切られお富!

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国立劇場 歌舞伎鑑賞教室「毛谷村」

2022-06-18 23:19:41 | かぶき讃(劇評)
今朝、建て替えのニュースが入ってきた国立劇場ですが、毎年恒例の歌舞伎鑑賞教室を観てきました。簡単に感想。

最初が毎回恒例の「歌舞伎のみかた」。解説は中村玉太郎だったけど、随分背が高くなったのね、というのと、ちょっと前まで子役って感じだったのに、すっかり大人ねえ~と、年寄りみたいなことを思いましたね。ま、わたしの方も年取ったってことなんですが。

で、本題の毛谷村。

又五郎の六助、歌昇の微塵弾正、綜真の弥三松という親子三代に、結構回数を重ねている気がする孝太郎のお園。後室お幸は吉弥。

又五郎の六助は特に後半の口跡がよくて、吉右衛門の得意演目だっただけに、播磨屋の芸が継承されている気がしました。又五郎・歌六の兄弟には、吉右衛門亡き後、古典の大役を歌舞伎座の本興行でやってほしいと切に望んでいます。こういっては何ですが、吉右衛門劇団系の芝居の主役は今後、芝翫や幸四郎あたりがやるんでしょうけど、吉右衛門の至芸を観てきたものとしては、「まだまだ料簡が若い、若い」。台詞の味わい深さでいえば、歌六・又五郎兄弟に老け込まず、気を吐いてほしい。晩年の十七世羽左衛門が古典の大役を高齢ながら務めたみたいな、そんな活躍を期待しています。もっとも、歌舞伎座が昼夜二部制にならないと、こういう座組をしにくいかもしれませんが。でも、歌六や又五郎が勧進帳の弁慶や渡海屋の知盛をやってもおかしくないと思いますよ。

ただ、期待しているだけにあえて言うと、前半が少々地味かなという気がしなくもない。

わたしは、今の東西の芸達者は、西の鴈治郎、東の又五郎だと思っていて、以前二人とも歌舞伎鑑賞教室で千本桜の狐忠信をやったけど、それぞれによさがあったと思っています。鴈治郎の方は、今月の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」で、二代目でも三代目でもない、四代目の境地とでもいうような個性を感じたけど、もうこのベテランクラスだし、自分の色を積極的に出してもよい気がする。

孝太郎のお園は仁左衛門の六助で何度もやっているから危なげなかったけど、わたしの知っているお園の最高は先代雀右衛門で、重い腰つきの虚無僧姿と、女武道から六助と知ってからの匂い出すような色気の変化率の凄さが記憶にあるだけに、さらなる円熟をというところか。

歌昇の微塵弾正、吉弥の後室お幸もキリっとして悪くなかったけど、やっぱりこの舞台で圧倒的に気を吐いたのは繰り返すようですが又五郎ですね。三津五郎が亡くなった後、三津五郎が担ったであろう渋い立役として、期待してます。

以上、簡単ですが。
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