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映画「暴動 島根刑務所」

              

看守たちが大勢で一人の囚人を取り囲む。
        
1975 東映 95分 監督 中島貞夫 出演 松方弘樹 北大路欣也 田中邦衛 佐藤慶 戸浦六宏 金子信雄 賀川雪絵 ビデオ

昭和23年に実際に起きた島根刑務所内の暴動。暴力は苦手だが、「島根」とタイトルにあるからには、と見ることにした。

当時の世相はどこも殺伐としていたと思うが、なぜ特に島根なのか。
「エス」「ザ・ウェーヴ」という映画にもあるように、権力を握った人間が弱者をしいたげるのは、人間の本性だ。まして他にこれといって娯楽のないこの土地においてをや。

私見だが、当地の人は(当地に限らないのかも知れないが)事大主義で、群れになりたがり、弱いものいじめに走りやすい。小さな権力を握ると、とたんに威張りだす。杓子定規に規則を盾に取ったり、気まぐれや虫の居所で勝手な裁量をする。公平とか正義とか合理性とか、人情に沿って融通を利かすとかいうことがない小役人根性が、官民ともに溢れているように見える。島根に来て5年足らずだが、これに損害を受けたことが何回あるやら。もちろん個々には反対の人もいるが、一人で行動せず常に集団で動く(例を挙げれば、信号の色が変わっても、一人では歩き出さない)ゆえに、表には現れない。

島根の良い点も出ている。炊事場の食材の多さだ。暴動の原因は、食事2回抜きという罰だった。「ここにいると食事だけが楽しみなんだ」と怒る主人公だが、「楽しみ」というだけあって、どんぶり飯に汁物に、おかず一皿、その上に丸い橙色のもの、まさか果物じゃなかろうが、もともとこの土地は食物の豊富なところだ。昭和28年の私の小学3年の給食より昭和23年の刑務所のほうがずっと良いものを食べているのは、本当にそうだったなら、さすがは島根だと思う。単に昭和50年の映画人が事実を知らなかっただけかもしれないが。

まあ私ごとはさておいて、この映画はもっぱら男性連に大いに楽しまれているようだ。腕っぷしの強いアホな主人公の大暴れでスカッとするし、昭和の香りがするというので。

暴動の一夜の狂喜乱舞、解放区となった刑務所内は「酒も飲まずに、だれもが酔っぱらいのように振舞った」。そこで思い出すのが「革命の情熱は、酔っ払いと同じものなんだ」という言葉だ。司馬遼太郎「ひとびとの跫音」にある。

⇒「給食代が百円の頃」 2011-10-04
⇒「ザ・ウェーヴ」   2010-07-28
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