uparupapapa 日記

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ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第16話 対中国家総動員と井口外相

2023-12-06 11:34:32 | 日記

 インド国会での演説を終え帰国した平助の国政活動は,、多忙を極めた。

 帰国後直ぐに通常国会が開かれたのだ。

 国会と云っても、その役割別に『特別国会』『通常国会』『臨時国会』がある。

 その首相指名後行われる『特別国会』で所信表明演説を行った平助や新閣僚・官僚の活動が始動してから、彼らは鬼のような動きを見せる。

 

 国会と言えば旧国会では野党の追及、与党の攻防戦の印象が強いかもしれないが、ネット政変・憲法改正後の今では、各委員会、国会本会議の審議の場での争いは起きない。

 そもそも立法府などの政府機関では、スキャンダルやミスを追及したり、責任ある言質げんちの揚げ足をとる場ではない。

 現在ではネット政変以前の旧与党・野党の概念で運営されてはいないのだ。

 非生産的な与野党の争いからは、何も生まれない。だから不祥事やスキャンダルの追求は専門の管理委員会である所轄の風紀・倫理審議会が執り行い、矯正勧告、処罰が執行される。

 よって国会・各委員会・諮問機関等は、純粋に立法・行政のみに専念できた。

 それが本来国民から負託された責務であり、当然のシステムと言える。

 

 平助は国民向けに一連のインドでの活動報告を行い、国際社会に於ける現状の日本の立ち位置や問題点、今後の方針などを絡め、国民の理解を得られるよう、誠心誠意説明した。

 

 と言っても、平助のみが孤軍奮闘しているわけではない。

 対中政策は国家存亡をかけた一大事業であり、一か八か、行き当たりばったりのいい加減な政策であっては困るのだ。

 前話にて平助の対中方針・行動は説明したが、それは将棋の駒の一手に過ぎない。

 この事業は関連部署を総動員した作戦行動である。

 つまり外務省・防衛省・経産省・公安・対中諜報機関等を内閣官房が統括し、事前に政府公募の専門諮問委員会が綿密に情勢分析・プランを幾重にも吟味し策定した『対中侵攻防御行動要綱』を上奏、最高機密案件として承認されている。

 それについて表立った政策行使となる国民・国際社会へのパフォーマンスとしてのASEAN諸国やインド・中東への要人訪問であり、平助のインド国会演説であったのだ。

 またアメリカやNATO極東事務所との情報交換や意思疎通なども当然の如く欠かせない。

 

 その他『対中侵攻防御行動要綱』の中で一番肝要なのは、対中直接諜報・工作である。

 だが中国国内は、異常に発達した(監視カメラ網など)監視体制下では活動は不可能。 

 

 ではどんな方法で?

 

 それは世界中で暗躍を見せる中国工作員の寝返り工作(二重スパイ勧誘)や、途上国での経済・技術協力と称して鉄道、舗装道路、空港、その他インフラ建設で無数に従事する責任者の取り込み工作を総力で進めた。

 

 それらは中国国内の武装破壊工作を目的としない。

 中国国家の将来は、このまま傲慢で利己主義の要求を強要する強権主義では孤立を深め、国民の不満を上手く処理できず、国家が瓦解する。

 中華民族そのものの国家滅亡を招くような今の政権の政策を改め、国際社会で信頼と確固たる地位を獲得するためにはどうするかを解き、(徹底した個人利益追求の民族的特性を刺激・くすぶるため)思考と行動を改める事が、自分個人にとってどんな利益があるのか具体的に示し、改悛させるのだ。

 その結果として台湾・日本侵攻を断念させ、執拗に行われているサイバー攻撃等も無力化させる。

 もっと言えば、独裁専制体制を終わらせ、真の民主国家へ再生させることを最終目的として活動した。

 

 これら国際連携による包囲網形成と、諜報懐柔工作などを織り交ぜ、目的を完遂するのが『対中侵攻防御行動要綱』である。

 そのためにも『別班』のような秘密諜報組織が必要なのであり、対中諜報工作員は単なる公安組織ではないのだ。

 当然のこと乍ら、中国当局がこれら一連の日本の行動に気づかない訳がない。

 当然彼らも対抗策をとってくる。

 だから日中攻防戦は熾烈を極める緊迫した状態にある事を理解する必要があるのだ。

 そしてこれら国家挙げて真剣な対抗策を打ち出さなければ、日本に未来は無い。

 対策の量と質をこのくらいのレベルで対抗しても尚、危うく厳しい状況にある日本。

 

