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四十八歳の抵抗

1955 石川達三著 

石川達三の著書は今ではほとんどが図書館の奥深く仕舞いこまれていて、一定の手続きをとらなければ読めないので、私のような短気者は即あきらめるのだが、この「四十八歳の抵抗」だけは大活字本で開架にある。人気が高い理由も、読んで納得が行く。引用が多くて文化の香りが漂い、ユーモアにあふれておリ、著者にしては珍しく余裕を持って楽しく執筆しているようなのだ。

男性の48歳とはどういう年齢か。「男として枯れる前に、もう一花咲かせたい」という不埒な?願望がむくむくと芽生える年齢なのだそうだ。つまり、古女房にはない、新鮮な魅力を持つ、青臭い少女に惹かれ、彼女との交際で若返ってみたいのだと。もちろん心だけでなく肉体の面も期待している。「ファウスト」の著者ゲーテは70歳にして17歳の少女に結婚を申し込み、振られて泣いたという。

メフィストフェレスのような部下・曽我法介に誘われて、若返りの道に迷い込む西村耕太郎だが、結局道を踏み外すことはなく、最後は「論語」の「五十にして天命を知る」にたどりつく。曽我は「卍」の綿貫のような噂があるし、ユカという少女は小悪魔で、純真とあばずれが同居し、主人公を手玉に取る。初めは作者が映画の影響を受けたかと思ったが、「月曜日のユカ」(1964)がこの小説に影響を受けているようだ。

それにしても四十八歳とは、七掛けすれば今の六十代後半、つまり、今の私の年齢だ。

>日常生活の軌道から一歩外へ踏み出そうとすれば、忽ち激しい疲労におそわれ

>恋愛というものは、やはり20代の青年がするものであって、50ちかい老人がするものではない。

>ただ一筋の坦々として平凡な降り坂がどこまでも続いているばかり

>浮気だの恋愛だの、要するに妻に対する抵抗、小さなあがきに過ぎない

「恋愛」を「海外旅行」に置き換えると、この夏の私の心境そっくりそのままのようだ。

→「誰の為の女」11‐12‐12
→「ゲーテ」17-6-3
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