goo

〔映画〕銀座の恋の物語

1962年 日活 1h34(@高槻松竹)
監督:蔵原惟繕 脚本:熊井啓 企画:水の江滝子
出演:石原裕次郎 浅丘ルリ子 ジェリー藤尾 江利チエミ 

デュエット曲の定番「銀恋」の曲調と少し違い、心にくいいるメロドラマの秀作。
「冬のソナタ」「若者たち」のまざったような味わいがある。

画家と作曲家を志す男たちの友情とひとりの女性を巡る恋、周辺に生じる秘めた純愛(SEXとは即、ワルのすること、という時代がかつて日本にもあった)、芸術に精進したいが、現実と妥協せざるを得ない苦悩。トラウマとなった米兵と娼婦の混血や戦争孤児としての生い立ち。交通事故と記憶喪失と行方不明の恋人を待つ設定は、韓国ドラマ特有のものだとばかり思ったが、ルーツは日本だったのか?

魅力は以上の人間ドラマに加え、オリンピックを2年後に控えた銀座の、活気あふれる各スポット(高級洋装店:お針子に浅丘と和泉雅子がいる、デパートのM屋、「ユングを意識した」内装の劇場、嬌声とテープの乱れ飛ぶライブハウス)、屋根裏風の主人公の住まい、路上の郵便ポストとか、焼き芋・たこ焼きの屋台、都電の線路の上を疾走する人力車:お座敷に急ぐ日本髪の芸者を乗せている、などすでに時代遅れになりつつある景色が消え行く運命を惜しむかのように、見事なカメラワークで捉えられていることだ。1957年のソビエト映画「鶴は飛んでゆく」(邦題は「戦争と貞操」)を思わせる、空にシルエットが浮かぶサックス奏者も印象的。

ちなみに二本立てのもう一本は1958年「有楽町で逢いましょう」東西のそごうデパートが登場する新喜劇風の人情味あふれるラブコメディだ。休憩時間、ロビーで「よろしぃなぁ、私らの青春時代の思い出!」と話し合う70代半?の男性客。本日の場内は、普段よりやや高年齢化しており、インテリ色はかなり薄くなっていた。60年安保改定前後の彼らの若き日、こうした高水準の映画が大衆に供されていたことは感慨深い。岸首相が「声なき声を聞け」「野球場はどこも満員だ」と開き直ったあのころ・・・

帰りの電車の中、こちらを見つめ続ける浅丘ルリ子の視線が消せずに、私の目にも理由もなく涙がにじんできた。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
« 〔映画〕野良猫 〔本〕美少年... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (kazuko_kawamoto)
2006-10-19 22:17:01
歌も良く知られていますね。歌謡曲など流れてくると、へただけど歌いたくなってきます。最近銀座ぶらついてきました。有楽町も歌のような場所もなかったようです。

懐かしい歌、もう一度聴きたい心境です。
 
 
 
Unknown (claudiacardinale)
2006-10-20 07:18:35
こんにちわ。丁度荒木経惟の写真集「東京人生」を知人から頂いた処でした。今の銀座とはちがって当時は芸術前衛の街だったのですね。写真から当時のエネルギーがひしっと伝わってきます。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-10-20 11:25:01
kazuko-kawamoto様は、毎年必ず、上京されるんですよね。大阪生まれの都会っ子ですものね。

銀座で銀ブラ、心斎橋で心ブラ・・・ハイヒールを履いて、お洒落をして行く、大人の町のイメージが今でも抜けず、ちょっと苦手。私は、もっぱら名画座と、文具の伊東屋、くらいが目的地。そして、有楽町からお堀端を抜けて四谷~新宿とスニーカーとリュック姿で何十回となく歩いたことは東京の一番懐かしい思い出です。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-10-20 11:37:22
claudiacaldinareさま



あのエネルギーはどこから生まれ、どこに消えたのでしょう?



それはともかく、また偶然に似たようなことが起きましたね。ひょっとすると、バイオリズムが近いのかな?



 
 
 
Unknown (ヒロヨ)
2006-10-21 11:11:02
[ブログ]開設なさって、おめでとうございます。これからも、楽しい話題を楽しみにしております。

お身体に気をつけて、がんばってくださいね。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2006-10-21 11:38:35
ヒロヨ様

おいでくださって有難うございます。最近ブログのせいで、夜まで一歩も外出しないこともあるこのごろです。おっしゃるように、身体に気をつけますわ。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。