uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】 第7話  鬼の猛特訓

2023-10-31 03:02:15 | 日記

   平助は内閣総理大臣内定の通知を受けた後、会社から二年間の出向辞令を受けた。

 (後述するが、任期は一年、事前研修と実地研鑽に一年の実質二年)

 池崎食品の社長、池崎はすこぶる上機嫌である。

 何せ自分の会社の社員が総理大臣となり、国から多額の出向の欠員補助金が支給されるから。

 

「やぁ、竹藪君!よくぞ総理大臣の重責を引き受けてくれた!私も社長として鼻が高いぞ!!良くやった!良くやった!!」

 そうして両手で強く平助の手を握った。

「社長、僕はまだ何もしてません。良くやったと言われても、今はむしろ逃げたい気持ちでいっぱいです。

 社長、あなたのせいですよ!私に逃走資金を出してください。」

「チミ!何を言ってるんだ!逃走?ダメダメ!チミが逃げたらウチの会社に補助金が入ってこないじゃないか!なんてとんでもない事を!このバチあたりが!!わしゃ、許さんぞ!!」

 そう云って辞令を押し付けるように平助に渡した。

 恨めしい顔の平助。

 ロッカーの私物を片付け、トボトボと自分のアパートに帰った。

 すると当然のようにカエデが待ち受けている。

 この頃カエデは何だかテンションがハイである。

「平助が総理大臣になったら、テレビに出るの?そしたら有名人ジャン?この平助がテレビに出るなんて夢のよう!!やったね!!」

 大体がこんな風なのだ。

 

 

 やがて平助はまた霞が関第5庁舎の『内閣府別館』から呼び出しをくらい、あの板倉と面談した。

 「どうです?覚悟は決まりましたか?」と笑顔で聞いてくる。

 「んな訳ないジャン!もう泣きそうだよ。見たら分かるっしょ!」

  板倉が顔の左だけクスリと笑う。

  それをみて平助は(腹立つわ~)と思った。

 「大丈夫ですよ。これから私が貴方をミッチリ仕込んで差し上げます。

 誰の前に出しても恥ずかしくないような国の代表に仕立てて御覧にいれますので。

 大船おおぶねに乗った気持ちで私に身をゆだねてください。」

 「板倉さんが如何にも自信たっぷりに『身をゆだねてください』なんて真顔で言うと、返って不安になっちゃいますよ。

 僕はどんなに追い詰められても、川を10mも飛び越えられませんからね!

 その辺、ヨ・ロ・シ・ク!!」

「♪♪重いコンダラ試練の道を♪♪

それが私のモットーです。大丈夫!!私を信じなさい!」

「あんた、危ない宗教か?」

 

 

 

 こうして板倉と平助の血の滲むような3カ月間の猛特訓が始まった。

 

 重いコンダラを引きながら・・・って、コンダラって何?

 

※昔、(昭和40年代初期)『巨人の星』と云うスポーツ根性ものの超人気テレビアニメが放映されていた。その主題歌に登場する歌詞の一部である。関心のある人はYouTube等で確認してみてください。

 因みにその頃熱狂的に見ていた子供達、今は皆、爺(ジジイ)です(私を含めて)。

 

 

 

 

 

 

(どうやら板倉は♪♪思い込んだら♪♪の歌詞を♪♪重いコンダラ♪♪と勘違いしているようですね。

一体どこで知ったのでしょう?こんな曲)

 

 

 平助が血みどろの特訓を受けている頃、平助からみて先代にあたる今の現職総理大臣が汗を拭き拭き国会答弁を行っている。

 その姿を参考に、平助が答弁シミュレーションを何度も繰り返す。

 背後に立つ板倉が鬼の形相になり、隙をみて容赦なく平助の肩を竹刀で打ち据える。

 まさしく血みどろの特訓なのだ。

 

 「平助さん!今は政策総てがネットアンケートで決められています。

  そしてあなたの仕事は、そのネットアンケートで決められた法律を公布し、その他外交などの国事行為の内容を国民に知らしめ、納得を得ることです。

 だから今のあなたのように如何にも自信なさげに目を泳がせて話されても困るんです。

 あなたが国会で答弁する時は、確かに国会中継があり緊張するのは分かります。

でも衆議院であれ、参議院であれ、昔の立法府ではありません。

 議会と云う名の公的審議会を構成するメンバーに過ぎないのです。それも昔の国会議員の10分の1に人数を減らして。

 あなたが目の前にして演説する相手は、あなたと同じ1年間の公募要員だと言う事を忘れないでください。

 そしてあなたが本当に語りかけなければならない相手は、テレビカメラの向こうの国民であると肝に銘じてください。」

「それと国会の審議会メンバーは、ネットアンケートを集計した内容を吟味し、法案を立案、公布に至るまでの過程を司る部署。重ねて云いますが、あなたはその内容を国民に知らせるのが仕事です。

 だからそれだけなら誰でも出来る仕事であり、あなたにしかできない仕事でもあるのです。

 その事を十分理解し仕事に臨んでください。」

 

「板倉さんの云いたい事は分かるのですが、竹刀で肩を打ち据えるのはどうかと思うのですがね。」

「何を言うのですか!首相職はスポーツ根性職ですよ!汗水流して重いコンダラを自ら望んで引くのです!その根性を養うためには厳しい修行が大切なのです。分かってますか?」

「だから『重いコンダラ』って何?

 それに任期が1年って長すぎじゃね?

