うらくつれづれ

折に触れて考えたこと ごまめの歯軋りですが

円高と単独介入

2010-09-16 10:37:32 | 経済
円が対ドルで一時82円台をつけた。日本企業の想定為替レートは90円が多いという。円高で、輸出企業の業績影響は大きく、収益悪化は、さらなる人件費を含むコスト削減に動く。国内投資は失速し、失業率は更に悪化し、デフレも進展するだろう。幸い、円売り介入で、85円台にまで押し返すことに成功したが、今後の動向は予断を許さない。

円高自体は、必ずしも悪いものではない。むしろ、国民の購買力の増加につながり、基本的には望ましい。ただ、購買力の増加を国民生活の向上につなげる政策が必要だ。

問題は、急速なショックは、金融取引とはスピードが圧倒的に遅い企業活動に耐えがたいストレスを与える。雇用減少となれば、生活水準低下につながる。企業に対し、適応に準備を与える時間が必要だ。それが、為替介入に根拠を与える。

為替介入は、政府・日銀によって行われる、と言われる。これは、誤りだ。実際は、財務大臣が、所管する外為特会のオペレーションを日銀に命じて実施される。つまり、主役は、財務大臣だ。

外為特会は、1兆ドル(85兆円)以上の資金量がある。財務省は、短期国債を発行し資金を調達し、その資金を外貨を買う。それが、積もり積もった金額が、これだ。つい、この間までは、外為特会は、20兆円程度の黒字があり、埋蔵金の財源として注目された。しかし、このところの円高で、ドル資産が目減りし、逆に、20兆円以上の赤字になったとされる。

今回の介入に対し、内外の関係筋では、協調ではなく日本の単独介入であり、長続きしないというのが、支配的見解のようである。

しかし、それはどうか。

介入には、外為特会による国債発行が必要である。今回の介入では、一説には、1兆3千億円の資金が用意されたという。資金が必要だ。政府が累積債務に悩む現在、さらに国債発行を行うことになっている。国債発行額一定の限界がある以上、無限に介入を続けることは不可能だ。

問題解決は、現行外為特会の廃止にある。廃止して、日銀資産に吸収するのである。日銀には、政府の基本方針に従い、自らの行為として為替介入を実施する。日銀は、国債ではなく、円を増発して介入する。円の増発には天井はない。無限に介入が可能である。介入に制限がない以上、永続的な為替水準維持が可能である。そうなれば、投機筋も円投機を逡巡するであろう。

外為特会の廃止には、日銀・財務省双方が反対するであろう。日銀は、自らの財務バランスシートが、為替動向に左右されることになる。組織としての収支が影響をうける。国民の利益より、組織の利益を優先する立場からは、この提案は受け入れがたい。財務省は、膨大な外為特会の運営に付随する利権を喪失することになる。85兆円の資金運用には、多様な集団が巣食っているだろう。
この提案は、デフレの解消にも資する可能性がある。デフレの解消には、アメリカが行っているように、日銀の資産ベースを拡大(見合いとしての円の増発)しなければならない。資産拡大のため、日銀はあらゆる資産を購入すべきである。チャイナのように世界中から資源を購入してもいいし、アメリカのようにリーマンショックで発生した不良資産を購入してもいい。

国債を買っても良いが、日銀は、国債購入には、徹底抗戦している。コントロール不能のインフレになるからという。しかし、金融的には、インフレはデフレよりはるかにコントロールしやすい。コントロール困難なのは財政赤字だ。日銀が自らの金融責任を棚に上げ、財政コントロール不能の心配するのは、越権行為であろう。財政は、財務省と国会の責任だ。

外貨も購入対象だ。外貨の購入で円が増発され、デフレ解消に資することになろう。円高となり購入した外貨が目減りすれば、日銀のバランスシートが悪化し、円の実質価値が減少するであろう。こらは、更なる円高に対する抵抗力を高める効果がある。

日銀は通貨価値の番人とさされる。物価指数だけではなく、外貨との関係で円の価値を一定に維持するのは、日銀の本来業務ともいえる。

介入に当たって、気をつけなければならないのは、アメリカの干渉だ。アメリカは、自らのドル安政策のつけを他国に求める。チャイナのようにあからさまな重商主義をとっている国の為替管理が非難されるのは当然だ。しかし、為替変動の平準化を目指した介入は異なることを主張すべきであろう。また、長期的には、外貨以外での日銀の資産ベースの拡大により、デフレ解消をあわせ、自然な形でのシステマティックな為替調節を指向すべきある。

いずれにしても、現下の経済困難を解決するためには、制度改革が避けられない。菅総理リーダシップがあるか。民主党自体が国難とならないことを祈りたい。

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