行きかふ年もまた旅人なり

日本の歴史や文学(主に近代)について、感想等を紹介しますが、毎日はできません。
ふぅ、徒然なるままに日暮したい・・・。

読書記1 『山月記』

2007-11-19 00:07:10 | Weblog
 『山月記』 中島 敦 著
 『山月記』は高校の国語の教科書に収録されていて、授業を聞かずにこっそり読んだ記憶がある。
 作品の格調の高さ、というか、作者・中島敦の漢学に対する深い造詣からか、社会人になってから「もう一度読みたい」と年々強く思っていた。
 唐代の伝奇小説「人虎伝」を題材に、身を滅ぼし心を狂わせてまで詩作に没頭した詩人の内面を描いたもの。
―主人公は隴西の李徴。秀才で官吏登用試験に合格したが、自分の才能に恃むところがあって協調性が無く、間もなく官吏を辞め、詩作の道に入るが、なかなか評価されず、生活に追われ、止む無く再就職したが、自分と同期、後輩は高官となっていた。馬鹿馬鹿しく思い、鬱屈していたがやがて発狂して虎になって森の中に消えていった。以後、人食い虎と呼ばれ恐れられる。ある日、監察御史・袁サン(人偏に参)が人食い虎の棲む森を通る。彼は、李徴が初めて就職した頃同期で、李徴とは数少ない友人だった。案の定、虎となった李徴が襲い掛かったが、袁サンと認めて森へ逃げ帰り、シクシク泣いた。袁サンはそれが李徴だ、と思い出し、お互い姿を現さずに語り合う。心まで獣になりかけている自分の境遇に泣き、友も泣いた。もう人間の姿も心も無くなり、友に襲い掛かるかもしれないからこの辺りを通らないで欲しい、と語る。最後に今の姿を友に見せたいから、暫く離れたら振り返って欲しいと頼む。袁サンはその言葉通りにすると、大きな虎が現れ咆哮し、草むらに踊り入って二度とその姿を見せなった。―
 ・・・やり切れない、切ない気持ちになる。
 詩を感じるような内容と完成度の高さに大人になって読んで良かった、そんな作品である。
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