映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
E.モランテ「アルトゥーロの島」
2010年06月24日 / 本

こちらはむかしの訳本の表紙
初出1957 著者 エルサ・モランテ 訳者 中山エツ子 原題 ≪L'ISOLA DI ARTURO≫ 2009年刊 池澤夏樹個人編集 河出書房新社世界文学全集1-12
「禁じられた恋の島」という邦題で1962年に映画化、1964年に同じタイトルで邦訳が出された。著者はモラヴィアの12歳年下の最初の妻である。当時20歳の私は画像↑の少年に強く惹かれた(今はそうでもない)が映画は見たことがないし、原作もこんど初めて読んだ。
物語は、ある島に父と2人で住む少年が、父の再婚で空想の世界から現実の世界に入っていく話。一見、少年の性の目覚めを描いた作品のようだ。だがそれだけなら、うんざりするほど、欧米の映画小説で描かれているので、読む気もおきない。この小説は、そういう種類のものとは一線を画しているし、「禁じられた恋」=「義母と少年の恋」と言う解釈で満足するのは浅い読み方である。この父親像には、エルサ・モランテのルキノ・ヴィスコンテへの「つらく激しく不可能な」愛が反映していることを知ると、父親は添え物ではなくなる。地と文が入れ替わり、父親の他の男への恋が前面に見えて来る。少年が抱いていた父=偉大な英雄の幻想が消えると、彼の目に卑小な男があらわれる。しかし恋に打ち込み他の全てに無関心な男は、その情熱の激しさのために、読者の目に大きくなる。ジャン・ジュネの「泥棒日記」から影響を受けたらしいこの作品は三島由紀夫の「午後の曳航」に影響を与えたように見える。
初出1957 著者 エルサ・モランテ 訳者 中山エツ子 原題 ≪L'ISOLA DI ARTURO≫ 2009年刊 池澤夏樹個人編集 河出書房新社世界文学全集1-12
「禁じられた恋の島」という邦題で1962年に映画化、1964年に同じタイトルで邦訳が出された。著者はモラヴィアの12歳年下の最初の妻である。当時20歳の私は画像↑の少年に強く惹かれた(今はそうでもない)が映画は見たことがないし、原作もこんど初めて読んだ。
物語は、ある島に父と2人で住む少年が、父の再婚で空想の世界から現実の世界に入っていく話。一見、少年の性の目覚めを描いた作品のようだ。だがそれだけなら、うんざりするほど、欧米の映画小説で描かれているので、読む気もおきない。この小説は、そういう種類のものとは一線を画しているし、「禁じられた恋」=「義母と少年の恋」と言う解釈で満足するのは浅い読み方である。この父親像には、エルサ・モランテのルキノ・ヴィスコンテへの「つらく激しく不可能な」愛が反映していることを知ると、父親は添え物ではなくなる。地と文が入れ替わり、父親の他の男への恋が前面に見えて来る。少年が抱いていた父=偉大な英雄の幻想が消えると、彼の目に卑小な男があらわれる。しかし恋に打ち込み他の全てに無関心な男は、その情熱の激しさのために、読者の目に大きくなる。ジャン・ジュネの「泥棒日記」から影響を受けたらしいこの作品は三島由紀夫の「午後の曳航」に影響を与えたように見える。
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