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学習指導要領改定-国家統制はずし、条件整備を-

2008-01-22 01:10:30 | 国内教育
主張
学習指導要領改定
国家統制はずし、条件整備を

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 中央教育審議会が十七日、教科等の枠組みや時間数、その内容を定める学習指導要領の改定について答申しました。文部科学省は、これにもとづき二〇一一年から使う指導要領を三月までにつくる予定です。

 答申は、政財界の「学力低下」論に呼応して、子どもには授業時数をふやし全国いっせいテストで競わせ、教員には授業内容や方法の統制を強めようというものです。

学力観を画一化
 今でも金曜日にはくたくたで授業にならない小学校一年生が、改定指導要領では毎日五時間授業になります。教育内容は授業時数以上にふえ、つめこみ授業による「落ちこぼし」の増加は明らかです。いっせいテストは、点の低い子どもに「出来損ないっていわれている感じ」と劣等感をもたらします。

 答申は多様であるべき学力観や学習方法を画一化しようとしています。答申が重視する「表現力」は「A4一枚で書く」が目標です。表現したい気持ちをていねいにはぐくむのでなく、「A4一枚」が機械的に追求されかねません。個性的で創造的な授業が姿を消す危機です。

 三年連続「学力世界一」となったフィンランドは、日本より授業時数が短く、いっせいテストをやらず、教員の自由度を思い切り保障しています。答申はこうした世界の流れにも逆行するものです。

 さらに答申は、改悪された教育基本法をうけて、「伝統と文化を尊重する態度」「国と郷土を愛する態度」などの教育を授業全体でつよめようとしています。しかし、何をもって「伝統」や「愛国心」とするかは、良心の自由に属します。特定の態度を押しつけ子どもを鋳型にはめることは、憲法に反します。

 しかも答申のかかげる徳目には、市民道徳の教育に欠かせない、人権や子どもの権利がありません。子どもたちは、格差社会、いじめ、成績による選別などで、人間として傷ついています。その子どもの声をききとり、子どもとともに誰もが人権を尊重される学校生活をきずくことこそ、市民道徳の教育の核心です。

 上から観念的で画一的な「徳目」を守れと言うのは、既存の社会に従順にしたがう人間をつくろうというものです。

 答申は、前回の目玉として華々しく登場した「総合的な学習の時間」をへらし、中学の「選択教科」を事実上なくすなど、方針を大きくかえました。こうした朝令暮改にふりまわされる子どもや学校現場はたまったものではありません。

 戦後直後の学習指導要領は「試案」と銘打たれ、どんな授業をおこなうか教師自身で研究するための「手引き」であり完成品ではないとされていました。指導要領は大枠にとどめ、教える内容や時間は学校現場の創意工夫にゆだねるべきです。

 こうした自由のもとでこそ、助け合い学びあいながら「分かった」と瞳を輝かす授業、貧困や格差、環境問題など現代社会の課題とむきあう授業、そんな子どもたちが歓迎する授業がうまれます。

少人数学級でこそ
 政治が真剣にとりくむべきは、教育条件の整備です。豊かな知育には少人数学級が欠かせませんが、日本の学級編制は四十人のままで、二十人程度の欧米諸国にくらべて大きく立ち遅れています。

 授業への国家統制は強め、条件整備は放棄する―そんな自公政治を一刻も早く終わらせ、教育が花開く新しい政治を実現させましょう。

(出所:日本共産党HP 2008年1月21日(月)「しんぶん赤旗」)
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「君が代」不起立者氏名収集-神奈川県個人情報保護審が「不適」と答申ー

2008-01-20 07:46:54 | 国内教育
「君が代」不起立者氏名収集
神奈川県個人情報保護審
「不適」と答申

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 神奈川県下の高等学校や養護学校など県立学校の入学式などで、「君が代」斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を県教育委員会が収集している問題について、県個人情報保護審議会(兼子仁会長)は十七日夜の審議で答申をまとめ、収集を行うことは「不適」との見解を示しました。

 「君が代」不起立の教職員名のリストづくりについては、昨年十月二十四日、高校の教職員からの異議申し立てを受けて県個人情報保護審査会(矢口俊昭会長)が、県教委が収集した情報は県個人情報保護条例で原則取り扱い禁止とされている思想信条に該当するとの判断を示す答申を出しました。今回の審議会答申はこれに続くもの。

 同答申は、不起立について、憲法一九条に定める「思想及び良心の自由」の保障と深く関係していると指摘し、「(氏名収集の)正当性及び必要性を積極的に認め、諮問内容を適当とする答申を行うことはなしがたい」と結論付けました。ただし、「最終的にいかなる職権行使をするかは、実施機関である県教委に条例上委ねられている」としています。

 県教委は、氏名情報の収集を正当化するため、県個人情報保護条例第六条のただし書きなどを根拠に同審議会に諮問していましたが、認められませんでした。

(出所:日本共産党HP  2008年1月18日(金)「しんぶん赤旗」)
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無利子奨学金から10万人締め出し-希望者急増に枠広げず-

2008-01-05 01:16:06 | 国内教育
無利子奨学金から締め出し
10万人 つらい春
希望者急増に枠広げず
今春受験の高校生

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 日本学生支援機構(旧日本育英会)の無利子奨学金を受けられない今春大学受験予定の高校生が十万人にものぼることが、三日までに明らかになりました。政府は、〇八年度予算案でも有利子奨学金を七万四千人増やす一方で無利子枠は千人増とほぼ据え置きです。「受験生の願いにこたえて無利子奨学金の拡充を」との運動が始まっています。

 同機構によると、無利子奨学金の貸与基準を満たし申請する高校三年生は年々増えています。二〇〇六年度分(〇五年度に申請)は九万八千五百九十五人、〇七年度分は十一万四千九十七人でしたが、二〇〇八年度分は十三万八百八十七人に急増しています。成績と収入を貸与基準とする奨学金の申請者が増えている背景には、低所得者層の拡大があります。

 一方、高校三年生が予約できる無利子奨学金は、〇六年度分三万三千九百七十四人、〇七年度分三万三千九百八十四人、〇八年度分三万三千九百八十五人とまったく増えておらず、急増する希望者の願いに背を向けています。

 同機構では、無利子枠から漏れた高校生のうち、九割までは有利子奨学金を併願し、受けることにしているので奨学金は受けられるとしています。しかし、有利子奨学金を併願しなかった高校生も一万人近くおり、これらの高校生は奨学金のめどがたたないまま、受験期を迎えようとしています。

 大学の初年度納付金(授業料を含む)は国立で八十二万円、私立で百三十一万円(平均)で世界一の高さ。奨学金を受けられずに進学を断念、入学しても「バイトばかりの生活」を強いています。

 安心して受験し、大学生活がおくれるように奨学金制度の拡充が求められています。

 昨年十二月には、全労連や全学連をはじめ全教、日高教、全国私教連、特殊法人労連などが「国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会」を結成しました。七日に今年初の会合を予定しています。

