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映画「怪しい彼女」


2014 韓国 125分 島根県民会館名画劇場にて3月21日午後2時より 監督 ファン・ドンヒョク 出演 シム・ウンギョン ナ・ムニ イ・シヌク ジニョン  パク・イナン 原題≪수상한 그녀≫英語≪Miss Granny≫

70歳の老女が突然20歳になる結果生じるドタバタとてんやわんや。
若く美しく歌のうまい女性が時々不用意に老人じみた言動を示すので「怪しい」とみなされるわけだ。

彼女は若くして未亡人になり、苦労して育てたひとり息子が国立大学教授になったのが自慢である。しかし同居のストレスでお嫁さんが倒れ、ホームに行くことに。絶望し遺影を撮っておこうと写真館に行くと奇跡が起きる。

若い頃の夢の歌手デビューも果たすが、結局は新しい人生を生きるより元の人生が良いとさとる。

さて70歳のヒロインを演じるのがナ・ムニ。以前「ハーモニー 心をつなぐ歌」で死刑囚の役をしていた。田中絹代タイプの顔が懐かしい。彼女をいまも慕う幼馴染の男(パク・イナン)は、愛川欣也かビートたけし風。

20歳の彼女がシム・ウンギョン。この人はネットで観客がこぞって絶賛しているが、私は初見。

ひとり息子が大学教授で「老人学」が専門と言うのがミソ。教室で学生たちに老人と聞いて何を連想するかと質問する。身体表面の変化、動作の遅さ、などが醜く邪魔だとして、総じて嫌われている。長幼の序ある儒教国といえども変わらない。韓国で美容整形が大繁盛と言うことは、国全体が若さをよしとし、老いを憎み忌避する風土だということであろう。こういうセリフがあった。各世代の女性を球技に例えれば老人はドッジボールの球のように避けられる。若者はバスケットボールの球のように大勢が飛び上がって捕まえたがる。

ところでヒロインと同じ70歳の私だが、いま20歳に戻るかと聞かれたら即座に「NO!」と答える。あのころ私は、心身共に最悪だった。「アデン・アラビア」の冒頭の「 ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。」に同感する。(もっとも、客観的に見れば、と言うことは性欲に目をくらまされた男性から見れば、当時の私にもそれなりの魅力はあったかもしれない。)

最後に「この映画をすべての母に捧ぐ」と言う字幕。「に捧ぐ」とはすなわち「を賛美する」だろう。ということは、すべての母は賛美されるに相応しい母であれ、であり、もっと言えばすべての女性はそういう母であれという要求を含んでいる。女性が育児ノイローゼになったり、その前に母親になることすら恐れたり拒否したりするのは、こういう有無を言わせぬ世間の風潮に責任の一端があるのでは。よく見れば母親も十人十色、千差万別である。祖母でさえ安心できない。1歳の孫を刺殺する祖母がいる。今朝の新聞によると。

【サロントーク】
小片悦子(おがっち)さんのトークが映画の後約50分ロビーで行われた。彼女は地元で活躍するフリーアナウンサーで韓国映画の熱烈ファンらしい。しかし「JSA」を見るまで、南北分断の現実をあまり知らなかったという。島根は近くにありながら県民は意外に韓国のことを知らない。肯定するにしろ否定するにしろ、その国を知らなくては話にならない。そして知るためには映画は非常に有効であると、彼女は言う。
小片さんより15年~20年年長の私は、小学校時代、李ライン、漁船拿捕、釜山の収容所、ということは新聞ラジオで見聞きしていた。中学生の兄は朝鮮戦争の戦況地図を夏休みの自由研究のテーマにしていた。戦後すぐはこうだったが、なぜか現代史が学校教育から遠くなり、島根でもただ竹島の声だけがにぎやかである。

 →「思い出の19歳バトン」07-11-26
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