在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Cantina Bambinuto カンティーナ・バンビヌート

2017-02-09 11:36:02 | Campania カンパーニア
この前の、モニカのオーガナイズによるイルピニア地方の8つのワイナリーの試飲会で、最も気に入ったワイナリー。




偶然、行く機会に恵まれて、カンパーニャ州の山奥、アヴェッリーノまで行ってみた。

ワイナリーは、マリレーナがほとんど一人でやっている。
マリレーナがかなりパッツァ(キチガイ)だとわかったのは(笑)まあ、いろいろなことに挑戦するのが好きということ。
これにはかなりびっくり。
デザートワインを造り、グラッパを造り、はたまたブランデー、チーズと一緒に出されたコンフィのそうで、アメも作ったことがあるというし、その他いろいろ作ったらしいが、中にはビールもあった。
もちろん、ワインに関連してのものばかりである。

これは、と思うのものを作ってしまいたい性格らしい。
しかし、一人では、アイデアはあってもなかなか実現には至らないし、普通はちょっとやらない。
それだけ幅の広い交友関係があるわけだ。
かなりすごい。(マリレーナの爪の垢が欲しい。。。)

当然、ワインに関連して造る。
また、地元の品種グレコを使って造る。

だから、デザートワインはグレコで、ビールにもグレコを混ぜるなどして、グラッパもグレコので、ブランデーは搾かすではなくワイン(当然グレコ)を使い。。。という調子。

デザートワインもグラッパもブランデーも美味しかったのだが、特にビールは美味しかった。
素晴らしく美味しかった。
ぜひまた飲みたい。。。。。

ワイナリーの規模は小さく、まだ家内生産的。
ほとんどステンレスタンクでの熟成。樽はデザートワイン用(当然品種はグレコ)で、その数もわずか。

また、少数だが、グレコでスプマンテも造っていた。
これはまだリリースされていない。もうそろそろ出るのだが、楽しみ。
もちろん、こだわりのマリレーナが造るので、造り方、味わいが全く違う2ヴィンテージを同時にだすそうな。(ますます楽しみ)



試飲には、かなりのボトルを開けてくれた。
また、食事も、簡単なものと思っていたら、かなり豪華な内容だった。

この前の試飲会で感心したグレコの2014年。++++(+)
グレコがこんなにエレガントだったなんて、と感心。
2015年は、もう少し太さがあるというか、悪くはないが、洗練さには若干欠ける。+++(+)
ただし、あと数ヶ月経ってからの方が良い、とマリレーナが言う通り、まだ、ワイン自体が落ち着いていないように思う。

もう一つのグレコはピコリ。
上級クラスというのではなく、もう一つのグレコとして造っている。
畑は600m近い標高、向き、日当たりの条件が素晴らしく良い畑なのだそうな。
2015年、色が濃いめで、太さのある、ボディも良い、存在感のあるグレコに仕上がっている。++++(+)

扱っている品種は、軽めのワインとして白のファランギーナが少し、そして、赤のアリアニコでも軽めワインを造っているとのこと。
アリアニコは、タウラージのようにしっかりしたものは造れない、とか、普段飲みの本当に軽いものなのよ〜と言っていたのだが、飲んだら、これまた素晴らしく美味しかった。色は明るく、輝きがあり、花とフルーツがピチピチしている。
なんと、2013年と2015年のブレンドでヴィンテージ表示はなし。
なお、2013年と2015年は造り方を大きく変えたのだそう。++++



グレコのデザートワインは、色がかなり濃い。
まるで赤ワインから造ったデザートワインの色合い。
酸味がキリッと全体を引き締め、美味しい。++++

グラッパは地元の蒸留所で造られたもの。+++
そしてブランデーはまろやかで、これもかなり美味しい。飲みやすい。
ちなみに、ブランデーなので、ワインから造ったもの(搾かすからではない)。++++

食事の途中で出してくれたビールは、見事な泡立ちだった。そして、濁りがあり、香りが素晴らしく良かった。+++++













Fai bei sogni di Marco Bellocchio イタリア映画の紹介 「いい夢見てね」

2017-02-09 11:18:06 | 何故か突然イタリア映画
Fai bei sogni いい夢見てね
監督 マルコ・ベロッキオ

9歳で母親を突然亡くした少年。
母の死因を知らされず、父の死後、真実を知る。



時々(かそれ以上。。)、自分がひねくれていると思う時がある。

良い映画だと思った。
良くできていると思った。
特にテクニカル的によくできている。
130分というかなりの長さなのだが、飽きさせない。
ドラマチックであるだけでなく、サスペンス的な要素も兼ねている。
音楽、音響効果も評価できる。

しかし、なのである。

マッシモは、9歳の時、突然母親を亡くす。
というか、母親が突然消えてしまう。

葬式の場面が出てくるので、母親は本当に亡くなったはずなのだが、父親がひた隠し、突然の心臓発作で亡くなった、ということになっている。
母親の最後の姿を見ていないマッシモにはそれが信じられない。

母親にべったりだった少年。一人っ子。
母親の死を絶対に信じたくないし、友達には、母親は遠くに住んでいる、と嘘をつく。
教師も困らせる。

大人になって新聞記者になった。
まだ母親の死因を疑い、突然消えた母親の影を背負って生きている。

さて、30年以上経って、父が亡くなり、母親の本当の死因を知る。
それは、自殺だった。(ネタばれ〜)

ストーリーはある意味比較的シンプルなのだが、最後まで持っていく間がうまい。

スリラー、サスペンス風の場面もあるので、特に最初は、本当に母親は死んだのか?まさか生きてないよね、と思わせたり、殺されたのかも?殺人犯はだれ?まさかね〜という感じでもあった。

ただ、途中で、この展開は自殺だった?と思うようにはなる。
最後は意外と呆気ない。。。

うーーん、新聞記者になったマッシモ、私なら当時の新聞記事を片っぱしから調べてみるだろうなぁ、(時は1999年、今ほどコンピューター化されていないくても読む手がないことはない)

原作があり、それを読んだ監督がとても気に入って映画化した、ということなので、大きく変えるわけにはいかないわけだが、若くして乳がんにかかり、治ったはずなのに、もう治らないと思い込んでいる母親、9歳の一人息子を残して自殺はいけないよ、と思う。

子供と友達、というタイプの母親なので、成長しなかったんだろうなぁ。

結構冷ややかな夫との関係にも悩んでいたんだろうなぁ。

私には男の子がいないので、成長した男の子がどれだけ母親にべったりになるかわからないのだが、ここまで母親の影を追うものなのか?
この辺は特に興味深かった。

個人的には意外に呆気ない結末、と思ったのだが(殺人、を期待したわけではないが。。)、終了後のインタヴューでは、良かった〜素晴らしい〜という意見が多数で、映画の作り方、途中の展開には大きく同意するが、最後がまずまず。

新聞記者として行った戦地で見た、殺された母とその息子。
母を憎んでいるという新聞の投書に回答するマッシモ。(ここは涙〜)

など、さすが、と思わせる場面は多数。
だから、勧めるかと問われれば、かなりオススメ。
78歳の大御所監督。

今回のインタヴューには、母親役の女優も出席。
映画の中でも美人だが、本物はさらに美人だった。(きれ〜)