コンサートと美術館が今の所の趣味になっている。お金もかかるがコンサートや美術館は「その時々の出会い」でもある。一度見逃すと次にいつ来るか分からないので困るのだが、読書は究極は国会図書館にでも行けば読めるからまだマシだ。ここのところは体調が余り絶好調でもないので「歴史に迷い込む」ことが出来ないのが残念だが、そろそろ外に出て「人が大勢いる所で集中する」練習をするのもいいかなと思う。これは脳を健康に保つエクササイズでもあるそうだ。それで喫茶店で読書とか電車で読書とか、若い頃に戻って始めてみようと思う。昔は通勤の電車で「続日本紀」などの超難読本を読んでいたものである。

中身は海馬の衰えと共に忘却の彼方へ消え去るお決まりの結果に終わるのだが、年を取ると「だいたいのイメージ」がわかればそれでいいんじゃないかと思うようになって来た。それは作者の意図である。自分図書館がその「作者の意図をわかった上で集められた」ものであれば、大いに価値があると私は思う。誰か同じような趣味の人が蔵書を図書館にしてくれないかな。何人かで集まって図書館を開くのもいいかも。今度奈良に引っ越したら考えてみよう。

それにしても高橋マリ子さん、素敵ですねぇ。まあ今回の主題とは殆ど関係ないけど、「ぶらぶら美術」の隠れた人気を支えているのは彼女の魅力だと私は断言したい。だから最後のミュージアム情報は「おすすめポイント」である。皆さんも是非一度ご覧いただけると、彼女の魅力がわかると思う、とまあ私が宣伝するのもどうかと思うけど。

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