重低音のBlue Canary

♪ 思いつくままを、つたない文と photo で …

自分の浅はかさを…

2006-03-31 | つれずれ
7年前の夏――。
町内の盆踊りに、親に連れられて行った当時4歳の男の子S君が、綿菓子をくわえながら歩いていて転び、病院に運ばれました。

診察した医師が、折れた綿菓子の割りばしが喉から頭蓋内に突き刺さっていることに気付かず、傷口に消毒薬を塗り、抗生剤を処方しただけで家に帰したところ、容体が変化し、翌日死亡したことから、「業務上過失致死罪」に問われた事件で、東京地裁は一昨日28日、医師に「無罪」の判決を言い渡しました。

その理由は、適切な治療をしなかった「不作為の過失」を認めながらも、「脳神経外科に引き継がれたとしても、技術的に救命、延命の可能性は極めて低かったため」というものでした。
平たく言えば「どうせ助からなかったのだから」と突き放しているような冷ややかな判決。

原告のご両親はもちろん、多くの人々が釈然としない気持ちで受け止めたと思います。「裁判官には、両親の悲しみが届かないのか」と。

その2日後の昨日30日。
日歯連から自民党旧橋本派への「1億円ヤミ献金事件」で政治資金規正法違反(不記載)を問われた村岡兼造元官房長官に対して、東京地裁は「無罪」判決を下しました。

検察が立証した「謀議の構図」について、その柱になっている元会計責任者の供述は「単なる記憶の減退では説明できない不自然、不合理な内容が含まれ、思い込みや想像で述べている部分」があり、「虚構の可能性がある」と断じました。

そればかりでなく、「橋本(龍太郎元首相)は、政治資金規正法違反に問われる可能性は相当高いと考えられ、このことは、橋本が不自然なまでに本件献金に関する事実を記憶していないと証言していることを説明するに足る」とまで言い切りました。

つまり、「本当のワル」たちが口裏を合わせ、村岡氏をスケープゴートに仕立て上げた、ということですよね。
国民のほとんどが「その通り!」と同感し、歯切れのよい判決に拍手喝采したんじゃないでしょうか。

しかも、裁判長は判決を言い渡した後、村岡さんにこう言葉を掛けたそうです。
「今、桜が咲いています。今後のことは分かりませんが、せめて今夜一晩ぐらいは、平穏な気持ちで桜を楽しんでみてはいかがでしょう」

無罪になった村岡氏ならずとも、思わずもらい泣きしそうな「美しい日本語」を、久しぶりに聞きました。

偶然続いた2つの注目の裁判。
その裁判長が、実は両方とも同じ東京地裁の川口政明判事だったことを、私が見た限り、新聞では日経新聞だけが触れていました。

それを知って、ショックでした。
「割りばし事故死」事件で、「裁判官というのはやはり、庶民感情を持っていない、冷淡な人種なんだ」と極め付けてしまっていた自分の浅はかさに。

実は「割りばし事故死」事件でも、川口裁判長は判決時、異例の「付言」をしているんですね。

「本件でSちゃんが遺したものは、『医師には眼前の患者が発するサインを見逃さないことをはじめとして、真実の病態を発見するうえで必要な情報の取得に努め、患者に適切な治療を受ける機会を提供することが求められている』というごく基本的なことだ」
「本件が語るところを直視し、誰もが二度と悲惨な体験をすることがない糧とすることが、Sちゃんの供養になり、鎮魂となるものと考える」

その言葉が胸にジンと響くのは、それが法衣の下の「人間・川口政明」さんの肉声だからなんでしょうね。

川口さんが、かつて他にも、顧問会社に行なったアドバイスが会社の資産隠しを目的にした「強制執行妨害罪」だとして起訴された安田好弘弁護士(オウム真理教・麻原彰晃被告の元主任弁護人)の「冤罪」を晴らし、「無罪」判決を下した判事だったことも、今回少し調べて分かりました。

その時も川口さんは、容疑者として逮捕・立件されたため弁護士活動ができなくなっていた安田さんに対し、異例の謝罪をしています。
「起訴から満5年。裁判長の交代で結審が長引き、ご迷惑を掛けました。今度、法廷で会う時は、(被告人ではなく弁護士という)違う形で会うことを希望します」と。

新聞・テレビなどマスコミが伝える情報の、実は「断片」だけなのにそれを「全部」のように思い込み、物事の是非や、人の善悪を、軽率に判断してしまっていることが、他にもあるんじゃないだろうか……。

そんなこわさを、今回、改めて教わった気がします。

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1 コメント

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コメントのお礼 (七五白書)
2006-04-03 12:07:38
コメントくださりありがとうございました。



大物の罪が問われないのは腑に落ちませんが、ぬれぎぬをはらされてよかったとおもっています。久しぶりによい裁きでした。



何とか更新だけはしていますので、よろしければ、またお越しください。

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