武智鉄二といえば、歌舞伎ファンには今の坂田藤十郎や中村富十郎を育てた武智歌舞伎の演出家として有名ですよね~。でも、一般的には、猥褻裁判を引き起こした映画『黒い雪』の監督としての方が有名なのではないでしょうか?というわけで、この作品のDVDが某有名レンタル店にあったので借りて観てみました!簡単に感想っ。
三島由紀夫や大島渚が法廷に立って無罪を勝ち取ったという、「猥褻裁判」の元になったのがこの映画。
話は、米軍基地周辺の売春婦の生態を描いたもの…というように一般には解説されていますが、実際のところは、売春宿の女主人を母親に持つひとりの青年の「青春の彷徨」って感じの映画ではありますね~。
・詳しいストーリーはコチラ→ 黒い雪(1965) - goo 映画
で、裸の女性が米軍基地の周辺を走り回るという場面ばかりが話題になりますが、この場面、今観るとそんなにたいしたことないんですよ。
主人公の青年に騙された清純な女性がショックのあまり裸のままで走り回るという場面ですが、バスト・カット(バストより上を映した画面サイズのこと。)よりさらに若干上くらいのアングルで撮影していますし、いま観ると、猥褻どころか健康な感じさえしてしまう!
まあ、「猥褻裁判」って時代の産物だったんだなあ~ということはいえるのではないでしょうか?
もっとも、この映画が裁判になった本当の理由は、この映画が反米映画だからということも噂されてはいますよね。事実、米兵が殺害される場面や、米兵の横領を描いたシーンも出てきますし、そもそも、「裸で逃げ回る女性は今の日本の象徴だ」と当の武智鉄二も法廷で発言したとか、しないとか…。
で、わたしの感想を率直にいうなら、「少し芝居の演出のうまい松竹ヌーヴェル・ヴァーグ」って感じですかね~。
モノクロ画面に素人っぽい役者の芝居。でも、芝居の演出家だけあって、ワンカットの中で画面の奥行きを使った演出がなんとも冴えている。(松竹時代の吉田喜重より全然うまい!)
画面の奥にいる人間と手前の人間。カメラが動きながら人物を追ったり、余韻の残る小道具のクローズアップで終わるカット。
ひょっとしたら、溝口健二監督の『雨月物語』なんかの撮影技法を意識しているのかもしれませんね~。
ただ言える事は、この映画って官能を描いた映画でもなんでもなくて、反社会的なテーマ(あるいは反米的テーマ)を描くために性を取り上げた映画だってことですよ。
つまり、テーマ主義の映画だから松竹ヌーヴェル・ヴァーグに近接してるっていうのがわたしの率直な感想です。
ただ、後年作られた『白日夢』(わたしが観たのは、佐藤慶と愛染恭子が出てるやつ)が、テーマ主義でなく官能を描こうとして失敗していることを思えば、結局このひとは、ある種自分のイデオロギーの具現化を目指した表現者であって、テーマが薄まると能力を発揮できないのではないかと思いますね。(たとえば、神代辰巳みたいな官能の描ける映画監督とは資質が違う。)
というわけで、万人には薦めませんが、映画マニアな方は参考にどうぞ!
なお、直木賞作家の松井今朝子さんがご自身のブログで『黒い雪』について語っています。
・松井さんの記事。
また、武智鉄二に関しては、松岡正剛さんのHP「千夜千冊」に『伝統演劇の発想』という本の記事がありますね。
・「千夜千冊」(『伝統演劇の方法』)
それと、この映画って、なんで『黒い雪』というタイトルかというと、最後の雪のシーンを反転画像にしていて、雪が黒くみえるからってことみたい。
あと、ついでながら以前わたしが書いた武智鉄二に関する記事もどうかお読みください。
(わたしが以前書いた記事)
・武智鉄二とホリエモン
しかし、問題作の記事が2本続いちゃったなぁ~(笑)。
最近だと、この本にも武智鉄二の話が出てきます。↓
三島由紀夫や大島渚が法廷に立って無罪を勝ち取ったという、「猥褻裁判」の元になったのがこの映画。
話は、米軍基地周辺の売春婦の生態を描いたもの…というように一般には解説されていますが、実際のところは、売春宿の女主人を母親に持つひとりの青年の「青春の彷徨」って感じの映画ではありますね~。
・詳しいストーリーはコチラ→ 黒い雪(1965) - goo 映画
で、裸の女性が米軍基地の周辺を走り回るという場面ばかりが話題になりますが、この場面、今観るとそんなにたいしたことないんですよ。
主人公の青年に騙された清純な女性がショックのあまり裸のままで走り回るという場面ですが、バスト・カット(バストより上を映した画面サイズのこと。)よりさらに若干上くらいのアングルで撮影していますし、いま観ると、猥褻どころか健康な感じさえしてしまう!
まあ、「猥褻裁判」って時代の産物だったんだなあ~ということはいえるのではないでしょうか?
もっとも、この映画が裁判になった本当の理由は、この映画が反米映画だからということも噂されてはいますよね。事実、米兵が殺害される場面や、米兵の横領を描いたシーンも出てきますし、そもそも、「裸で逃げ回る女性は今の日本の象徴だ」と当の武智鉄二も法廷で発言したとか、しないとか…。
で、わたしの感想を率直にいうなら、「少し芝居の演出のうまい松竹ヌーヴェル・ヴァーグ」って感じですかね~。
モノクロ画面に素人っぽい役者の芝居。でも、芝居の演出家だけあって、ワンカットの中で画面の奥行きを使った演出がなんとも冴えている。(松竹時代の吉田喜重より全然うまい!)
画面の奥にいる人間と手前の人間。カメラが動きながら人物を追ったり、余韻の残る小道具のクローズアップで終わるカット。
ひょっとしたら、溝口健二監督の『雨月物語』なんかの撮影技法を意識しているのかもしれませんね~。
ただ言える事は、この映画って官能を描いた映画でもなんでもなくて、反社会的なテーマ(あるいは反米的テーマ)を描くために性を取り上げた映画だってことですよ。
つまり、テーマ主義の映画だから松竹ヌーヴェル・ヴァーグに近接してるっていうのがわたしの率直な感想です。
ただ、後年作られた『白日夢』(わたしが観たのは、佐藤慶と愛染恭子が出てるやつ)が、テーマ主義でなく官能を描こうとして失敗していることを思えば、結局このひとは、ある種自分のイデオロギーの具現化を目指した表現者であって、テーマが薄まると能力を発揮できないのではないかと思いますね。(たとえば、神代辰巳みたいな官能の描ける映画監督とは資質が違う。)
というわけで、万人には薦めませんが、映画マニアな方は参考にどうぞ!
なお、直木賞作家の松井今朝子さんがご自身のブログで『黒い雪』について語っています。
・松井さんの記事。
また、武智鉄二に関しては、松岡正剛さんのHP「千夜千冊」に『伝統演劇の発想』という本の記事がありますね。
・「千夜千冊」(『伝統演劇の方法』)
それと、この映画って、なんで『黒い雪』というタイトルかというと、最後の雪のシーンを反転画像にしていて、雪が黒くみえるからってことみたい。
あと、ついでながら以前わたしが書いた武智鉄二に関する記事もどうかお読みください。
(わたしが以前書いた記事)
・武智鉄二とホリエモン
しかし、問題作の記事が2本続いちゃったなぁ~(笑)。
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最近だと、この本にも武智鉄二の話が出てきます。↓
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