 故に斜陽化され落ちぶれた産業の再生による国力増大と、自前の資源エネルギーの開発を推進させることは、経済・外交・軍事衝突の見地からして、国際的自立が極めて緊迫した喫緊の課題なのである。

 それに加え国内産業構造を、従前からの行き詰まり歪化いびつかした欧米型資本主義にしがみ付くことなく、日本独自の工夫を加え資本主義でも社会主義・共産主義でもない、新たな独自工夫を発展させた本格的経済・産業構造構築主義を早急に確立させる。

 その結果、それらを支える国民の民生を大きく改善し、意欲を高めるのは必然の国家経営目標なのであった。

 そうした幾重にも周到な一連の準備が必要であり、慎重な行動の積み重ねしか『対中侵攻防御行動要綱』成功は有りえない。

 

 

 だから平助の所信表明演説による国民への呼びかけや、インド国会での

友好・国際連携を求める演説には説得力があり、鬼気迫るものがあったのだ。

 

 

 

 

 そんな政策遂行では、平助の他に元英会話塾の講師、井口外相(36)が大車輪の活躍を見せていた。

 彼は普段「お姉ぇ」言葉を使うが、公の場では平助より人生経験が長い分、堂に入った標準男性語(?)を発し、堂に入った貫禄ある外相ぶりを見せる。

 そして塾の講師を経験している分、分かり易く、示唆に富み、説得力のある話術に長けていた。

 主に対外交渉相手として、アメリカ・EUを担当。

 彼ら海千山千の山賊どもを相手に、丁々発止の交渉術を見せる。

 彼ら西洋人たちは、東洋での政変の結果生まれた庶民素人出身の井口外相を、はじめから舐めている節があった。

 だが年長の貫禄・井口外相には、アメリカ・EUのエリート白人要人のそんな政治素人庶民の東洋人を侮蔑する態度や言動などの差別行為など、一切通用しない。

 得意の悪ガキ英会話塾生との関りで培った【かわし】で、臆せず口撃を受け流し、決して有利なマウントを譲らない。

 そして(同じく塾で培った)人心掌握のウイット溢れる軽快なテンポの話芸で相手を翻弄し、自分のペースに巻き込む寝技を得意とした。

 

 彼の主な具体的業績は、TPPにアメリカを準会員として名を連ねさせた事。

 Jokerジョーカー大統領はTPP加盟交渉から脱落させた張本人。

 その彼を説得。準加盟国ととして引き入れ、中途半端ではあるがここまで譲歩させたのは、本来なら考えられない程、極めて画期的な事であった。

 また、NATOの極東事務局を日本に開設させるため平助のインド国会での演説同様、異例にも果敢にEU総会、NATO会議にも出席、加盟各国を前に演説。 

また、極東事務局を日本に置く事をあれだけ反対したフランス説得を試み、見事成功させている。

 

 

 

 こんな実績を持つ百戦錬磨(?)の井口外相は、意外にも心の奥底で平助たち角刈り三人衆の仲間入りがしたいと思っていた。

 こう見えて楽しい事が大好きで、いち早く三人組を結成した平助・田之上官房長官・SPの角刈り杉本を密かに羨望の目で見ていたのだ。

 ただ、彼は三人衆より年上で、お姉ェキャラを信条としているため、自分から積極的に男臭い彼らの仲間入りをする勇気がなかった。

髪形も角刈りを受け入れられず、自分のヘアスタイルを変える事はアイデンティティーに関わる重大事なので、どうしても譲れない。

 そうした井口の思考を察する能力に長けた平助が、彼の様子から秘めた要望にいち早く気づく。

 そしてなるべく自然に、積極的に声をかけ、仲間に引き入れるようけしかけた。

 もちろん他の角刈りふたりに異存はない。

 ヘアスタイルが(特に女性陣に)不評を買い、気まずい孤立気味の立ち位置を打開すべく、仲間を増やす平助の行動に賛同した。

こうした事情から現状維持ヘアスタイルの井口外相及び、彼の秘書衆を引き入れる事に成功、年長の井口を尊重し、『ダンディー井口と角刈りーズ』と命名、むさい趣味の派閥を結成した。

 但し、年長の井口を尊重するのは仕方ないが、お姉ェキャラなのに『ダンディー』とは見た目の印象とはそぐわないのでは?との異論が当初から燻り、更に井口の秘書たち三人も普通のエアスタイルを捨てないため、角刈りは元々の三人に過ぎない。

 なのに『角刈りーズ』とはおかしいのではないか?との意見も根強い。

 そうした矛盾を内包したまま『ダンディー井口と角刈りーズ』は第四代応募組の中で大きな存在感を発揮した。

 そしてそれを見て対抗する勢力を後に築くカエデ・エリカ・鯖江さばえを中心とした多くの女性陣が、『ビューティー・フラワー・ガールズ』を結成した。

 それをカエデから聞いた平助が、間髪入れず「誰がビューティやねん?誰がフラワーやねん?誰がガールズやねん?」とツッコみ、第四世代全女性の地雷を踏み、総スカンを喰らった。

 つくづく女性の地雷を踏むのが好きな平助首相。

 そんな事で一致団結できるのか?