(出所:日本共産党HP 2008年1月4日(金)「しんぶん赤旗」)
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自公政権の教育再生会議が二十五日、「第三次報告」を公表

2007-12-28 22:38:57 | 国内教育
主張
教育再生会議報告
安倍流「改革」に未来ない

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 政府の教育再生会議が二十五日、「第三次報告」を公表しました。再生会議をつくった、当の安倍晋三前首相が政権を投げ出し、再生会議の存在意義そのものが各方面から問われるなかでの報告です。

 「報告」は、再生会議が何のためにつくられたかをあらためて浮き彫りにしました。戦前回帰をねらう勢力や教育に競争原理の徹底をもとめる財界などの主張を、政府では言えないようなかたちで露骨に代弁し、国の教育政策を乱暴にかえることです。教育研究者を一人も含まない異例の人選もそのためです。

「徳育の教科化」ねらう
 今回の報告では、「徳育の教科化」の再提案が典型的です。あまりの復古調に文部科学省の中央教育審議会ですら、「教科化」を見送る方針をかためています。それを蒸し返そうというのです。

 市民道徳は、憲法の立場にたち、すべての人々の「個人の尊厳」、基本的人権を尊重し、お互いを人間として大切にすることを基礎とするもので、教育にとって中心的課題のひとつです。子どもの悩みや社会の矛盾など現実生活にそくして、子どもが自分たちの頭で考えながら人間的モラルを培うことができる、そうした教育がのぞまれます。

 ところが、再生会議の「徳育の教科化」は、「偉人伝」などを使い、「挨拶(あいさつ)や礼儀」「善悪の判断」などを教えるといいます。戦前の「修身」と同じ発想で、政府に都合のいい価値観を上から教えこむものです。

 「教科化」のねらいについて、安倍前首相のブレーンとして「教育再生」を主張してきた八木秀次氏は、「道徳の時間におかしな平和や人権などを教えることができなくなる」(「産経」二十六日付)とあけすけに語っています。

 「報告」は同時に、「競争原理の導入」のために財界などが主張している「バウチャー制度」をモデル事業として実施することも打ち出しました。この制度は文科省すら難色を示しているもので、学校選択制を導入し、生徒が多く集まった学校の予算を手厚くし、生徒が集まらなかった学校は逆にしようというものです。

 必ずどこかの学校が「負け組」となり、そこから予算がとりあげられます。「負け組」にさせられた学校にいる子どもたちにどんな責任があるというのでしょうか。学校も教員も「負け組」にならないための不毛な競争にかりだされ、「子どものために」という教育の原点は後景にしりぞきます。

 実際に学力テストの平均点の増加率を予算配分に反映させた東京都足立区では、平均点をあげるための不正が相次ぎ、区民の怒りのなかでその方式が中止に追い込まれました。

 「報告」には、「学校の統廃合を推進する市町村を支援する」ことも盛り込まれました。教育予算を削減しようとする財務省の要求です。しかし、国民の要求は、先進国で最低レベルの水準を向上させて豊かな教育条件をつくることです。

国民との矛盾広げる
 こうした「報告」の方向は教育の条理に反し、国民との矛盾をひろげるばかりです。ところが、福田康夫首相は「基本的な考え方を具体化する」と述べました。安倍政権の悪政を基本的に引き継ぐ同政権では、日本の教育はよくなりません。

 来年は総選挙が必至といわれています。この分野でも自公政権に厳しい審判をくだし、憲法にもとづき、国民の願いにこたえる教育改革をすすめる、新しい政治の流れを大きくしようではありませんか。

(出所:日本共産党HP 2007年12月28日(金)「しんぶん赤旗」)
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沖縄戦「集団自決」 の検定意見-「強制」削除 文科省ぐるみ-

2007-12-28 01:23:55 | 国内教育
 <第168回 衆議院 文部科学委員会 2007/10/24の議事録の一部抜粋>
 
○石井(郁)委員 先日の大臣あいさつの中で渡海大臣は,「沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については,沖縄県民の思いを重く受けとめるとともに,教科書検定の公正中立性の確保に十分意を用いつつ,」というふうにお述べになりました. 大臣は,今回の教科書検定において,厳正かつ公正中立に行われたという御認識でいらっしゃいますでしょうか.

○渡海国務大臣 所定の手続に基づいて行われたというふうに報告を受けております.

○石井(郁)委員 私は,公正中立に行われていれば,今日のような,こういう沖縄の県民挙げての皆さんの御要望とか,あるいは大きな社会問題というふうになってないだろうと思うんですね. そういう点で,きょうは幾つか確かめもさせていただきたいと思うんですけれども.
 まず,先日,予算委員会で,我が党の赤嶺政賢議員が明らかにしたところでございますけれども,文科省職員の教科書調査官が,沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある表現という検定意見をつけるという,これがその原議書ですよね,局長までの印鑑が押してありますけれども,これを作成すると. この案を検定審議会の小委員会にかけて,これが検定意見となって教科書会社に伝わるということになるわけですが,しかし,沖縄の集団自決に対する軍の関与について,その審議会の専門委員,臨時委員などから意見があったわけではない,教科書調査官四人の合議によって作成されたということがわかりました. 審議会の小委員会でも総会でも,それについて意見も出なかったと. しかし,この検定意見によって,今問題の,「日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」という最初の記述が,「集団自決に追い込まれた人々もいた. 」というふうに改められたり,要するに,誤解を招くということで改められたということになって,日本軍による強制とか関与ということは削除されたんですよね. これが今回の一連の経過だというふうに思います.
 ですから,このように見ていきますと,教科書検定審議会というのは隠れみのになっていたんじゃないのか. これは文科省による自作自演の押しつけではなかったのかということが明白になったというふうに私は思うんです.
 そこでお聞きしますけれども,では,教科書調査官の日本史担当の方のお名前,出身大学,学部,専攻学科を教えていただきたいと思います.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. お尋ねの件につきましては,個人情報が含まれますため,本人の了解がとれた範囲でお答えすることをお許しいただきたいと存じます.
 現在,日本史を担当する教科書調査官は四名でございます. まず,照沼康孝主任調査官は東京大学大学院を修了しております. それから,村瀬信一調査官は東京大学大学院を修了しております. それから,高橋秀樹調査官は学習院大学大学院を修了しております. それから最後に,三谷芳幸調査官は東京大学大学院を修了してございます. 以上が,現在,日本史を担当する教科書調査官四名でございます.

○石井(郁)委員 学部,専攻をおっしゃいませんでしたけれども,これは本人の了解が得られなかったということなんですか.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. 各調査官の出身の学部,学科や専攻につきましては,個人情報に該当するため,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.

