切られお富!

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本日、十二月歌舞伎座、第一部を観てきた!(伊達の十役)

2021-12-04 14:09:20 | かぶき讃(劇評)
当代猿之助の伊達の十役って初役ですか?この芝居というと、三代目猿之助の代名詞くらいの芝居だったのに、最近は海老蔵の演目みたいになっていたので、澤瀉屋にこの芝居が戻ってきた感じがして、楽しみにしていました。簡単に感想。

最初が先代萩の御殿から始まって、仁木の引っ込みまで。二幕目が大詰めで、残りの八役のダイジェストみたいな構成でしたが、堪能しました。

御殿は、千松が市川右近くん(右團次の息子ですね。尾上右近に尾上左近もいるから、詳しくない人にはややこしいかもしれんせんが・・・。)で、もうこんなに大きくなったんだ~という感慨もありましたが、やはり、猿之助の政岡でしょう。一見ちょっと線が細く見えるので「おっかさん」っぽくはないけど、台詞の感じが坂田藤十郎の政岡を連想しました。確か教わってたんじゃなかったっけ?もっとも、本当の子供の「おっかさん」ぽく見えた政岡は、坂田藤十郎と七代目梅幸くらいしか思い浮かばないし、歌右衛門、玉三郎だって、「おっかさん」ぽかったとは言えないので、必ずしも傷とは言えないでしょう。

猿之助の政岡は、千松が殺されてからのグっと迫るような熱演が良くて、先月の師直の迫力に続く迫力でした。この人は、「伊達の十役」でなくても、「先代萩」の本役でも充分行けると思いました。というのも、今後の「先代萩」政岡の演じてといえば、菊之助くらいしか思い浮かばないので、ちょっと人材不足ですから。ちょっと前までは、菊五郎、玉三郎、藤十郎がそれぞれ違いのある政岡を演じていて面白かったんだけど、菊五郎はもうやらなさそうだし、玉三郎もやってあと一回くらい?福助、魁春もやらないでしょうから。本当は、時蔵、雀右衛門クラスがやらないといけないし、鴈治郎も上方の型を残してほしいですね。

で、今回出色は、中車の栄御前。わたしは今回のこの役、てっきり門之助がやるんだと思い込んでいたのですが、花道でアレっと思ったら中車でした。実は悪者のこの役だけど、一見悪者に見えない感じで朗らかに演じていた秀太郎のこの役も好きだったけど、陰のある感じの中車のこの役もよかったです。この人はもう歌舞伎の役に自信を持っているというか、テレビや映画でやってきた経験が舞台でも活きると確信しているように見えます。歌舞伎の世界に入ってきたときはガチガチの緊張感が垣間見れたけど、最近は新歌舞伎だけじゃなく、古典でも全然御曹司たちに引けを取らないというか、中高年になっても凄い学習能力なんだと思います。尊敬しますね。

そして御殿の「悪の華」八汐は巳之助。先月の「対面」五郎が目の覚める出来でしたけど、良くも悪くも立ち役の八汐だなと思いました。千松を殺すときの迫力は立ち役の迫力というニュアンスで、わたしの大好きな八汐、十七代目勘三郎や二代目鴈治郎の八汐のいやらしいくて憎らしい八汐というよりは、立ち役の力感で押している感じがしました。仁左衛門。梅玉の八汐も邪悪感はもっとありますしね。その点でいうとストレートだなと。なお、出番は少ないけど、笑也・笑三郎の沖の井・松島も落ち着いた雰囲気でよかったですね。

床下は、猿之助の松ヶ枝節之助(先代萩だと荒獅子男之助)が迫力があってよかったですね~。ただ、わたしの荒獅子男之助の生涯ベストは断トツで吉右衛門だったりするので、ちょっとフラッシュバックしましたね~、播磨屋の姿が・・・。そこから仁木に変わるところが、「伊達の十役」の凄いとところだけど、仁木も悪くなかった。でも、澤瀉屋だから、本当は宙乗りの引っ込みが観たかったなあ~(今は仕方がないけど・・・)。次回に期待ですか。

二幕目は、十役中の残り八役のダイジェストといった感じで、今の興行形態では仕方がないんだけど、近い将来あるであろう猿之助の完演版「伊達の十役」を期待させるに充分なものでした。個人的には、頼兼、道哲、与衛門&累がよかったですね。

というわけで、簡単な感想でした。




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