 指導力が危ぶまれるヘッポコリーダーであった。

 

 

 

 

 

       つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第15話 パンデミックと宴会

2023-12-01 06:40:49 | 日記

   2019年、中国武漢を震源に、全世界に激震が走った。

 パンデミックの始まりである。

 人々は接触を禁じられ、話すことも出歩くことも仕事をすることもできない、孤立無援の生活を強いられた。

 歴史を紐解くと、過去に幾度もパンデミックは発生している。

 しかし直近の発生でも約100年前のスペイン風邪だったので、現在生きている人類にとってはほぼ初めての経験と言えた。

 世界経済は大打撃を受け、ワクチンの争奪戦が始まったのは記憶に新しい。

 感染による死者の増加、営業活動ができないが故の企業倒産、実質的なロックダウン状態が社会全体を隔離し、孤立した。

 そうして人々の心は病み、うつ病若しくはそれに準じた症状が蔓延する。

 

 その時マスコミでは報じられない数多くの悲劇が生じ、その爪痕はパンデミックの喪が明けても消えなかった。

 

 カエデの父はこの時の感染で命を落とし、最後まで努力が報われず、残す家族の行く末を案じながら別れを告げている。

 

 人生二度の経営失敗。

 一度目はカエデが小学校二年生の時。二度目はパンデミックの嵐が招いた長い営業休止による倒産。

 その倒産を目前にした危機にも、懸命に経営を支えようと諦めなかった父。

 誰にも助けてもらえない中、奔走続けた行動の末の感染だった。

 

 当然のようにカエデは大学進学を諦め、≪スーパー激安≫に就職した。

 だが、彼女は平助と違い、成績優秀な女性だった。

 ただ兵助に対してのみ、口が悪いだけである。

 進学を諦めざるを得ないと悟った時の彼女の心境はいかばかりだろう?

 しかしカエデはそんな落胆の色を微塵も見せなかった。

 

 いつにも増して平助に関わるようになったのも、丁度この時からかもしれない。

 

 何故ならカエデが悲嘆にくれた時、いつも傍に寄り添ってくれていたのが平助だったから。

 平助はドン臭く不器用だったが、人の痛みに敏感で顔に似合わないやさしさを持ち合わせていた。

 そっと差し出すその手には、いつも温かみがある。

 だがお互い素直になれず、つい突き放してしまうのだ。

 

 

 そんなカエデの上司 佐藤 鯖江さばえも、この時のパンデミックの悲劇をまともに受けている。

 鯖江さばえの夫 石松は商業施設に商品を配送する流通業に従事するトラックドライバーだった。

 その日は職場で同時にふたりの感染者が出たため、人員不足から過重労働を強いられていた矢先の事、疲れと過密配送スケジュールが彼を追い込み、運転中目の前に飛び出した猫に気づくのが遅かった。

 そして咄嗟の回避行動が事故を招き、自身の命を落とす結果となる。

 妻の鯖江さばえの他、庄吉(5)と瑛太(3)というふたりの幼い息子を残し旅立った石松。

 いまわきわ、石松は鯖江さばえに最後の言葉を託す。

 

鯖江さばえ、済まない。こんな事になっちまって・・・。

後は頼む。この子らを何とか一人前になるまで育ててくれ。」

 

 当初、悲嘆にくれる鯖江さばえだったが、残された幼い息子ふたりを育てるため、以降は鬼神の働きを見せるようになる。

 

 そうして鯖江さばえとカエデが≪スーパー激安≫で出会うようになったのだ。

 

 

 一方平助は、それから数年後の27歳で次期首相としての特訓、28歳で第四代首相となり、今まさに眼前の問題に悪戦苦闘する日々を過ごしていた。

 

 特に最重要課題として、中国問題があった。

 武漢コロナで世界中に大迷惑をかけてきておきながら、厚顔無恥なその国は一切の責任を取らず、更に自らの失策から内政にて経済危機と財政危機を招き、時の独裁政権が末期的症状を見せていた。

 国民の不満の矛先をらし、政権浮揚を賭けるには、一か八かの策として台湾侵攻を企て、その準備を進めるしかない。

 