○石井(郁)委員 ここで個人情報を盾にとられて. おかしいですよね. だって,文科省の職員なんですから. 何で卒業学部,学科,専攻を言えないんですか. しかも,明らかにしてほしいと.
 これは大事なんですよ. 何で個人情報,了解を得ないんですか. 得て断ったのなら,それはそういうこともあるでしょうけれども,得もしない. これが文科省のやり方なんですか. 私は大変問題だというふうに思います.
 大学院までしか言われませんでした. 大事なのはやはり学部,専攻なんですよ. 主任の照沼氏は東大の国史学科卒業です. 村瀬信一氏も東大の日本史学科卒業です. このお二人が今当面問題にしたいことなので,私の方から申し上げておきたいと思うんですけれども.
 要するに,この近現代史専門は照沼氏と村瀬氏なんですよね. お二人です. このお二人は,後で問題にしますけれども,扶桑社発行の教科書監修者である伊藤隆氏が一九七一年から東大文学部助教授を務めていた時代の教え子であります. 師弟関係なんですよ. そのことを一点お尋ねしたい.
 そして,照沼氏及び村瀬氏について,調査官になるに当たってはこの伊藤隆氏からの推薦というのがあったんじゃないんですか. あるいは,両調査官の採用の経緯を教えていただきたいと思います.
 
○金森政府参考人 お答えを申し上げます. それぞれの教科書調査官の専門分野に関しまして,だれから指導を受けたかということにつきましては,個人情報に該当するため,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.
 ただ,教科書調査官の職務といたしましては,学問的,教育的見地から教科書が適切なものとなるよう,公正かつ中立的な立場から調査を行っているところでございます.
 次に,推薦があったのかというお尋ねでございますけれども,教科書調査官に関する選考の際,推薦書があったかどうか,また,だれから推薦があったかについての資料につきましては,人事管理に関する個人情報でございまして,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.

○石井(郁)委員 非常に何か,隠そう隠そうとするところが見えるわけですけれども,これ自身が非常に問題だというふうに思うんですが,伊藤隆氏と照沼氏,村瀬氏は,伊藤氏が東大文学部助教授だったときにこの二人との師弟関係があるわけですね.
 それだけじゃないんですね. もう一つの問題は,この伊藤隆氏と照沼氏は,一九八三年には「陸軍 畑俊六日誌」という共同著作も出しています. 共同著作です.
 それから,村瀬氏も,文科省の科研費補助金が出ている,平成九年から十年,日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究及び平成十一年度,十二年度の日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究,そういう研究に参加していまして,これは伊藤氏が統括責任者なんですね. そのもとに共同研究を行っているわけであります.
 そして,二〇〇〇年の四月,「新しい歴史教科書」,これは文科省に申請本として出されましたけれども,このとき同時に村瀬氏が教科書調査官になっています. 照沼氏とともにこの教科書の検定に当たっております.
 こうした事実,文科省はお認めになりますか.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. 伊藤隆氏が受けていた科研費の研究グループに共同研究者として村瀬教科書調査官が参加していたのは御指摘のとおりでございます. 著書につきましては承知をいたしておりません.
 ただ,先ほども申しましたように,教科書調査官のそういった関係と現在の職務とは関係がないものでございまして,教科書調査官の採用に際しましては,学問的,教育的見地から教科書が適切なものとなるよう公正かつ慎重に調査を行うという教科書調査官の職務にかんがみ,慎重に選考を行っているところでございます.

○石井(郁)委員 次に,審議会について伺いますが,教科書検定審議会に日本史の小委員会がありますね. この日本史の委員の,近現代の専門家についてお名前を明らかにしてほしいと思います.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. 教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会の委員につきましては,古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をしているところでございます.
 審議会委員の氏名の公表の扱いにつきましては,正委員,臨時委員につきまして氏名や職名を公表しておりますけれども,静ひつな環境における委員の自由闊達な意見交換を確保するため,委員の分属については公表していないところでございます.

○石井(郁)委員 何でこの審議会委員の,専門委員の名前は出せないんですか. おかしいでしょう. 公正中立な審議会だ,そこで学術的に審議を行っているというわけですから,どういうふうにそれが行われたのかという点で,どなたがその専門委員なのかということは最低必要な,明らかにすべきことだと思うんですが,おかしいんじゃないですか. この点は,大臣はいかがお考えですか.

○渡海国務大臣 この委員の先生方につきましては,実は名前が知れたことがありまして,非常に,家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして,そして,そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして,今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います.
 名前を出さないから中立,公平,公正にならないということではないというふうにも考えます. その点は御理解をいただきたいというふうに思います.

○石井(郁)委員 しかし,今大問題の教科書問題,教科書検定のあり方をめぐっての議論をしているときですから,やはり調査官,そして審議会の委員,どういう方がいらっしゃるのかというのは,私,隠す必要はどこにもないと思うんですよ. それは,マスコミが来るというのは別の問題としてあると思うんですけれども,やはりこの委員会の審議のためにはぜひそれは公にしていただきたい.これは,委員長に,ぜひお取り計らいをお願いしたいと思いますが.

○佐藤委員長 ただいまの御要求につきましては,理事会において協議をいたします.。では,質疑を続けてください.

○石井(郁)委員 私が調べてみたところ,日本史小委員会で近現代史の審議委員四人の方がいらっしゃるんですけれども,一人は駿河台大学教授の広瀬順晧氏,九州大学大学院教授の有馬学氏,国学院大学教授の上山和雄氏,筑波大学教授の波多野澄雄氏,これは間違いありませんか.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. 審議会の委員の氏名につきましては,正委員,臨時委員とも氏名及び職名を公表しておりますけれども,その分属,日本史小委員会にだれが属しているかということにつきましては,公表を差し控えさせていただいているところでございます.

○石井(郁)委員 非常にかたくななんですけれども,この四人でこれは間違いないと思うんですね. もし間違っていたら大変大問題になりますけれども,間違いないという前提でお話をさせていただきます. さきに挙げました伊藤隆氏,統括者の文科省の科研費の,共同研究でありましたけれども,日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究,それから日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究,ここには,今申し上げました有馬学氏,広瀬順晧氏,そして先ほどの調査官の村瀬信一氏が共同研究者として参画をしているわけであります. だから,まさに教科書調査官,審議会委員の中に伊藤門下生がきちんといらっしゃるということなんですよ.
 それから,村瀬信一と照沼康孝,有馬学氏らが共同で執筆した「近代日本の政治構造」という本があるんですけれども,この中で有馬氏はこのように述べていらっしゃいます. これは後書きなんですけれども,本書の執筆者は,いずれも先生が,先生は伊藤隆氏です,東京都立大学,東京大学に在任中学恩に浴し,学術事業に何らかの形で参画するという貴重な経験を与えられた,伊藤政治史学として結実したのであると絶賛をされているんですね.
 こうして見ますと,教科書調査官は四人ですよ. この四人のうち二人,また審議会委員の近現代史の専門家四人のうち二人が伊藤隆氏の門下生です. あるいは共同研究者,共同著作者です. どうでしょうか. これで検定が公正中立に行われたと言えるんでしょうか,大臣.

