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【本】姥(うば)うかれ

著者 田辺聖子(1928~) 発行者と年 新潮社/1987年
図書館より借用 初出 1985年9月~1987年11月「小説新潮」

78歳の歌子さんは、夫に先立たれ、3人の息子たちとも別居して、
気侭な独り暮らし。大店を切り廻した才覚で、株でもうけ、
書道を教え、訪問販売を撃退し、趣味や社交を楽しんでいる。

「姥シリーズ」は4冊で歌子さん77歳~80歳、著者50代~60代。
1.姥ざかり 2.姥ときめき 3、姥うかれ 4.姥勝手

実はこの本、5年前に同じ図書館で借りて読んだことがあり、そのときの印象が非常に良かった。老いのひとり暮らしの魅力が満載。同じ読後感を期待したのだが、何だか違う・・・輝きと魅力が失せているのだ。本の装丁とか紙面が古びたせいか、それとも視力が衰えたせいか。で、当時の日記を引っ張り出してみたら。

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2002年7月18日 木 

著者がこの本を書いたのは当時57歳、今の私とほぼ同年齢だ。道理で、今の私の気分によく合うと思った。ここに出る姥は70代後半、元気一杯なのは書き手の気分を反映しているのか。60歳前で老人について書くのも生意気なことだ。

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これは、当たっていると思う。健康な人、若い人には病人や老人の外側は描けても、深い内面に迫るには自ずから限界がある。いかなる天才でも 10歳の子供に私は理解できないように。

歌子さんと同年輩だった私の姑も、その当時は自立していたが、すっかり変わったし、私自身もいまやシニアの仲間入り、親たちの変化は否応なくこちらを揺さぶる。

同一人物でさえ、5年でこうも違うのなら、20歳、30歳はなれた他人との違いは大きいだろう。同じ映画や本に対して興味を持つこと、ましてや同じ感想を持つことはまずありえず、違って当たり前、違いの中に妙味を見出すことにしよう。
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コメント
 
 
 
同感 (フリージア)
2007-06-27 23:38:46
私も、元気な40代の時に読みました。独立心旺盛な歌子さんの、いわばカラ元気というか、内心の思いと現実との折り合わせの葛藤の部分は、きっと理解できずに、ただおもしろく読んでいたのでしょう。 

きっと今読めば、「そうはいかないわ」とか「そううまく運ぶものか」なんて合いの手を入れながら、複雑な思いで読むことになるでしょう。

ずっと同じ感動を与え続けてくれるもの、または、同じように感動する感性をもち続けること・・・どちらも難しいのでしょうね。
 
 
 
カラ元気と感受性 (Bianca)
2007-06-28 15:50:47
フリージアさん、こんばんわ。
40代で読まれましたか?
若いときのように感じないのも、経験積んで賢くなったからだと、私は常に自己肯定派なんです。
過剰な感受性が勘違いの元になることが多かった私としては、だんだん磨り減っていくのもまた良しと思っています。から元気というものは、ある意味、他人へのサービスであり、年寄りのから元気はありがたいですね。陰々滅々で世の中を渡っていけるのは、保護者に恵まれたニート、あるいは2枚目俳優の某氏くらいで、どちらにしろ周囲の犠牲が伴います。
このシリーズ、捕物帖が「親分、大変だ!」で始まるように「オカアチャン」「おかあサマ!」という、息子たちからの電話で始まるのが軽快感を出しています。聖子さんは、「機嫌よう1人遊び」していたら、そのうち神さんがご褒美を下さると、つらさや悲しさは出さず、人を愉快にする事をモットーとしていらっしゃる。けなげな戦中派だと思います。ちょっと真似ができませんが。

 
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