 半年くらいなら耐えられそうとも思うんですがね。」

「世界には確かに任期半年だけの国も存在します。

 しかも2名の大統領制で(但し、大統領とは呼ばず、執政官と呼ぶそう)。

 でもそれは都市国家に近い小規模の国だから出来る事。(例えばサンマリノ共和国とか)

 日本のような規模で国際的貢献度の国がその制度を採用したのでは、様々な不都合や遅滞が生じます。

 だからそれは不可能なのです。

 四の五の言っていないで、そろそろ腹を括ってください。

 そうでないと、あなたが総理大臣になった時、前任の首相(現任の首相)と比べられて低い評価しかされないのですよ。

 良いんですか?

 今の首相は大したことないね、って陰口叩かれ、笑い物にされても。

 「如何にも自信なさげだし、詐欺師みたいだし、顔はしょぼいし、足は短いし、女性にモテそうもないし。」なんて言われても?

 「ドサクサに紛れて板倉さんの本音が出てね?

『詐欺師みたいだし、顔はしょぼいし、足は短いし、女性にモテそうもないし』なんて。」

「私の本音ではなくて、そんなあなたを見た国民の感想はそうなるだろうと言う事です!」

「そうかなぁ?そうかなぁ~?

まぁ良いわ。そんな評価を貰わないよう、精々頑張ります。」

「精々ではなく、顔を上げ、まなじりを釣り上げて拳に誓うのです!!

絶対頑張る!!!って」

 

 

 矢張り板倉にはついて行けそうもないと思いながらも頷く平助であった。

 

 

そしてヘトヘトになりながらアパートにたどり着くと、エプロン姿のカエデが目を輝かせ待ち構えていた。

 どうやらカエデは、平助がアイドルになろうとしていると勘違いしてるようだ。

 それにはビジュアルからして無理があるだろうに。

 

 心の休まる暇のない平助。

 

 可哀想・・・・。

 

 

 

 

 

       つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第6話 【ネット直接民主主義党】(通称ネット直民党)結成

2023-10-24 15:44:51 | 日記

  国民の不満が沸騰点に達した頃、SNSにある投稿がUPされた。

 曰く、

『代議員による間接民主制は国民のためならず。』

昔と違い、国民の声を直接反映させる手段として、インターネットがあるのだから、

『何も議会制にこだわる必要は無い!』

公平に国民の声を反映させるのなら、「地盤、看板、カバン」が立候補に必須の条件の議会制民主主義はもういらない!金持ちや権力者しか議員になれないから、彼らから特権意識が消えないし、国民のための政治をしようとしないのだ。

 

 

 最初はその投稿を誰も相手にしない。

 しかし幾度も諦めず投稿すると、次第に[いいね]がつき、数が増えてくる。

 そのうちこの投稿に共鳴した、似たような主張の投稿が複数登場しだす。

 

 特に積極的に主張する者が10人程現れ、それぞれがリーダー的な立ち位置になる。

 彼らは草創期10人で『10人衆』と呼ばれ、共鳴者たちの中から更にリーダーが増え、20人衆、25人衆と拡大、定期的に意識統一と意見交換のためネット会議や年に一度直接会い、コンパを開くようになった。

 彼らリーダーたちはそれぞれのblogや動画チャンネル、SNS等で情報や主張を発信、読者の意識改革に大きく貢献した。

 

 

 一般的に日本人は特有の自己責任的発想が思考を支配している。つまり病的に責任感が強いのだ。

 例えば自分がブラック企業に勤めているとする。

 大半のブラック企業には、青息吐息の経営状態、そんな企業にありがちなパワハラ、モラハラ、セクハラが当然の空気として充満していた。

 そしてその加害者たちは巧妙に自分の罪を隠ぺいし、犯罪逃れの構造が浸透している。

 そんな業績不振の責任転嫁案件や人格否定の言動や威嚇などの方法で攻撃する体質、それらを以って弱い立場の者を追い詰める彼らに対し、被害を受けた者たちはその構造的理不尽な攻撃に対し、自分の能力不足、努力不足が悪いと信じ込まされ追い詰められる。

だが本当に総て自分が悪いのか?

もちろん責められても仕方ない自業自得のダメ社員もいるだろう。

でもそんなダメ社員ではなくとも、無能な上司や経営者の尻拭いをさせられる者、たまたま性格的・感情的に合わない部下を攻撃する自己中で意地の悪い輩や、意のままにならない同僚や部下に日常的に嫌がらせをする者からの被害を受ける普通の弱者が大勢いる現状が存在するのは事実。

しかしどんなに頑張っても個人の力ではどうにもならない、そんな会社の仕組みに支配された現状に『仕方ない』と考え諦めてしまい、問題意識を持つ人は少ない。

会社だけではない。

学校、行政サービス、家庭・町内会など様々なコミュニティーの中にあっても状況は同じで、弱者が強者の声高な主張の前に屈伏する。

狡猾に有利なマウントをとった者が勝者となり、偽りの正義を振りかざす。

 

それで良いのか?

 

弱い立場で気弱な自分の切実な声は誰にも届かず、いつの間にか自らの処世術としての信条を『我慢するか、諦める』しかないと感情を押し殺す。

 自分は弱者なのだ。このままでは一生弱者のまま。死ぬまで負け犬として過ごすのか!

 それって絶望ではないか!!

 

 それで良い筈はない!!

 

 ではどうする?

 

 自分個人の意識を変え、社会を変えなければ、現状は何も変わらない!!

 

そう云う認識が広く国民の間に広まった。

 

 

 それでは具体的にどうするのか?