○金森政府参考人 お答えを申し上げます. 教科書調査官の採用に当たりましては,それぞれの分野に対応する専門の学識を有するかどうか,また,視野が広く,初等中等教育に関し理解と識見を有するかどうかなどの能力,適性を総合的に判断して,大学の教授等や中学,高校教諭等から担当の初等中等教育局におきまして慎重に選考を行い,採用いたしているところでございます.
 教科書調査官の他の人との関係が教科書検定の公正中立性に影響を与えるということはあり得ないと考えておりまして,今回の検定に当たってもそのようなことはなかったと考えております.

○石井(郁)委員 人選が公正中立とか慎重に行われているという話ですが,そういう形のことではなくて,選考の経過もおっしゃらないわけですから,そういうことではなくて,今挙げました事実そのもの,こういう関係の方じゃないですか,このことを私は申し上げているんですよ. これをしっかりと見ていただきたいと思うんですね. これは重大な問題をはらんでいるんです.
 これは先ほども申し上げましたけれども,扶桑社発行の新しい歴史教科書,これは検定を合格したときには国内外から非常に厳しい批判というか反響がありまして,大問題になりました. この歴史教科書というのは,自虐史観からの脱却を掲げました. さきの戦争は自存自衛の戦争,アジア解放の戦争という,靖国史観と私たちは言っていますけれども,に基づくものでして,これまでの村山談話,河野談話など日本政府見解からも到底認められない,逸脱したものでした.
 実は,この新しい歴史教科書の監修者が伊藤隆氏なんです. これはしっかりここに名前が出ています,監修者です. そして,この歴史教科書の検定に当たったのが照沼氏であり村瀬氏です. まさに伊藤門下生のお二人なんですよ. どうですか,これは. ちょっと余りにも何か,こういうことがあっていいのかと言わざるを得ません.
 伊藤隆氏について私はもう少し付言させていただきたいんですけれども,安倍内閣のときには,戦後レジームからの脱却,教育再生ということが掲げられましたけれども,それをバックアップする教育改革の,日本教育再生機構というのができましたよね. 伊藤隆氏はその設立代表発起人です. そして,今日,教育再生機構の教科書改善の会というのがあるんですけれども,歴史教科書の編集座長になっていらっしゃる方です.
 「教科書改善に向けての私どもの思い」というのをこの会が発表しておりまして,日本教育再生機構の八木秀次理事長はこのように言っています. 「捏造が明らかないわゆる従軍慰安婦の強制連行については記述しません. 南京事件については事件そのものが虚構であるという有力な説があることにも言及します. その意味で,扶桑社版教科書はじめ,これまでの教科書改善運動の精神は正しく継承して参ります. 」だから,こういう立場の教科書こそ発行していきたいということを表明している団体であります.
 だから,従軍慰安婦の強制連行はもう載せない,これはかなり教科書から削られていきましたけれども. 南京虐殺についても虚構だというふうに言っている. それから,沖縄の集団自決については,この教科書には集団自決という言葉もないんですよ. 沖縄戦で何人が亡くなったという数字はありますが,集団自決という言葉さえない,こういう教科書です. だから,こういう教科書の発行を続けようとしていることですよね.
 だから,私は,この団体,こういうグループというのは,本当に歴史の事実をゆがめようとして,そういう教科書を子供たちに押しつけようとしているのではないかと言わざるを得ないわけです.
 問題は,こういうことにこたえるような教科書調査官あるいは審議会委員,専門委員が配置されているということが私は重大ではないのか. こういう人たちが検定意見をつけているんだ,そして,沖縄の集団自決に対する軍の関与の削除につながっているんだと言わざるを得ないわけですが,これはまさに文科省による教育内容への政治介入そのものと言わざるを得ません. これはぜひ大臣の御見解をお聞きしたいと思います.

○渡海国務大臣 先生が感じておられるような,そのものではありませんが,似たような,疑義を持たれないかということで,私も,調査官等がいつ採用されたのか,それから,どういうことで配置をされているのかということで,随分いろいろ聞きました.
 ちょっと今手元に資料がありませんが,要は,今回こういうことをやるためにそういう陣容が組まれたということがないのかという疑いの目を持って実はチェックをさせていただいたんですが,それはそうではなかったですね,少なくとも. 例えば村瀬氏でいえば,今ちょっと,そっちから後で説明をさせますが,十年ぐらい前に採用されているわけでありますし,去年までの検定にも参加しているわけですから,その限りにおいてはそういうことではないというふうに考えております.
 ただ,なお,そういう力が働いてはいけないわけでありますから,私の立場からも,今後とも,公正,公平,中立に審議が行われるようにいろいろな配慮,また指導してまいりたい,そういうふうに考えております.

○金森政府参考人 補足をさせていただきます. 日本史を担当する教科書調査官四名が採用された年でございますけれども,照沼康孝主任教科書調査官は昭和五十八年に採用になってございます. それから,村瀬信一調査官は平成十二年に採用になってございます. それから,高橋秀樹調査官は平成十二年の採用でございます. それから,三谷芳幸調査官は平成十四年の採用でございまして,いずれも今回の問題の以前に採用された調査官でございます.

○石井(郁)委員 私は,今の御説明というのは,本当に何というか,文科省は歴史を踏まえていらっしゃるのかなと改めて本当に思ったんですけれども.
 教科書調査官が教科書行政にどのようにこれまで介入してきたか,あなた方が一番御存じじゃないんですか. これは歴史がありますよ.
 一九九八年,約十年前ですけれども,福地惇という方は教科書調査官でしたけれども,この方も伊藤氏の教え子だったんですよね. そして,このときに,近隣諸国条項があるから,日本は侵略戦争をして悪かった,書いていないとまずい,こういう発言をして調査官を解任されているんですよ. 舌禍事件というのを起こしているんですね. 今その方は新しい歴史教科書をつくる会の副会長を務めています.
 等々いろいろあるんですけれども,系統的に,やはり教科書の内容を,ある特定の考え方といいますか,特定の事実を持ち込みたいという人たちが日本の教科書問題をずっと起こしてきたんじゃないんですか. それはもうざっと見ただけでも,教科書調査官制度そのものが一九五六年から始まりました. これ自身もちょっと始まり方がおかしいんですけれども. その前年に憂うべき教科書問題というのがあって,それに呼応するかのように,日本の教科書がちょっと平和と民主主義を強く出し過ぎている,もとに戻せというような形で出してきたんですけれども,例えば平泉学派,天皇中心主義を信奉するという皇国史観の東大朱光会というのがあるんですけれども,それに所属した村尾次郎氏,この方が主任調査官になっているんですよ,この当時. それ以降,朱光会の山口康助氏,時野谷滋氏など,ずっとこういう考えの人たちがやはり調査官に座ってきた. そして今,戦争で侵略したということを,侵略という言葉はやめよう,進出だと,書きかえの事件があったじゃないですか. これも国会で大問題になりました. 国際的にも問題にもなりました.
 だから,一貫してこの侵略問題,そして戦争責任,あるいは日本軍の関与という問題については,先ほどの従軍慰安婦のことについても非常に激しいこのことがあって削除されまして,今は載らなくなりましたよ,教科書から. そして,今度は集団自決の問題だという流れで来ているんですね. ここはもう紛れもない歴史の事実です.
 私は,だから,今回の件についての,先ほどもお話ありましたけれども,今回の検定意見,こうした文部科学省の中にある,やはり偏った教科書調査官の人選というのがあります. 歴史を逆行させる地下水脈のようなものがどうも一貫して流れているんじゃないかと言わざるを得ないんですね. それがやはり政治介入を起こして,政治問題化しているわけですよ. ここをしっかりと見ていただきたいと思うんですが,大臣,いかがですか.

