切られお富!

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『アネット』 レオス・カラックス監督

2022-08-27 12:44:17 | アメリカの夜(映画日記)
なかなか行けなかったんですが、とうとう映画館で観てきました。レオス・カラックスの映画は一応全部、今まで映画館で観ているんですが、こういう監督はこの人だけです。それだけ、一部の人たちの熱狂的な支持があるということなんだけど、最新作、皆さんはどう思いましたか?というわけで、感想です!!

1983年に23歳の若さで、長編映画『ボーイ・ミーツ・ガール』で監督デビューした「恐るべき子供(アンファン・テリブル)」レオス・カラックス。彼も、はや還暦ですよ!しかも、キャリア40年近くで、長編6本、短編1本。普段何をやって暮らしているんですかね?(ま、上には上がいて、長谷川和彦監督みたいな人もいますが!)

さて、本題の感想ですが、『ポンヌフの恋人』以来の力作ですね。ロックミュージカル構想は『ポンヌフ~』の後くらいから語っていて、「ロミオとジュリエット」をやりたいと確か言っていたんですが、他の監督に先にやられちゃったんですよね。

で、今作はスパークス(懐かしい!というか、この辺のセンスからして1960年生まれの人なんですよね。)の音楽を使ったロックミュージカル映画で、圧巻は冒頭のカット。レオス&その娘本人が出てくるご愛嬌の冒頭からの長回しが凄くて、ここだけでも観る価値あり。また、アダム・ドライバー演じるコメディアンの舞台(特に前半)もカリスマ性があるんでしょうね、素晴らしかった!

ただ、嵐の船の場面(わたしにいわせれば、石原裕次郎の『鷲と鷹』以来の激しい嵐!)とか、マリオン・コティヤールの泳ぎながら歌うところなど、いいシーンはあるのに何だか全体の印象は、冗長な感じがしなくもなかった。

それと、こう言っては何だけど、この人は良くも悪くも「恐るべき子供」のままなんだろうなとも思いましたね。「激しい愛の映画しか、引き出しがないのか?」って思いませんでしたか?『ボーイ・ミーツ・ガール』は若いのに大人びた映画だったけど、この映画は今も20代の終わりくらいの気分の人の「愛の映画」みたいだった。40年近いキャリアで、愛以外の何か(例えば社会性みたいなことなど・・・)を学ばなかったのか?娘がスタジアムで歌おうとする場面なんて、『竜とそばかすの姫』の方が勝ってます。また、歌でいえば、冒頭を除けば、『ホーリーモーターズ』のカイリー・ミノーグの歌うシーンを超える歌はなかったですね。このあたりも弱かった部分。

というわけで、最後の仕掛けはちょっとグッと来たけど、最初の2作はなかなか超えないなと。このあたり、80年代初めにデビューした作家高橋源一郎や島田雅彦に対するフラストレーションに通じるものがありますね。もちろん、観てるわたしが年を取ったというのも原因かもしれませんが・・・。

以上、youtubeなどで、好きな人が褒めすぎているので、少々辛辣なことを書きました。でも、トータルでは映画館で観てよかった映画です。興味のある方はどうぞ!




















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