 

 25人衆の度重なる話し合いで、ある精神・行動規範を取り決めた。

 

 その具体的内容とは、明治維新直後に発刊された福沢諭吉の『学問のすゝめ』に添った国家経営と個人教育を推し進め、自由と平等の理想とする概念を具体的に指し示し、規範とするのだ。

 

 何やら古臭く現状にそぐわない印象を受けるが、『学問のすゝめ』を実際に読んでみると、極めて重要で民主主義の根幹を成す精神的支柱であるべき事に気づく。

 

 

 例えばあの有名な『天は人の上に人を創らず、人の下に人を創らず』との文言は、決して天の創りしこの世が無条件に平等だと言っているのではない。

 むしろ不平等な世の中だから学問(実学)に勤しみ、その努力によって各々が力をつけ能力の差を縮め、不平等の差を無くす。それこそが平等のあるべき姿である。

 

 また自由とは決して無制限に行動を保証するものであってはいけない。

 

 結果的に他人に迷惑をかける行為は他者の自由を圧迫する。私利私欲や煩悩に支配された状態は社会や国家間に憎しみを生み、争いの元になるだけである。

 だから自らの分限を守り平和に共存できる社会や国家こそ、真に自由が保証された社会・国家と言えるのだ。

 

 故にこれからの新生日本、国家を再生に導く精神的・道徳的・法律的規範をここに置くと宣言した。

 

 

 

 

 25人衆のそうした扇動により多くのネット民の間でそう云う認識に到達したと同時に、ネット民を中心とした国民の目はこの国の行政機関にも向けられる。

 

 特にあまりにこの規範を踏みにじるような、目に余る行為と言動に終始する機関。

 それは特に予算の全てを掌握し、絶大な権力を揮う行政機関に。

 つまり財務省の上級官僚たちである。

 そして彼らがこの国に蔓延はびこる諸悪の根源であると、ネット25人衆の主張により国民は気づかされた。

 彼ら高級官僚たちは選挙など民意一切を通さず、一度の入省試験に通れば一生涯上級国民としての特権を得られる。

 彼らの多くが代々続く特権の家柄から東大など特権階級製造教育機関を経て高級官僚の地位に就く。

 当然彼らに憲法に規定された公僕としての意識は皆無で、国民を支配し家畜化する野心しかもたない頭の良い(ずる賢い)権力欲モンスターとなってこの日本に君臨している。

 

 彼らは国を支配し、平気で自国民とその財産をアメリカ等の外国に売る輩を権力の座から引きずり下ろすには、どうしたら良いか?

 

 ネックになるは日本国憲法。

 その日本国憲法には、議会制民主主義の統治が明記されている。

 

 だからネット直接民主制に変えるには、憲法改正しかない。

 そこでネット内にて新たな政党【ネット直接民主主義党】(通称ネット直民党)を結成した。

 

 結成?

 簡単そうにいうけど、簡単なものではないでしょ?

 

 そうです、政党を全国的に組織し、党員集め、党綱領の作成、党費集めの方法等、やることはたくさんあるのです。

 そこで活躍したのが矢張りネット。

 実は人材確保や資金集め、綱領などの審議方法は総てネットで完結できるのだ。

 

 例えば資金集めは今流行りのクラウドファンディング。

 一般的に従来の手取り早い資金集めの方法として、献金やパーティーなどに頼ると、必ず利権や不正に関与する原因を作ることから、それらの方法は厳禁とした。

 代替方法としてネットを通じ一口1、000円、一口5、000円、一口10、000万円の3タイプの寄付を設定。クラウドファンディングサイトを開設して広く寄付を募った。

 タイプ別に個人向けのA(1,000円)、グループ向けのB(5,000円)、企業向けのC(10,000円)の3タイプである。

 そう設定する事でクラウドファンディングで資金を提供してくれる個人も企業も、タイプ別一口、一口の積み重ねに過ぎず、特別な発言権や忖度の余地を排除した方策を徹底した。

 一口はあくまでも一口。誰が何口提供しようがそれは地位や立ち場に反映されない。大口提供者としての特典は無いのだ。

 しかし、それではいつかは資金提供が頭打ちになり、枯渇する。

 その問題を解決するために、新たな方策が考案された。

 その方策とは、クラウドファンディングに資金を提供してくれた個人・企業に対し、あらかじめ決められた政党名のロゴと合わせ、様々な階層の新進イラストレーターを中心として公募に参加し、採用された者たちのイラストとカップリングされたステッカーを返礼品として配られた。

 この施策は大当たりし、イラスト・政党名カップリングステッカーは全国至る所で見られるようになる。

 しかも返礼品を受け取る側も自由に選択したイラストのステッカーを貰えるので、個人も企業も自分達の趣味・自己主張・利益を優先した種類、タイプで選択できた。

 だからCタイプ10,000円の寄付をする企業にも企業イメージUPの宣伝効果を狙った専用図案・ロゴステッカーを任意のイラストレーターに製造依頼し寄付額に比例したPRが可能となる。

 個性と自己主張をしたい個人(Aタイプ)、グループ(Bタイプ)も同じ。

 またステッカーはリアルシール(現物)だけではなく、ネット上に掲載するPRにもデジタルステッカーとして使用する事もできた。

 そのおかげで、資金を提供する人も企業など団体も、資金提供参加が1口だけに留まらず、上限なく提供しステッカーを取得できるのだ。

 またイラスト制作者に資格などの制限もなく、公序良俗に反しない限り、誰でも制作し申請、登録できたので、個性的なもの、資金提供希望者から直接制作の依頼を受けて製造申請をする者などが現れ著作権料を得るなど、当初の想定外の方向で盛り上がりを見せた。

 誰でも協力者になれ、誰でも党勢拡大に参加できる。

 それは自分でも参加できる当事者感の自覚を産む。

 