○渡海国務大臣 よく政治介入というお話が出るんですが,実は,ある政党の代表が来られましたときにも,では具体的にどういう政治介入があるのか,どういう力が実はそこに働いてゆがめられたのかということを言っていただければ我が方で調査をいたします,こういうふうに申し上げました. それ以上お言葉はなかったわけでありますけれども.
 基本的に,先生,今調査官にお触れになりましたが,当然,これは審議会というのは審議の委員もいらっしゃるわけでございまして,調査官の仕事は,もちろん検定意見のたたき台,調査書というのを出すわけでありますが,それに基づく資料もこういうものをそろえましたというのが基本的な仕事でございます. あくまでその部会において審議委員の先生方がそれをそのままつけるかどうかという作業もされるわけでありまして,そういったことを通じて中立公平,一部の方が例えばそういう色合いが見えるということだけで物事がそういうふうに流れているというふうに断定されるのは,ちょっといかがかなというのが正直な感想でございます.

○石井(郁)委員 最後,時間がありますので. 今問題になっていますのは,教科書検定の審議会がある,これがあるから公正中立が保たれているというのが伝わっているわけですけれども,本当にそれがきちんとした担保する機関になっているのかどうか. これは一教科書検定審議委員が発言をされていらっしゃいますけれども,独立機関ではない,やはり調査官の意見というのがかなり強く作用しているというようなこともおっしゃっていますから,そういう権限を本当に調査官がどこまで持ち得るかという問題としてもありますけれども,本当に教科書検定制度というのが公正中立だとは到底言えない中身になっているということが大事だということを申し上げているわけです.
 最後になりますけれども,これは今回の一連の問題について,教科書会社の申請があれば,それで一定,記述をもとに戻すようなことがあり得るような発言に聞いておりますけれども,私は,やはり今回の検定意見,今のこういう申し上げました中身で出てきている検定意見そのものが非常に問題を持っているわけですから,この撤回以外にないわけですね. そこは私は文科省が本当に蛮勇を振るってというか,誤りを正すというか,そのことでこそ,きちんと公正中立な教科書行政をやる省として,大臣がしかるべき責任を果たしていただきたいというふうに強く申し上げたいと思います. 最後に,大臣のその点での御答弁をいただきたい.

○渡海国務大臣 検定そのものはやはりちゃんと手続に基づいて行われたと何度も申し上げております. そして,この検定制度,民間の教科書会社がとにかく教科書をつくって,それに間違いがないかどうかということをチェックする,こういうことを審議会というある意味の第三者的な立場の専門家,これが学術的な,専門的な見地から行っていただくという制度でございまして,我々がこれを撤回しろとかそういうことが言えないというところに実はこの制度の中立性,公平性が保たれている一つの理由もあるわけでございまして,その点を御理解いただきたい.
 
(出所:http://tukui.blog55.fc2.com/blog-entry-576.html#comment)
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自公政権・文部科学省が高校用教科書の検定で「軍の強制」記述を削除させた問題

2007-12-28 01:19:59 | 国内教育
主張
沖縄戦教科書
沖縄の心軍靴で踏みにじった

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 アジア・太平洋戦争末期の沖縄戦での「集団自決」(強制集団死)をめぐり、文部科学省が高校用教科書の検定で「軍の強制」記述を削除させた問題で、同省は二十六日、検定意見の撤回は行わず、教科書会社の訂正申請でも住民が「自決せざるを得ないような状況に追い込まれた」とは書いても「強制」記述は認めないとする検討結果を明らかにしました。

 「集団自決」が日本軍の強制抜きに起こりえなかったことは歴史の真実です。文科省があくまで「強制」記述削除を押し通したのは、日本軍による残虐行為を美化し沖縄の心を軍靴で踏みにじったのも同然です。

11万人超す県民大会
 文部科学省の「強制」記述削除にたいしては、沖縄県議会をはじめ県内のすべての自治体が撤回を求める意見書を出し、検定撤回を求めて九月末開かれた県民大会には、復帰後最大規模の十一万人を超す県民が参加するなど、党派を超えた運動が続けられてきました。検定撤回を求める声は全国に広がっています。

 こうしたなか、政府も「沖縄の思いを重く受け止める」(福田康夫首相)といわざるを得なくなり、文部科学省も、教科書会社から訂正申請があれば検討すると答えてきました。今回の文科省の決定は、国民世論を無視できないところに追い込まれながら、検定は撤回せず、教科書会社の訂正申請さえ書き換えさせたもので、政府の責任はきわめて重大です。

 もともと「集団自決」は、住民の虐殺などと並んで、沖縄戦での日本軍の残虐行為としてよく知られています。島ぐるみで戦争に動員された沖縄の住民は、米軍の攻撃が迫っても投降は許されず、軍からあらかじめ手りゅう弾などの武器を渡されていたことからも、「集団自決」が日本軍による強制・強要・誘導によって起きたことは明白です。

 これまでも教科書には「日本軍に『集団自決』を強いられ」などの記述があったのに、削除を求められたことはありません。にもかかわらず、二〇〇八年からの高校教科書の検定で「沖縄戦の実態について誤解するおそれ」との意見がつき、「強制」記述が削除されたのです。自衛隊が海外に派兵され、再び「戦争する国」になろうとしているなかで、軍事最優先の体制をつくる動きに呼応していると見るのは当然です。

 文科省はあくまで学問的な研究の結果にもとづくものだといいはろうとしましたが、「集団自決」から「軍の強制」を否定する意見はまともに通用するものではありません。一部の軍関係者などが現地の守備隊長の直接の命令はなかったと裁判を起こしましたが、直接の命令の有無にかかわらず、住民は軍から「強制」されるなかで「自決」に追い込まれたことが逆に明らかにされました(来年三月判決)。裁判の一方の当事者の主張で教科書の記述が削除されたとすれば、それこそ異常のきわみです。

検定制度にメスを
 「集団自決」から「軍の強制」の記述を削除する教科書検定は、学問的な通説を逸脱した、文字通り一方的な立場から行われたものです。まさに教育への政治介入そのものであり、文部科学省が検定を撤回しなかったばかりか、訂正申請を修正させてまで「強制」記述を認めなかったのは、教科書検定制度の危険性を浮き彫りにしています。