 そして台湾侵攻による武力侵略は、当然日本にも派生する。

 もちろん日本は数年前から対抗策を準備してきたが、国力2倍以上、兵器数2倍以上、兵力10倍以上の中国に対抗するには独力では困難を極める。

 更に中国は核保有国。宇宙開発も積極的に進め、宇宙空間からの攻撃兵器開発も順調に進めていた。

 それに対し、日本は頼みの綱の日米安保もjokerジョーカー大統領では支援を期待する事はできない、絶体絶命の不利な状態にあった。

 

 当然日本国内からは核開発、核武装推進の声も聞こえ始める。

 日本は唯一の被爆国であるのにだ。

 

 もちろん日本政府は核開発疑惑を否定する。

 しかし中国・北朝鮮・ロシアの狂人国家を隣国に持つ日本は、人類の平和理想論を堅持するだけでは生きられない。

 だから核開発は否定しつつ、その裏で密かに開発しているのではないか?との素振りを匂わす疑惑のポーズもとり続けた。

 それは核武装が国民の根強い反対から総意を得る事が実質困難であるとの事情もあるが、その気になれば一夜にして完成できる技術的蓄積があるから成せるワザでもあった。

 

 更なる別な不安材料として、核の他に日本国内に潜伏する多くの中国人破壊工作員をどうするか?との問題にも対処しなければならなかった。

 中国には『スパイ防止法』(反スパイ法)『国家安全措置』等が存在し、中国人である限り、国の内外に関わらず、命令一下破壊活動やスパイ工作活動従事の義務を負う極めて危険な存在であるのだ。

 現存の日本の公安組織では、国内に無数に存在する中国人、とりわけ彼らの誰がその危険な存在であるのか容易に判別・対処できない状態にある。

 そうした事情から、中国人を対象とした監視の強化が必要となり、結果、新たな対中国専門公安組織が結成された。

 

 これは自由主義国日本にとって、極めて危険な動きであり、大っぴらに公表できる事ではない。

 だが、絶対必要な対抗策でもあり、数年前世間を賑わせた『別班』のように、秘密の団体扱いとされた。

 国民の権利を侵すことなく、対外的な防御策を講じるにはそれしかなかったのだ。

 

 平助はそれらの対策に手を染めながらも忸怩じくじたる思いを抱き、意に添わないこれらの政策を自分なりに深く考えた。

 内閣総理大臣たる自分の使命は、国民の安心・安寧を守り、未来の希望を守り抜く事。

 

 ただそれは、いくら自分が内閣総理大臣という立場にあっても、自分ひとりでできる事ではない。

 政府の行政組織が一丸となってもまだ足りない。

 日本の国民の心をひとつにしてもまだ足りない。

 

 敵対する国の民の心も変えてゆかねば、武器や威嚇など、武力対抗策を永遠に続けなければならない。

 武力対抗策。それはそれで緊急対策として必要不可欠ではあるが、それだけに頼り、後は何もしないのであれば、それは愚策と断じるべきであろう。

 

 ではどうする?

 

 国民同士の交流を深めようと求めても、一方的にスパイ容疑で拘束され、最悪死刑を含む極刑に処されてしまう。今の彼らは平気でそういう暴挙を実行するのが現状。

 

 それを避けるために様々な努力と工夫が成された。

 例として平助は自ら先頭を切って一般国民との気さくな日常交流を(元々平助自身が一般国民の庶民だし)マスコミに意図的に報道させ、中国の独裁指導者の物々しい警備体制や威圧的な雰囲気との違いを際立たせ、露出させた。

 また例えばアニメなどの日本の誇るコンテンツを盛んに中国に浸透させ、平和や自由の尊さ、他者の権利を力づくで奪う愚かさ、お互いを尊重し合う血の通った人の道を説く内容を広く浸透させ、傲慢な思考を改めさせる。

 例えば国際社会での中国の野心の封じこめを図るため、国際協調路線を定着させる様々な工作活動を国を挙げて実行し続ける。

そのためには、平助を含め、閣僚などの要人に国際社会での呼びかけ等、より一層強化する。

有事の際のため国際提携体制を構築し、具体的な対抗策、防御策を共有する。

それには国単位で総力を挙げASEAN諸国やインド、中東諸国等をくまなく回り、一度だけで満足せず、政府機関、民間組織等各階層ごと幾重にも訪問、接触を試み、共感・価値観の共有を得る努力を重ねるなど、考え、実行できることは総て躊躇なく行うようすべきだと平助は思い、実際に行動に移すことにした。

 

