まーくん。は、おかんさまのお友達の子である。
ワタクシメが小さかった頃。
おかんさまがお友達の家に遊びに行くのに、よくワタクシメも連行されていた。
家に子ども一人を置いておくよりもよかろうという、おかんさまの判断には。
まーくん。と、そのお姉さんの存在も影響していたのだろう。
ちょくちょく連行されていたこともあり、まーくん。とは顔見知りであった。
だが、学年で二つ違うというのは、小さければ小さいほど大きな差である。
ワタクシメとまーくん。とは、さほど親しいというわけでもなかった。
そんなまーくん。を、ワタクシメは泣かせたことがある。
小学生は、全員自分の教室を掃除するわけではない。
一年生の教室は、上級生が掃除をすることになっていた。
たまたま、ワタクシメの教室の掃除に、まーくん。が来た。
一人として知っている相手のいない上級生の中に、たった一人知っている人がいる。
一年生だったワタクシメは、知り合いということが嬉しくて、つい、まーくん。に寄っていって、いろいろ喋りかけた。
まーくん。のクラスメートには、奇妙に思えただろう。
仲間の誰もが知らないちびが、自分たちの同級生に親しげに話しかけているのだから。
「まー。なんだよコイツ。どーゆー関係?」
「つきあってるのおまえら?」
「どこまでいってんの?」
……今思えば、くだらんことを言う連中というのは、いくつであっても、いくつになってもいるもんである。
ワタクシメは、何も思わなかった。何も考えてなかったともいえるが。
だが、まーくん。には、同級生に取り囲まれ、からかわれるのが耐えきれなかったのだろう。
まーくん。の目から、ぽろりと涙がこぼれた。
同級生に取り囲まれ、無言でくしくしと涙をこすり消そうする、その姿を見て。
ワタクシメは、まーくん。に、なんだかものすごくひどいことをしたように、ひどくいたたまれない気分になったのを覚えている。
それ以降、何度も掃除当番になったまーくん。は、ワタクシメの教室にやってきたが。
一言も、どちらからも、しゃべりかけることはなかった。
先日、まーくん。のお父さんが亡くなった。
ワタクシメにとっても、知らない人ではないが、仕事もあるのでお葬式には、おかんさまに代表して行ってもらった。
喪主の家族として、まーくん。たちは立派に、そして気丈にふるまっていたそうだ。
あの泣き虫のまーくん。が。
一滴の涙も浮かべることもなく。
遠ければ遠いほどいいが。
いつかは、ワタクシメも迎えねばならないその日に。
ワタクシメは、まーくん。のように、ふるまえるだろうか。
ワタクシメが小さかった頃。
おかんさまがお友達の家に遊びに行くのに、よくワタクシメも連行されていた。
家に子ども一人を置いておくよりもよかろうという、おかんさまの判断には。
まーくん。と、そのお姉さんの存在も影響していたのだろう。
ちょくちょく連行されていたこともあり、まーくん。とは顔見知りであった。
だが、学年で二つ違うというのは、小さければ小さいほど大きな差である。
ワタクシメとまーくん。とは、さほど親しいというわけでもなかった。
そんなまーくん。を、ワタクシメは泣かせたことがある。
小学生は、全員自分の教室を掃除するわけではない。
一年生の教室は、上級生が掃除をすることになっていた。
たまたま、ワタクシメの教室の掃除に、まーくん。が来た。
一人として知っている相手のいない上級生の中に、たった一人知っている人がいる。
一年生だったワタクシメは、知り合いということが嬉しくて、つい、まーくん。に寄っていって、いろいろ喋りかけた。
まーくん。のクラスメートには、奇妙に思えただろう。
仲間の誰もが知らないちびが、自分たちの同級生に親しげに話しかけているのだから。
「まー。なんだよコイツ。どーゆー関係?」
「つきあってるのおまえら?」
「どこまでいってんの?」
……今思えば、くだらんことを言う連中というのは、いくつであっても、いくつになってもいるもんである。
ワタクシメは、何も思わなかった。何も考えてなかったともいえるが。
だが、まーくん。には、同級生に取り囲まれ、からかわれるのが耐えきれなかったのだろう。
まーくん。の目から、ぽろりと涙がこぼれた。
同級生に取り囲まれ、無言でくしくしと涙をこすり消そうする、その姿を見て。
ワタクシメは、まーくん。に、なんだかものすごくひどいことをしたように、ひどくいたたまれない気分になったのを覚えている。
それ以降、何度も掃除当番になったまーくん。は、ワタクシメの教室にやってきたが。
一言も、どちらからも、しゃべりかけることはなかった。
先日、まーくん。のお父さんが亡くなった。
ワタクシメにとっても、知らない人ではないが、仕事もあるのでお葬式には、おかんさまに代表して行ってもらった。
喪主の家族として、まーくん。たちは立派に、そして気丈にふるまっていたそうだ。
あの泣き虫のまーくん。が。
一滴の涙も浮かべることもなく。
遠ければ遠いほどいいが。
いつかは、ワタクシメも迎えねばならないその日に。
ワタクシメは、まーくん。のように、ふるまえるだろうか。