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ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

La stoffa dei sogni di Gianfranco Cabiddu イタリア映画の紹介「夢の布」

2017-02-03 21:57:09 | 何故か突然イタリア映画
La stoffa dei sogni 夢の布
監督 ジャンフランコ・カビッドゥ




原作を読んでいたらもっと楽しめたにちがいない。
しかし、読んでいなくても楽しめる。

マイナーな作品だけど、すごーーーくいいのよ、と、映画の紹介に力が入ったのは審査員の一人。

なるほど、かなり評価できる作品。
こういう映画がミニシアターでの上映だけというのは残念。

監督は65歳。ベテランだが、どちらかというと地味系で、これが5作目。
名前からわかるが、サルデニア島出身。
音楽のプロから映画音楽の世界に入り、自分でも映画を作ってみたくなった、という経歴の持ち主。

原作は二つ。

シェークスピアの「テンペスタ」とエドアルド・デ・フィリッポの「コメディの芸術」。
後者はともかく、テンペスタかぁ。。。読んでおけばよかった。

ドラマチックコメディ、いや、基本的にはコメディ。
そう、あまり深く追求しない方がいいと思うところは多い。

サルデニア島の北西のはずれにある島、アジナーラ島は、監獄がある島。

そこへ向かう船が大嵐で沈没してしまう。

乗っていたのは、芝居の一座の家族と、収監されるはずだったナポリのチンピラヤクザ、カモッラのボスと手下二人、そして、ボスの息子など。

島には、15年も住んでるという刑務所のディレクターとその娘(美人)、羊飼いなど、住んでいる人はポツリといる。

さて、島に打ち上げられ、ある意味自由になったチンピラが一座の家族を脅して、一座に加えてもらい、俳優のふりをして島を脱出しようとする。

それを不審に思った刑務所のディレクターが、次に船が来る1週間後までにシャイクスピアのテンペスタを見事に上演してくれれば、との条件を出す。

芝居なんてしたことのないヤクザたちが芝居の練習を嫌々ながら始める。

その間、別な岸に打ち上げ荒れたボスの息子に惚れてしまうディレクターの娘。
人魚姫の世界的?

1週間で即席に作り上げた芝居が素晴らしい。
映画だからできるわけだが、これだけを演劇にして上演できそう。
映画の中、即席で作り上げた(という)セットや効果、音響効果など、かなり面白い。お見事。

無事に流れ着いた(?)小道具が入っている長持ちは、いろいろなものが入っているらしく玉手箱のよう。(だから、やっぱりコメディ)

このアジナーラ島は、現在では定期船が通っていて、一般人も上陸できるそう。
ただ、泊まることはできない。(施設もないそうな)

青い海とサルデニアらしい茂みの緑、荒涼とした焼けた土色、画面がとても美しい。
そこに、真面目〜なコメディ。
文学的な内容も盛り込まれ、かなり興味深い作品。

すごーーーーくいいのよ、という言葉は本当だった。
楽しめる。