 誤った検定意見を撤回し、正しい記述を回復するのは当然であり、政治的な検定がまかり通る密室の教科書検定制度そのものを、抜本的に見直すことが不可欠です。

検定意見は戦争美化勢力の政治介入
文科省誤り認め撤回を

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 沖縄戦「集団自決」での軍の強制は、「南京大虐殺」や日本軍「慰安婦」問題とともに、侵略戦争の正当化を狙う「靖国」派が、教科書などから消すことを目標にしてきたものです。

 侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の現会長、藤岡信勝氏らは二〇〇五年に「軍の強制」を削除する運動を開始しました。

 同年、「集団自決」を命令していないと主張する元守備隊長らが、軍の命令を記述した著書は名誉棄損などにあたるとして岩波書店と大江健三郎氏を訴える裁判を起こしました。この裁判の支援者や弁護団には、藤岡氏をはじめ「つくる会」の関係者が多数参加しています。

 文部科学省は「軍の強制」を削除した検定意見の根拠の一つにこの裁判での原告の主張をあげています。

 政府・文科省はこの検定意見について、教科用図書検定調査審議会が「専門的、学術的観点」で調査・審議して決めたものだとしてきました。

 しかし、検定意見の原案である「調査意見書」は文科省の職員である教科書調査官がつくり、初等中等教育局長らが決裁したもので、それが審議会では意見が出ないまま検定意見になったことが、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の国会質問で明らかになりました。

 さらに、日本史担当の教科書調査官や審議会委員の中に『新しい歴史教科書』監修者の門下生や共同研究者が多数いることが、石井郁子衆院議員の追及で浮かび上がりました。検定意見は侵略戦争を美化する勢力が、沖縄戦研究の到達点に反して持ち込んだ政治介入だったことが明白になったのです。

 沖縄県民をはじめとする検定意見撤回の声が高まり、各出版社は「軍の強制」を明らかにした訂正申請をしました。これに対しても「つくる会」は数回にわたって「訂正を不承認にせよ」と文科省に要請し、宣伝や集会を繰り返しおこないました。

 こうした中で、審議会と文科省は、検定意見撤回要求を拒否、訂正申請で出された「軍による強制」という記述も認めませんでした。

 沖縄県民の思いにこたえるには、文科省が誤りを認めて検定意見を撤回し、「軍の強制」の記述を復活させ、政治的介入でゆがめられた教科書を事実にもとづいたものにする以外にありません。(高間史人)

(出所:日本共産党HP 2007年12月27日(木)「しんぶん赤旗」)

<神戸新聞12月22日付け朝刊一面記事の引用です>

 沖縄戦 集団自決 教科書問題
 「軍強制」記述認めず 検定審小委 訂正申請で一転

 沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、教科書会社からの訂正申請を審査している教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会が、「日本軍の強制」を直接的に記述する訂正は承認すべきでないとする方針を固めたことが二十一日、関係者の話で分かった。

 集団自決の背景には、軍の存在を含む「複合的な要因」があるとの見解でまとまった。複数の教科書会社は小委の方針に沿って、訂正申請を出し直しており、表現で最終調整している社もあるという。

 軍の強制を示す表現は難しい情勢となり、沖縄県側からは反発も予想される。渡海紀三朗文部科学相は、来週中に示される検定審の結論を踏まえ承認の可否を決めるが、経緯を説明する談話を出し、理解を求めるとみられる。

 関係者によると、小委はこれまでの会合で、十人近い沖縄戦の専門家から提出を受けた意見書を検討。その結果、軍の強制性を示す記述を認めなかった当初の検定意見の撤回や変更は必要ないと判断した。

 その上で、集団自決には、住民が戦闘に巻き込まれたり、軍から手りゅう弾を配布され捕虜にならないよう教え込まれたりした事実などの複合的な要因があり、沖縄戦を総体としてとらえる記述が望ましいとの見解で一致した。

 この問題では、渡海文科相が検定意見に対する沖縄県側の反発を受け、記述の修正を容認。検定意見後に軍強制の記述を削除した教科書会社は十一月、「殺しあいを強制した」「日本軍によって『集団自決』においこまれた」などの強制性を強める内容で訂正申請していた。

 文科相は、国会答弁で「最終的に私自身も説明する必要があると考えている」と述べている。

◇沖縄戦の教科書検定問題◇

 2008年から使用される高校日本史の教科書検定で今年3月、太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決について、「日本軍の強制」と記述した教科書7点に「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある」との検定意見が付き、強制を示す表現がすべて削除された。文部科学省は元軍人らが命令を否定して起こした名誉棄損訴訟などを根拠に「従来の通説に基づく断定はできなくなった」と説明。これに対し、沖縄県内で検定意見の撤回と記述の復活を求める動きが広がり、9月には約11万人(主催者発表)参加の県民大会が開かれた。同省はこれを機に、撤回はせず教科書会社の訂正申請を受ける形で記述の修正を容認することにしていた。

(出所:http://tukui.blog55.fc2.com/blog-entry-576.html#comment)
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欧州も「慰安婦」決議-日本政府に公式謝罪要求-

2007-12-15 20:31:21 | 国内教育
欧州も「慰安婦」決議
日本政府に公式謝罪要求

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 欧州連合(EU)の欧州議会(仏ストラスブール)は十三日の本会議で、アジア太平洋戦争中の旧日本軍の「従軍慰安婦」について、日本政府の公式謝罪や歴史事実の国民教育を求める決議案を賛成五四、反対なし、棄権三で採択しました。同様の決議は、米下院(七月)、オランダ、カナダ両国下院(十一月)で採択されており、四例目です。

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 決議は、「従軍慰安婦」制度は「日本政府が、女性を性奴隷にするという目的だけで若い女性の獲得を公式に指令した」ものだと指摘。「慰安婦」制度は、犠牲者を死や自殺へと追い込んだ「二十世紀で最も重大な人身売買の一つ」だったと批判しました。

 そのうえで決議は、日本政府が「明確な形で歴史的、法的責任を正式に認め、謝罪し受け入れること」を要求。生存するすべての犠牲者、遺族に対して補償する「効果的な行政」を求めました。また、「『従軍慰安婦』という服従や奴隷化は決してなかったといういかなる主張に対しても、日本政府が公然と反論することを求める」としています。

 決議は「日本国民と日本政府が自国の歴史への全面的な認識をさらに進めること」を促し、日本政府が「慰安婦」問題を含む一九三〇年代から四〇年代にかけての日本の行為を、「現在と将来の世代に教育すること」を求めました。

 韓国、フィリピン、オランダの元「慰安婦」三人は、十一月に欧州議会を訪れ、日本に謝罪を求める決議を採択するよう訴えていました。

(出所:日本共産党HP 2007年12月15日(土)「しんぶん赤旗」)
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南京事件70年-日本軍による虐殺・略奪・強姦…国際法違反は明白/学問的、外交的にも決着-

2007-12-13 03:57:06 | 国内教育
南京事件70年
歴史の真実は消せない
日本軍による虐殺・略奪・強姦…国際法違反は明白
学問的、外交的にも決着