 その結果【ネット直民党】は議会制民主主義から直接民主制に変更させるためだけを目的にした『目的政党』として規定され組織し、ネット内で支持を集めその結果、既存の政党の古い常識的発想と体質は急速に支持を失い、ネット直民党にシフトした。

 

 そして驚異的な短期で過半数どころか、全議席の3/2を超える議席を獲得、直ちに憲法を改正、ネット直接民主制を実現させる準備に入る。

 その結果、政権を掌握した【ネット直民党】は行政実務、立法原案等をネット民に問うため、国民投票を決行、及び憲法改正成立。現状の国会の全議席を廃し、各省の高級官僚の解雇を断行した。

 

 その過程と平行して様々な政治組織改革とその制度も確立させ、制度が根付くのを見届け残務整理のため【ネット直民党】実務部門として残留していた一部機能組織も解散する。

 その後はネット政党の意を受けたネット政治委員会に権限移行、運営を担当。

 閣僚や官僚の選任、人材へのサポートや助言を行う機関の創設と公平な政策判断を実行するためのルール作りと維持・持続させる仕組みの構築を実現させた。

 

 また、一般国民有権者に対し、持続的な基礎政治知識の啓蒙教育を実施。

 国政を衆愚政治に陥らせないための良識や具体的なルール知識のレクチャーに力を入れた。

 その方策例として、ネット政治講座の継続的な定期視聴の義務化(罰則無し)や試験を実施。

 知識等級別に政治参加への資格が付与された。

 そう云う経緯から、総理大臣を含む閣僚・官僚の任期を一年と決め、長期政権担当の腐敗を防止し、マンネリ化・硬直化を防ぐ仕組みを構築する。

 

 

 

 ここに一般国民を代表者とする民主政権・政府の誕生を宣言する!

と高らかに謳う。

 

 こうして素人集団の政府が生まれ、板倉のような教育係の強力なサポート体制が敷かれるようになった。

 

 

 竹藪平蔵に内閣総理大臣の話が舞い込んだのも、そうした歴史背景があったのだ。

 

 

 

 

 

     つづく

 


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第5話 国民の不満と直接民主制

2023-10-20 04:45:12 | 日記

  ここで平助が内閣総理大臣となる経緯と云うか、きっかけとなったネット政変に至るまでについて説明しよう。

 

 平助が立候補する6~7年ほど前、この国で大きな国民の意識が変わる出来事があった。

 

 あの当時、日本はかつての繁栄が見事に消え去り、斜陽の極みに居た。

 

 

 そして更に遡ること数十年前、アメリカの通貨ドルの危機を救うための国際協調会議『プラザ合意』を境に、日本経済は奈落の底に堕ちた。バブルの崩壊のきっかけはこれが原点である。

 

 

 バブル絶頂期の日本は金満意識に溺れ、増長しきっていた。

 金持ちたちは自らの驕りからお金の使い方が汚くなり、私利私欲に走り過ぎ,その結果我を忘れた餓鬼意識に支配される。

 傍から見ても狂気で無駄な散在に走り、現地人の迷惑も考えず競って投資や投機に溺れ、その煩悩に溺れた行為は全世界に深く浸透、その極みとして世界各地で人の神経を逆なでする愚挙に出た。

 例えばアメリカニューヨークにあるアメリカ人の誇りの象徴エンパイヤステートビルを買収、更に三菱地所がロックフェラーセンターまで買収、アメリカ人の反感を買い、激しい反日感情を植え付けた。

 それはどういう事か?

 敢えて日本とアメリカの立場を逆にして考えてみると良い。

 

 アメリカの大富豪が日本の金閣や日光東照宮、姫路城や松本城を買い漁ったと同じく、日本のプライドを金で奪ったと同様に思われたのだ。

 

その怒りが日本に対する反撃に繋がる原因となった。

 

 ただでさえ日本は戦後のGHQの政策が基本となるアメリカの占領政策が継続された状況に居たのに、更に日本たたき政策が顕在化したのだ。

 以降歴代の内閣はアメリカに逆らう事が出来ず、理不尽な要求に従い続け、日本の富が搾取された。

 更にその状況下で日本の財務省が財政面で権力基盤強化を進め、アメリカの要求に従いつつ、日本国民への支配を確立した。

 

 

 具体的に顕著な例を挙げると、日本は近年周辺海域で多くの海底資源が発見されている。

 言うまでもなく日本は資源小国として辛酸を舐め続けてきたのだから、目の色を変えて開発を進めるのが自然だが、国家が前面に立った行動は全く見せていない。

 これまでも何かあると国際原油市場で価格の乱高下が幾度もあったが自ら積極的に動かず、経産省に民間活力を当てにした消極的な音頭取り程度のポーズしかとらない。

 おかげで開発段階以前の調整・手続きから先には全く進んでいない。

 つまり財務省はアメリカの意向に忖度し、意図的に日本を資源小国のままに据え置こうと企図している構図が見えてくるのだ。

 もし、この国の為政者たちがまともな人種だったなら資源を発見し次第、国営の開発企業を発足させ、ただちに動いていただろう。

 今現在日本近海周辺地域で発見された希少金属や天然ガスの埋蔵量は、中国の希少金属の埋蔵量を上回り、サウジアラビアの石油埋蔵量に匹敵する。

 それらを民間企業に開発を担当させるより、国家が直営で全ての運営を管理した方が、そこから上がる利益は莫大なものとなり、国家としてエネルギー政策上、国際情勢に翻弄されず独立した立場を確立でき、国民に重税を課す必要は亡くなり、結果国全体の労働環境を過重労働に陥っていた状況から改善できるのだ。

 しかも年金政策も一変し、受給年齢も65歳から60歳→55歳まで引き下げる事が可能になり、受給額も現状の不安な金額水準を実質倍増させることも可能になる。

 (実例として最大産油国サウジアラビアでは、就業世代の全国民の75%が実質公務員であり、その就業時間は日本の9時間拘束の約3分の2程度である。)

 エネルギー産出国として国内消費分を賄い、輸出で利益を上げられたらそういう状況を実現できるにも拘らず、敢えてそうしない、そうさせない実質妨害政策を継続している黒幕が財務省なのだ。

 では財務省が実際どんな形で行政を遂行してきたのか?

