切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

あんまり暑いんで、『雪国』の話。

2015-07-31 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
暑いですね。暑いの苦手です。こういう時って、寒いところの風景でも思い描いて、心を涼ませるしかありません!音楽ならフィンランドの巨匠シベリウス、小説なら、ちょっと安易だけど『雪国』!で、ついでに映画も見直してみましょうか。というわけで、『雪国』をめぐってあれこれ。

相当ひっさびさに川端康成の『雪国』を読み返し、三島由紀夫の『作家論』に入っている解説とか吉村昭の『わが心の小説家たち』の『雪国』に関するくだりを確認したりして、それなりに楽しんだのですが、島村という妻子持ちの男が、気のある芸者駒子に、「君とは友達でいたいから、別の芸者を紹介しろ」っていうくだりは、ひきますね~。いや~、身勝手!

とはいえ、とはいえ、感覚の極致というか、ガラスや鏡の効果を駆使した冒頭は、三島いうところの読者への「感覚上の訓練」にふさわしい技巧だとは思いました。ただ、わたしにいわせれば、やや作者が酔っぱらい過ぎな作品ではある。

さて、映画ですが、有名な映画化作品としては、東宝の岸恵子&池部良、松竹の岩下志麻&木村功の2本があって、前者がモノクロ、後者がカラー、監督は前者が『夫婦善哉』の豊田四郎、後者が『君の名は』の大庭秀雄。

で、結論からいってしまえば、東宝作品の圧勝ですね。豊田四郎の気合の入った映像美に加えて、岸恵子がまずまずはまり役。岩下志麻も悪くないんだけど、酔っ払って男の部屋に上がり込む芸者にしては、この頃の岩下志麻は真面目すぎるんですよ。その点でいえば、小津安二郎監督『早春』でも、岸恵子は不倫する女を演じてましたしね~。

それと、雪の場面は、やっぱりモノクロ映画の方が感じが出てます。なんといっても、東宝作品のほうが寒そうな画面になっていますから。また、ロケ地もよく雪が降り積もっていて、今じゃあ、なかなか撮れない画になってますよ。

ちなみに、ヒロイン駒子と対になる役・葉子は、前者が若き日の八千草薫、後者が加賀まりこ。で、どちらも悪くはないんだけど、原作に割合忠実な冒頭をもつ東宝版の方が、葉子という役を魅力的に描いていて、若いころの八千草薫を好きなひとには必見!

なお、この映画の撮影時、岸恵子はフランス人監督と婚約を発表、この映画の封切り日に渡仏した彼女は、彼の地で結婚式を挙げたんだとか。その時の立会人が、なんと川端康成!川端センセイ、よほど気に入ったんでしょうね、当時の岸恵子が。

というわけで、暑い夏を家で過ごしている人にお勧めの『雪国』鑑賞でした!

雪国 [DVD]
クリエーター情報なし
東宝


あの頃映画 「雪国」 [DVD]
クリエーター情報なし
SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)


雪国
クリエーター情報なし
新潮社


作家論 (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論新社


わが心の小説家たち (平凡社新書 (001))
クリエーター情報なし
平凡社
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フジのアベチヨさんには憧れ... | トップ | <訃報> 俳優 加藤武 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アメリカの夜(映画日記)」カテゴリの最新記事