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 一九三七年の盧溝橋事件を機に、日本は中国大陸への全面的侵略に突き進みました。五カ月後の十二月十三日、日本軍は当時の中国の首都・南京に攻め入り、約四カ月にわたって、中国兵だけでなく、捕虜や一般住民を含めて大量虐殺をほしいままにしました。この南京事件から七十年、いまこの事件をどうとらえればいいのか、加害の実相をいっそう深くつかみ、そこから何を教訓とすればいいのかを考えます。

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 南京事件が日本の侵略戦争の象徴とされるのは、兵士だけでなく多くの人々を大量虐殺したことにあります。

 捕虜、投降兵、敗残兵の虐殺は、日本も加盟していた戦時国際法に明確に違反したものでした。ハーグ陸戦条約(一八九九年採択、一九〇七年改正)は、降伏の意思を示した兵士は捕虜にして収容しなければならないと取り決めています。

 しかし日本軍による中国敗残兵狩りでは、数多くの一般難民や市民が巻き添えになりました。また強姦(ごうかん)された婦女は二万人近くに及ぶとされます(南京安全区国際委員会記録)。

 南京事件の実態は、国際的にも日本政府も含め多くの当事者が認めており、歴史的にも学問的にもすでに決着がついた問題です。

 戦後の東京裁判は一九四八年、南京事件について「日本側が市を占領した二、三日の間に、少なくとも一二〇〇〇人の非戦闘員である中国人男女子供が死亡した」「最初の六週間に南京とその周辺で殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万人以上であったことが示されている」と認定。南京事件の責任を問われて広田弘毅(事件当時の外相)、松井石根(当時の支那方面軍司令官)が死刑になっています。

 四六年から始まった中国での国防部戦犯裁判軍事法廷(南京軍事法廷)は、事件の直接当事者として谷寿夫元中将ら四人を死刑に処しました。

 一九五一年に日本が調印したサンフランシスコ講和条約は、「日本国は、極東軍事裁判所ならびに日本国内および国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し」と明記しています。

 今日、日本の外務省はホームページで「日本政府としては、日本軍の南京入城(一九三七年)後、多くの非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できないと考えています」と明確に認めています。

 日本政府や企業を相手に中国人が起こした一連の戦争被害賠償裁判は、「中国人の請求権は放棄されている」などの不当な理由で上級審で敗訴になっていますが、裁判の事実認定では日本軍の非人道的行為を認めています。

 九九年の東京地裁判決は、原告の被害を認めた上で、日本軍について「中国国民に弁解の余地がない帝国主義的、植民地主義的な侵略行為」だと断じています。

 先月二日の東京地裁判決も記憶に新しいところです。南京事件の「ニセ被害者」呼ばわりされた夏淑琴(かしゅくきん)さんが名誉を傷つけられたと本の著者と出版社を訴えた裁判で、原告勝利の判決がありました。判決は「原告は南京事件の生存被害者として広く知られた人物である」と明確に認定。“ニセ被害者”宣伝がいかに歴史的事実にそむくものかを示しました。

「虚構」とゆがめる「靖国」派
 これだけの具体的事例がある南京事件を、「まぼろし」「虚構」などとして否定する動きがあります。あの戦争は正しかったとする自民、民主の一部議員や研究者を名乗る論者ら、いわゆる「靖国」派勢力です。

 「靖国」派の“期待の星”だった安倍首相が退陣した今でも、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長=中山成彬元文科相)には「南京事件小委員会」があり、今年六月には「南京攻略戦争は通常の戦場」であり、大虐殺があったというのは「過去の日本人の名誉を貶(おとし)める」ものだとする報告を出しています。

 安倍「靖国」派政権が崩壊したように、侵略戦争を賛美し、歴史をゆがめる潮流は国際的にも国内的にも孤立を深めています。南京事件を否定しようとする勢力をいっそう孤立させ、歴史の真実をさらに広く明らかにしていくことがいま求められています。

 南京事件の真実を明らかにしようという国際的連帯も広がっています。先月下旬の南京に続いて、南京事件の国際シンポジウムが今月十五、十六の両日、東京で開かれます。

 南京事件と向き合うことは、日本人が日本軍の残虐行為を直視し、二度とくりかえさない決意を世界に発信することです。日本政府はいまこそ真の反省に立って謝罪や補償に乗り出すときです。南京事件七十年は、そのことを訴えかけています。(小寺松雄)

(出所:日本共産党HP 2007年12月12日(水)「しんぶん赤旗」)
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沖縄戦「集団自決」検定問題ー自公政権・文部科学省が検定意見撤回・記述回復拒むー

2007-12-08 22:09:46 | 国内教育
沖縄戦「集団自決」
検定意見撤回拒む
審議会が「指針」 「軍の命令」認めず

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 沖縄戦「集団自決」についての高校日本史教科書の記述に対し文部科学省が検定で「軍の強制」を削除させた問題で、教科用図書検定調査審議会(文部科学相の諮問機関)は七日までに、訂正申請をした教科書会社に対し、「集団自決」の背景を書き込むなどの「指針」を文科省を通じて示し、再申請を求めました。

 この問題では、日本史教科書を発行している六社が「集団自決」における軍の強制性を明記した訂正を申請しています。

 関係者らによると、文科省は各社の担当者を呼び、口頭で「指針」を伝えました。同省は、「軍が『集団自決』を直接命令した事例は確認できない」とし「軍の命令」との表現は認めないとしました。同時に、「集団自決」には複合的な要因・背景があったことを書き込むよう求めました。

 具体的には、軍が手りゅう弾を住民に配ったり、壕(ごう)から追い出したりしたこと、皇民化教育や捕虜にならず死ななければならないという感情を植え付けられたことで、住民が「集団自決」に追い込まれたことなどを記述するよう求めました。「日本軍の強制」などの表現が認められるかどうかについては説明がなかったといいます。

 文科省は検定意見撤回は拒否しており、検定審議会でも「強制や命令といった一面的な記述は妥当ではない」という意見が大勢だといいます。

 これについて沖縄県議会の仲里利信議長は「日本軍という主語や強制などの言葉を抜くことで、あいまいな表現に修正するのは到底許されない」と懸念を示しました。仲井真弘多知事も同日の県議会本会議で「県としては検定意見の撤回と(削除された)記述の回復がなされることを期待している」と答弁しました。

 審議会は年内に結論を出す予定です。

事実と違うなぜ認めぬ
 「沖縄戦の歴史わい曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の山口剛史事務局長(琉球大学准教授)の話 文科省は「軍の命令については断定できない」として、軍強制削除の検定意見をつけました。今回の「指針」はその枠から一歩も出ていません。県民の怒りや証言を再検証したものとはいえません。

 「集団自決」(強制集団死)は日本軍の強制・命令・誘導・強要によって引き起こされました。それを記述の中心にすべきです。手りゅう弾を配ったことを「複合的要因」の一つとして書けといいますが、手りゅう弾の配布は軍の命令があった証拠なのに、それがあいまいになってしまいます。「日本軍」を主語にした記述が認められるかどうかもあいまいです。