 資源小国・アメリカ追従の立場を維持したまま、国力を減衰させ、その悪化した国家運営のツケを国民に転嫁するため段階的に増税を実行、国民が貧しくなっても生活保護等のセーフティネットはむしろ後退させ、対抗勢力だった物言う有力労働組合を徹底的に潰し、規制が厳しかった非正規労働者の対象職種条件緩和を推し進め、労働者の身分を保障した正規労働・生涯雇用制度の瓦解・不安定化を推進、国民の労働環境を悪化させ、労働賃金収入と高齢者の年金収入を減らす政策に終始した。

(実際、OECD加盟国で唯一日本だけが実質労働賃金を減らしているし、高齢者の年金も元々支給金額が低率なのに更にそこから毎年0.4%づつ削減させる事が制度化されている。しかもその低額水準の年金から更に税金や健康保険料を徴収する鬼のような政策を実行させている。これらは厚生労働省が直接の管轄省庁ではあるが、その裏には財源を握る財務省が牛耳っているのは明らかである。)

 

 

 

 国民は当然生活水準の悪化と政府の無策に不満を持つ。

 それでも財務省の高級官僚たちは国民をそんな状況に追い込みながら、自らを特権階級を自任し、わが世の春を謳歌し続ける。

 

  そして事件が起きた。

 

 身内の大半を財務省官僚が固めた、実質財務省傀儡内閣が政権を握っている間に、数々の不祥事が明るみに出た。

 

 選挙を通さず、一度の入省試験に通れば、一生官僚としての特権を得られる高級官僚たち。

 彼らも代々続く特権の家柄から東大など特権階級製造教育機関を経て高級官僚の地位に就く。

 当然彼らに公僕としての意識は皆無で、国民を支配し家畜化する野心しかもたない頭の良い(ずる賢い)モンスターとなってこの日本に君臨していると国民は思い始めた。

 

 それら特権意識に染まった階層からも、隣国の野望と犯罪に実質手を貸した事件が次々と発覚する。

 同時に政権党・野党に限らず、日本の国会議員たちは伝統的に親K国優遇政策を実行し続けてきたが、度重なる彼らの反日行動に対し、国民は不満と反発を持ち始めた。

 

 そこにK国統一宗教の目に余る日本人を対象にした犯罪行為が問題になるが、最終的に有耶無耶になり、罪の重さに対し寛大過ぎる措置で終息させる。

 調子に乗るK国は更に中東の石油産油国から自国消費分の石油を購入していながら、(日本をあてにして)代金を踏み倒す愚挙に出た。

 要するに国家が他国に対し、無銭飲食を公の立場で犯したと一緒なのだ。

 当然中東産油国は黙っていない。

 代金を払え!と叫び続け、国際社会も無視できなくなってきた。

 そこでK国は日本に再びスワップ提携を申し出た。

 しかし元々以前のスワップ協定を反日的動機から一方的に反古にしたのはK国であったのに。

 厚かましいにも程がある。

 K国と産油国の二国間取引など、日本には無関係。

 しかも日本にとってスワップは何の利益も無い。ただ負担を強いられるだけの取り決めなのだ。

 当然日本国民の反発は強く、日本政府に対し、日Kスワップ断固反対の声が渦巻いたが、政府はこれを無視、スワップ協定を締結した。

 そしてK国はここぞとばかりに、日Kスワップを根拠に一兆円の中東産油国への債務支払いを要求し、日本政府はこれを了承した。

 

 これに日本国民はブチ切れ、政府と財務省を公然と攻撃するようになった。

 

 また、時を同じくして、中国も侵略の野望を露わにし、日本に高圧的で理不尽な態度を強化しだした。

 

 日本政府は国防対策を理由に更に国民に対し増税を強めたが、おりしもロシア・ウクライナ戦争が原因で世界的な物価高が襲い、日本の国民も例外にはならず負担と困窮が限界点を超えた。

 

 そのタイミングで日本政府高官とK国・中国との闇の関係が次々と暴露され、日本国政府も無策の野党も信用が地に落ちた。

 特に日本側の招聘による中・K国費留学生たちが日本国内で反日プロパガンダを広め、産業・国家機密スパイ活動を公然と行っていた事実も次々に明るみに出る。

 

 これらが公表されるにつれ、国民の怒りは更に増幅した。

 

 

 一連の事件と不祥事が重なると、流石に国民は政府を追求するより直接財務省に照準を合わせ査察を要求する。

 それも会計検査院が介入するのではなく、独立した新組織による徹底した査察である。

 

 もちろん財務省は反発し、そんな査察を拒否した。憲法に規定されていない不法な査察である事を論拠として。

 しかし国民の怒りと不信はそれを許さない。

 結局見かねたアメリカの(裏の)とりなしで、査察は会計検査院の特別査察、但し、一般から諮問会議を招集し特別メンバーを加入させ査察を査察する仕組みを加える条件で受け入れさせた。

 

 

 その結果、驚くべき新たな不祥事が発覚する。

 何と不正の持ち込まれる余地のない筈の特別会計の中にまで、大きな穴を発見したのだ。

 

 意外かもしれないが、一般会計ではなく特別会計。

 実はガラス張りの一般会計より、特別会計の方が闇が深い。

 

 しかし、特別会計の闇を追求したり、質問した議員は過去にひとりしかいない。

 しかもその議員は直後不審死している。

 

 その他の議員たちは、触れる事すらしていないのだ。

 議会の会期中、与党もう野党も審議といえば、くだらない問題ばかりを取り上げ、さも重大事件のように大袈裟に騒ぎ立てるくせに、核心問題はまるで存在しないかのように放置している。

 

 つまり国会は問題から目を逸らす巨大な張子の虎。

 

 この国の民主主義は見た目だけのハリボテであった。

 しかも立派な体裁を整えるため、政党助成金など、数千億円の血税を投じて。

 

 衆議院、参議院何やってる!!