 ある日インド国会に招聘され、異例ともいえる演説を終えた平助に、帰国してすぐに居酒屋『炉端焼ろばたやきうまいっしょ』で慰労会が敢行された。

 メンバーはお馴染み角刈り三人衆と、そのメンバーのひとり田之上官房長官の秘書河本秀樹と安嶋本之である。

 河本秀樹と安嶋本之は元々田之上官房長官の大学(二部)の同級生であり、苦楽を共にした無二の親友であった。

 更に後から平助の第一秘書である飯島、第二秘書の加藤、そして第三秘書のエリカが合流してきた。

 それにどういう訳か、カエデと鯖江さばえまで紛れ込んできて、慰労会の場は、ヒッチャカメッチャカな様相を呈してくる。

 

「平助首相、お疲れ様!先ずは乾杯!!」

 田之上官房長官の乾杯の音頭で宴会は始まった。

 角刈りの杉本はいつものことながら、SPの職務を忘れ並々と注がれた大ジョッキーを一気に飲み干し、一番乗りで赤ら顔になる。

 

「おい!カエデ!お前どうして呼んでもいないのに此処に居る?」

「平助のくせにお前って言うな!私が此処に居るのはエリカさんが女性は私ひとりじゃ浮いちゃうし不安だからあなたも来て!と頼まれたからよ。

私が行く!って言ったら、鯖江さんも来るっていうから一緒に来ちゃった。

 ダメ?ねぇダメなの?」

「ダメなんてとんでもない!大歓迎ですよ!!」と目尻を下げた田之上が言った。

 どうやら田之上は女性が増えたら場が華やぐとでも思ったらしい。

 それは大きな考え違いであると、後に思い知ることになるが。

 

 

「コラ!平助!!お前、総理大臣になったからってチャッカリ海外旅行してるんじゃない!」(何で私も連れて行かない?)とは云わなかった。

「海外旅行ォ?何、寝言言ってる?

 国の命運を賭け、国益背負ってインド国会に説得しに行ってんのに!

 バッカじゃないかい?」

「寝言?どうせ平助のことだから、インド美人から蝶よ花よと甘い接待でも受けて来たくせに!」

「そんな事あるかい!インドの国民たちの目もあるのに、そんなチャラい事してなんていられないよ。」(とはいっても、演説後の夕食会では美人な給仕さんたちがたくさんいたが。それは内緒。)

「そうですよ!平助首相の演説は、それはそれは素晴らしかったんですよ!

 私は傍らで聞いていて、凄く感動したくらいですからね。

 そのうちインドの国会に平助首相の銅像や肖像画が見られるんじゃないですか?」

 と同行していた第一秘書の飯島が請け合った。

「そんな大袈裟な!ホントにそうかしら?平助首相!外遊は費用対効果ですからね。

 ちゃんと結果を出してくれないと、厳しい予算の中、やり繰りが大変なんですから!」と鯖江さばえが言う。

 平助に対する予算だけ、厳しい査定をする傾向が鯖江さばえ主計局長にはあるようだ。

 どうやら≪スーパー激安≫での不正値引きシール提供問題が、ここにきて尾を引き影響しているのか?

「外遊じゃないし!国賓待遇に準じた国事行為として、ちゃんと仕事してきたし!

 それに費用対効果では測れない、でっかい手ごたえも掴んできたし!」

 と、口を尖らせ平助が抗弁する。

 そこにエリカが援護射撃(?)をする。

「私は今回の外遊には参加してないけど、インド国内では大した反響が有ったそうよ。

 ホラ、もうその時の演説がYouTubeにUPされてるわ!再生回数もこんなによ!!

もの凄いじゃない!!

平助首相は口が上手いみたいね。」

「だ・か・ら!!外遊じゃないし!それに『口が上手い』って、人を詐欺師みたいな評価をして欲しくないし。」と、また口を尖らして抗弁する平助。

「私の前ではこんなにおバカな平助が、いっちょ前に外国に行って偉そうに演説ぶって、大丈夫なのかなぁ、あたしはそれが心配なのよ。」(やっぱり私がついていないと平助はダメだと思うと暗に仄めかすカエデであった。)

「おい、これって本当に僕の慰安会なのかい?さっきから僕の歴史的な偉業がけなされてばかりみたいなんだけど。」

 と冴えない顔の平助が今回の宴会の幹事である第二秘書の加藤に言う。

「誰も平助首相の偉業をけなしてなんかいませんよ。

 ただ、平助さんの人間性をけなしているだけです。」

「オイ!」と言う平助。

どっと笑う参加者たち。

 

 

こうして和やかに宴会の時は流れ、夜は更けてゆく。

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

    つづく