 沖縄県民は検定意見が事実と違うから怒っているのです。審議会はこれをまったく受けとめていません。騒がれたからちょっと手直しをして逃げようという姿勢です。誤りを認め、検定意見を撤回するよう求めていきたいと思います。

(出所:日本共産党HP 2007年12月8日(土)「しんぶん赤旗」)
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国際学習到達度調査(PISA)-学ぶ意欲育てる自由と条件を-

2007-12-07 19:29:21 | 国内教育
主張
国際学習到達度調査
学ぶ意欲育てる自由と条件を

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 経済開発協力機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)の結果が公表されました。対象は十五歳で、日本は高校一年生が二〇〇六年にうけました。

 PISAの調査は、学校で学習した知識量ではなく、知識をもとに思考力や自分で問題を見つけて解決する能力などを見るものです。

 日本の順位の「低落」が言われますが、考えなければならないのは順位よりその中身です。

順位でなく中身が心配
 とくに学ぶことへの意欲の低さが心配です。日本の生徒は科学に興味や楽しさを感じず、「科学を必要とする職業につきたい」と思う割合もたいへん低いのが特徴です。科学への関心は調査した五十七カ国中最低と評価されました。

 今回の調査は「科学」が中心でした。日本の生徒は、さまざまな現象を科学的に説明したり、あるテーマについて科学的調査で答えがでるかどうかを考えるなど論理的な問題が苦手です。また前回調査で増えた成績下位層の割合も大きな変化がありませんでした。

 なぜ、学習への意欲が「ずば抜けて低い」(文部科学省)のでしょうか。何より、「高度に競争的」と国連から勧告されている教育制度の問題に目をむけないわけにはいきません。

 高校受験のため、学習が知識のつめこみになり、一つの「正答」を知ればいいという風潮が顕著です。たとえばテストのため顕微鏡の各部分の名前を暗記、国語は問題文を読まずに設問から正しそうなものを選択する。入試体制がうみだす風景です。

 調査でも「生徒が実験室で実験をおこなう」「先生は習った考え方が多くの異なる現象に応用できることを教えてくれる」と答えた割合は平均の半分でした。「生徒は課題の話し合いをする」はOECD平均42%にたいし日本は9%にすぎません。

 政府や地方行政が学習指導要領などにより教員の教育活動を統制していることも問題です。今回うきぼりになった意欲や関心にしても、文部科学省は「関心・意欲・態度」の点数化を教員に強制してきました。その結果、関心などのチェックに忙しく肝心の授業がおろそかになると教員から悲鳴が上がりました。これで生徒の関心が育つはずがありません。

 学ぶことは繊細な精神的営みであり、教育には自由が欠かせません。統制をもちこめば、教える側、学ぶ側の双方の意欲を損ない、結局は失敗することを政府は知るべきです。

 また教育条件も「四十人学級」などではていねいに教えるには困難です。さらに本格的には、子どもから進学や将来の夢をうばう格差社会の影響など広い視野の検討が必要です。

 文科省は「全国学力テスト」などの競争と詰め込みを強めるなど従来の方針の踏襲を表明しています。財務省は「教員の数が多すぎる」と人員削減すら求めています。しかし目を世界に転じれば、こうした日本の方向に未来がないことは明らかです。

広く世界に目を向けて
 PISA調査で三回連続一位となったフィンランドは、大胆な教育改革をおこなっています。習熟度別学級の廃止など競争教育が大きく見直されました。学習指導要領の簡素化など教員の自由を保障し、教科書も教員が自由に選べます。「二十人学級」にして、学習が遅れている子どもへは特別な体制をとり「一人も落ちこぼさない」が貫かれています。

 政府はひろく世界にも目をむけ、憲法にもとづいて、教育政策をおおもとからあらためるべきです。

(出所:日本共産党HP 2007年12月7日(金)「しんぶん赤旗」)

OECD国際学習到達度調査
日本、数学的応用力10位
高校1年生 依然「読解力」低下も

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 経済協力開発機構(ОECD)は4日、2006年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を発表しました。日本は「数学的応用力」が前回(03年)の6位から10位に後退しました。前々回(00年)は1位でした。「読解力」は点数では前回と同じ498点でしたが、順位は14位から一つ下がって15位になりました。

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 点数はОECD加盟国の平均点が五百点になるように換算したもの。

 数学的応用力では一位が台湾の五百四十九点、二位はフィンランドの五百四十八点。日本は前々回一位だったときは五百五十七点でしたが、前回は五百三十四点に低下、今回はさらに十一点減の五百二十三点でした。

 読解力は一位が韓国の五百五十六点、二位はフィンランドの五百四十七点でした。

 「読解力」では、日本は学力格差が前回からやや縮小したものの、前々回よりは大きく、歯止めがかかっていません。

 PISAは知識や技能を実生活にどの程度活用できるかをみることを目的に、三年に一回、義務教育を修了した十五歳の生徒を対象に、ペーパーテストによって実施されています。〇六年はОECD加盟国を中心に五十七の国と地域で約四十万人が参加し、科学的応用力、数学的応用力、読解力の三分野について調査しました。日本では無作為に選ばれた高校一年生約六千人が対象になりました。

 日本は先に公表された「科学的応用力」の結果でも前回より十七点減の五百三十一点で二位から六位に後退しています。

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解説
効果なかった競争と詰め込み
 四日に公表されたОECDの国際学習到達度調査(PISA)は「義務教育修了段階の十五歳児が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価」するものとされています。出題内容をみても、「温室効果」や「酸性雨」など実社会の具体的な問題に、身につけた知識を生かして答えるものが中心になっています。

 前回(〇三年)の調査では、日本は「数学的応用力」や「読解力」が低下しているという結果が出ました。これに対し文部科学省は「学力向上」策として、習熟度別学習の推進、「授業時間数の確保」などを進め、四十年ぶりの全国学力テストの実施を決めて各地にいっせい学力テストブームを起こしました。

 今回の調査結果は、学習指導要領から重要な学習事項を削減した問題とともに、文科省のこうした競争と詰め込みの「対策」が効果を上げていないことを示しているといえます。上位になったフィンランドは、授業時間は短く、少人数学級にして、子ども同士が学び合うことを大事にしています。

 学習指導要領改定に向けての中央教育審議会教育課程部会の「審議のまとめ」は、前回のPISAの結果も念頭に、これからは「活用力」を高めることが必要だとしています。しかし、その「対策」は、例えば「文章や資料を読んだ上で、自分の知識や経験に照らし合わせ、自分なりの考えをA4・1枚(1000字程度)で表現する」など、指導方法を細かく規定し、一律にやらせようというものです。

 このような対症療法的なやり方を上から押しつけても問題は解決せず、現場の矛盾を激しくするだけです。少人数学級や教職員増など教育条件の整備と、教師が子どもの実態に応じてていねいな教育活動をできる自由こそが求められています。(高間史人)

(出所:日本共産党HP 2007年12月5日(水)「しんぶん赤旗」)
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