 財務省何やっている!!

 不正の温床!議会と財務省!!

 

 売国奴よ去れ!

 国賊をあぶりだせ!

 

 これが相言葉になりインターネットを中心に新たな世論が湧きあがった。

 

 

 

 

 

      つづく

 

 

 

  プラザ合意とは

 

 1985年9月に先進5か国蔵相・中央銀行総裁による、(表向き)ドルの通貨危機に対する協調介入ルール構築の合意。

(当時の合意メンバー 日本竹下登蔵相、アメリカ財務長官:ジェイムズ・ベイカー、イギリス蔵相:ナイジェル・ローソン、西ドイツ財務相:ゲルハルト・シュトルテンベルク、フランス経済財政相:ピエール・ベレゴヴォワ)

 世界の基軸通貨【ドル】の防衛を目的にした合意ではあるがその実、日本の対米貿易黒字の削減を狙った合意である。

 当時日米貿易摩擦が慢性化し、アメリカと日本の貿易不均衡問題が一向に改善されないまま迎えたドルの通貨危機に対処する必要がこの合意に繋がる。

 『プラザ合意』の名称は、会場となったアメリカ・ニューヨークのプラザホテルに由来する。

 

 

 

  • プラザ合意が日本の産業衰退の機転となった理由

 

 1965年以降、日米貿易収支が逆転、アメリカの対日貿易不均衡は慢性的となり、アメリカの一方的赤字状態が続いた。

 1972年の日米繊維交渉が暗礁に乗り上げた際、当時のニクソン政権は対敵通商法(対日輸入制限を定める法律)制定という脅しをかけ、対米輸出自主規制を受け入れる譲歩を引き出した。

 その後1977年に鉄鋼・カラーテレビ分野に於いても譲歩させた。

 アメリカ国内の「貿易と財政の双子の赤字」がアメリカ国民・政府の日本に対する不満を高め、ドルの通貨危機の根本的原因として対日貿易不均衡是正の圧力行動を起こし、日本の譲歩を促すに至った。

 更に1980年代、農産物(米・牛肉・オレンジ)及び日本車を標的にし、交渉の末1981年、日本政府と自動車業界は輸出自主規制を受け入れた。

 1985年のプラザ合意後、日本は金融引き締め経済政策を実施継続させた結果、インフレが低迷する。それに加え、公定歩合の引き下げ政策の長期化が予想され金利が低下、カネ余りから株式や不動産への投機が顕在化した。

 その結果プラザ合意の円高誘導により、相対的にドルの資産価値が下がったため「半額セール」とまでいわれた米国資産の買い漁りや海外旅行のブームが起きた。(アメリカニューヨーク・エンパイヤステートビル、ロックフェラーセンターの買収もこの流れが背景にある)

 これらの流れから分かる通り、日本に不利になるこの合意がなされた背景は、日本のGDPがアメリカを追い抜き世界一となることへのアメリカの危惧、以前からの日米貿易摩擦、その後開発されたアメリカ軍の新技術『インタ―ネット分野』での日本との競争への畏れがある。

 そして一連のアメリカ政府の思惑通り工作が進み、日本の産業の象徴であった民生用電子機器をはじめ、日本の多くの産業は1985年を境に急激に落ち込み、衰退の道を歩んでいくこととなったのだ。

 当時を振り返るとプラザ合意がきっかけとなり、日本経済と産業構造の失われた30年の長期経済低迷の起点となったと云える。

 つまり協調介入によって通貨レートを円高に導いた結果、日本国内の物価と賃金はマイナスへと落ち込み、貿易では農林水産物も、鉱工業製品も、日本人労働も、全ての日本産品は競争力を相対的に失い、それまでの経済・産業瓦解へ繋がった。


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】 第4話 首相専属教育係『板倉』

2023-10-15 03:28:47 | 日記

 平蔵は不安な気持ちを抱えながら、内閣府別館(別班ではない)と呼ばれる部署が入る霞が関第5合同庁舎入口に佇む。

 さすがにネット政変以前のような権威主義と特権の象徴を具現化した物々しさは影をひそめたが、入口玄関自動ドアの扉は心なしか重厚な動きで開くし、警備員の数はそれなりに多い気がする。

 

 受付は女性2名だが、両隣には屈強な若い警備が立哨している。

 

 受付の女性はどちらも奇麗だが、どっちに話しかけようか躊躇していると、右の受付係の女性がいち早く頬笑みかけてくれたので、その人に平助にとって出来る限りの笑顔を見せ、先日郵送された書類を示し行き先と要件を手短に話すと、担当部署に電話し確認してくれた。

 そしてエレベーターで、5階の内閣府内閣官房行政執行監督署へ進むよう案内される。

 

 5階に着きエレベーターの扉が開くと、そこにも受付があった。

 そこの受付係以外にも見知らぬ30代男性2名が立っている。

 それともうひとり、スーツ姿の切れ者官僚風の男性が。

 平蔵の姿を認めると歩み寄り名刺を差し出した。

「竹藪平助様ですね?

 私は首相専属教育係の板倉と申します。竹藪様の職務や心構え、必要な知識・情報のレクチャーする事になるかもしれませんので、以後お見知りおきください。」

 感じの良いトーンの話し方だが隙が無く、気が置けないとは云えないタイプの印象を持った。

 多分接するうちにお互いの距離を縮められるだろうと楽観する平助だが、それはどうだろう?自分が隙だらけの分、お互いを知るにつれ、離れていきそうにも思うし。

 とにかく自ら虎穴の飛び込んだのだから、もし奇跡的に自分が選出されたら悔いが残らぬよう一年間全力で取り組もう。そう思った。でもこの期に及んでまだ自分が総理大臣になれるなんて全く信じていないが。

 

 

 マジマジと名刺を眺め「『板倉翔平』さんですか・・・、とても良いお名前ですね。有る分野で世界を股にかけ活躍されそうに思います。」

「ありがとうございます。でも私にお世辞は結構です。私は裏方の仕事に徹し、次期総理大臣を全力でサポートするのが職務ですので。

 今後の私とあなたが担う事になるかもしれない仕事への取り組みに、この国の命運がかかっています。

 もしあなたが選出されたら、緊張感を持って真剣な仕事をしてください。」

「え?私は首相の仕事なんて、マニュアルさえ守っていれば、誰でもこなせると伺ってきたのですが?」

「確かにマニュアルはあります。そしてマニュアルさえ逸脱しなければ致命的なミスは避けられます。でも首相とはこの国の最高の頂きに立つリーダーです。

 そしてリーダーを仰ぐ人々は、それぞれの思いを抱えた一個人の集まりです。

 マニュアル通りの動きや言動だけでは、人に感動を与える事はできません。

 最後はリーダーがどれだけの魅力を発揮するかです。」

「(ええ?聞いていたのと話が違うし)私に人を束ねたり、動かす力も魅力もありませんよ。無理無理!!

 だいたい私は高卒だし、社会科以外ほぼ赤点だったし、ただの一般人で工員に過ぎないし。彼女いない歴=実年齢だし、当然女性にもてないし(彼女もどきのカエデはいるけど、彼女の数にははいらないし)お金無いし。

 他人にアピールできる要素は何もありませんよ。」

「そんなの見たら分かります。でも貴方の本当の魅力は隠れたままなのかもしれませんよ。こういう大一番の状況に立たされたら案外火事場の馬鹿力が出るものですしね。」

(自分は謙遜したつもりなのに「見たら分かります」って失敬な!)と思ったが、それには触れず、

「私なんかに火事場の馬鹿力が出せるものですかね?」と聞くと、

「たとえ話ですが、以前追手に追いつめられた男が、目の前の川を夢中で飛び越えたそうです。飛び越えられなかったら捕まり殺されるかもしれない程ひっ迫した状況で。

 後日その川幅を測ったら10mもあったそうです。

 オリンピック選手でも無理な距離を、幅跳びなどの経験もないズブの素人の一般男性が夢中になれば飛べたんです。

 彼に出来て、貴方に出来ない筈は無い!そうでしょ?」

「ひぇ~、その飛躍した論理には、無理があり過ぎでしょう。」

「まだあります。あの同時多発テロの時、自分の倍以上の体重のけが人を背負い1階まで駆け下りて救い、その後また災害階まで登って何人も救った人がいたり、自分より大きなクマと素手で戦い、撃退した男がいたり・・・それから・・・」

「もういいです。私はそこまで追い詰められなければいけませんか?そんなに厳しい仕事なんですか?」

「いいえ、そうではありません。職務の担当期間はたった1年です。

 逃げて隠れて過ごすのも一年、全力で体当たりして砕けるのも一年です。

 貴方がどちらを選ばれるかの話です。

 因みに私はアメフトやラクビーに凝っていて、全力タックルする人が大好きですが。」

「結局熱血路線ですか。私は文科系か帰宅部専門のナヨナヨ男でご期待に添えそうもないんですけど。」

「貴方の意志次第ですが、私の期待ではなく、国民の期待に添いたいかどうかです。

 切実な願いをもった人々や、明日の生活に展望や希望を持てない人。

 子供の明るい将来を切り開きたいか、高齢者の希望ある生活をおくらせたいか、外国の侵略から国民を守りたいか、多くの国々と親交を深めたいかなどです。

 貴方が何処まで国民の希望に応えたいか、貴方の意志に掛っているのですから。

 それが内閣総理大臣の仕事です。

 そして幾人もの総理大臣候補からあなたを選出するかどうかは、同じくネットで事前に選出した数百人にも及ぶ内閣官僚選出委員会メンバーの意思です。(この人たちもその場限りのメンバーです)

 彼らは年収・社会的地位・学歴・社会良識テストで筋金入りの立派な庶民と認定され、多くの一般人の願いを叶えたいと切に願う良識を持った人たちです。

 そう云う意味で正しい人を選ぶか、間違った人を選ぶか、最後は人選も人が行うのです。

 政治は人です。人が動かすのです。

 行政を執行する方も受ける方も人。人なんです。

 だからこそマニュアルだけでは応えられない職務なんです。簡単に済ますこともできるし、歯を食いしばって頑張らなければできない偉業もあるし。

 簡単に済ませたいなら、政変以前の腐敗から失脚した『増税クソメガネ』と揶揄されたロクデナシ政治屋さんと何ら変わりません。

 でも、志を持ち、強固な意志があれば、誰でも出来る仕事です。」

 

 まっすぐな目で板倉は断言した。

 

 平助はやっぱり板倉は苦手だと感じ、親密な仲になるのを心の中で断念する。

 

 その不安が残る気持ちと裏腹に、平助はその後総ての手続きを終え最後の審判に備えた。

 

 

 その後数日経って、結果が送られる。

 

 

 やっぱり平助がネット政変以降の第3代内閣総理大臣だってさ。

 

 その夜、平助のアパート『むつみ荘』から「ヒェ~!」という叫び声と、カエデの「アッハッハッ!」との笑い声が聞こえてきたって。

 

 

 メデタシ、メデタシ。

 

 

 

 

 

      つづく

 


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第3話 内閣府からの手紙

2023-10-09 05:09:42 | 日記

池崎社長に呼ばれた日から忘れるほど日数が経過したある日、平助の住むアパートの階段下の汚い壁にへばりつくように設置された錆だらけの二個口集合ポスト。その右側の受口からはみ出た分厚い封筒が見える。

 

 これは確かに自分のポストに入れられたものだ。

 「何だろう?」

 別に通販に商品を注文した覚えは無いし、田舎から送られてくる物は大抵宅配小荷物便を使うから、直接手渡しでポストは使わないし。

 ポストにねじ込むように無理やり入れられた封筒を引き出してみると、宛名の部分には確かに竹藪平助殿と書かれているし、差出人は大きく『内閣府』と印刷されている。

 

 「内閣府ゥ~?何じゃコリャ?」

 

 平助が思わずこんなリアクションをするのは当然だろう。

 普通の人に内閣府から郵便が送られて来るなど、普通は一生涯無い。

 

 でも平助はすぐに思い当たった。「そうだ、そう言えばだいぶ前に池崎社長が総理大臣ナンチャラって言ってたっけ。・・・で、これがその結果?ホゥ、随分大げさだな。」

 そう云いながら封筒を小脇に抱え階段を上る。

 

 粗末な部屋のドアを開け、真っ直ぐ正面の窓を全開、独身男の部屋特有の淀んだ空気を入れ替えた。

 部屋の真ん中に今時珍しいチャブ台を広げ、封筒を置く。

「カッターナイフはどこだっけ?」

 2~3分は探し、歯がさび付いたカッターを見つけ封を開けた。

「どれどれ・・・・。」

まるで他人事ひとごとのようにワクワクし、封筒の中身に興味を持った平助。

 そして一枚目のカガミの文章が目に入ると、他人事ひとごと気分が一瞬にして吹き飛び、極度の緊張が走る。

 「何?『おめでとうございます・・・』第一次選考通過告知?霞が関合同庁舎に来い?

 二次選考?この僕がマジに内閣総理大臣候補?ホンマかいな?」

 頭の中がウニ状態で呆けた顔の平助。

 そこに当然の如くノックもせずに部屋に入ってくるカエデ。全身脱力し放心した様子の平助を見て、

 「どうした平助?幽霊でも見たか?」

 無言で書類を差し出す平助。

 「・・・・内閣総理大臣二次選考?これって何?」

 「だからこの僕が総理大臣になるかも?って通知さ。」

 「何で平助が総理大臣?平助は平助でしょ?」

 「カエデに言ってなかったけど、この前うちの社長に言われたんだ。僕に総理大臣やらないか?ってさ。嘘みたいだろ?」

 「何でよりによって平助よ!だって平助はこの世の中の全人類の敵でしょ!一番不適切な人選じゃない。あんたの所の社長さんて、もしかしてバカ?」

「誰が全人類の敵じゃ!!一番不適切な人選じゃ!!そりゃ、僕よりマシな奴は腐るほどいるけど、僕だって天下の竹藪平助ぞ!その辺のニャンコより役に立つだろ?」

「あんたもバカ?

その辺のニャンコと競ってどうする!平助が総理大臣って、裏の田中さんちの夫婦喧嘩より笑えるわ。

 一体どうして平助にそんな大それた話が持ち上がったの?気でも狂ったのかしら?」

「カエデは超が付くほどの政治音痴だから知らないだけだよ。今は裁判員裁判同様、政治家も官僚も一年限りの一般公募なんだって。分かった?」(偉そうに言ってるが、当の平助もあまり詳しくはない。)

「分かる訳ないでしょ!だってこの平助よ。天地がひっくり返ったって有り得ないわ。」

「この平助って・・・・そうだね。もしかしてカエデに天地がひっくり返るところを見せてあげられるかもよ。

 僕も何だか見てみたくなったし。」

「無責任過ぎるわ。国民たちが可哀想。すぐ辞退しなさい。今すぐに。」

「まだ選出が決定されてもいないのに、自分から辞めますなんて言えるかよ。

まあ見てなって。良いようになるからさ。」

「その根拠のない自信のようなものは何処から来るのかしら?

そうね・・・。成り行きを眺めてみるのも面白いかもね。

どうせダメになるんだし、老後の笑い話のネタにもなるし。」

「え?老後も僕たち一緒なの?」

「何言ってんの!バッカじゃない?何で私と平助が一緒なのよ?」

顔を真っ赤にして狼狽うろたえるカエデ。

(カエデが言ったんでしょ。)そう思ったが、口には出せない平助であった。

かくして二次選考に臨む平助。

 

当日は貴重な有休を使って省庁雑居庁舎前まで電車で行った。

(何で有休よ!これは社長命令なんだから本来なら出張扱いでしょ?

池崎社長のケチ!!)これも口に出せない内気な平助。

 

 眼前にそびえ立つ合同庁舎ビルが伏魔殿に思える。

 

 波乱万丈な物語の幕開けだった。

 

 

 

 

 

 

      つづく