うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

カストラチュラ  鳩山郁子

2008年07月25日 | 読書感想
カストラチュラ
鳩山 郁子
青林工芸舎

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JUNEっぽいようなガロっぽいような漫画。
いつのに時代だかよくわからない近代中国げな国で寄宿舎げな場所に住む少年二人がなんか会話になっているんだかなっていないんだかわからないことを繰り広げながら肉がどうこうとか去勢歌手がどうこうとか纏足がどうこうとかやってたらいつの間にかか終わってる話。

意味不明。
時代設定が意味不明でストーリーの主軸が意味不明で主人公すら不明でとにかく作中でなにが起こっているのやらさっぱり意味がわからない。
神経質的な描きこみをなした絵はクオリティは高いのだが、その書き込みが漫画としてのコマ割と一致しておらず、イラスト・絵画と漫画はちがうのだということを理解していないのだという印象ばかりが残る。要するにネームが読みづらくてかなわん。
そのネームもやたら小難しい言葉を使ってはいるが、世界観の不明瞭さゆえか、難しい言葉を使えば雰囲気出るだろう的な若気の至り感が漂っている空虚なものを感じた。
漫画をサブカルとして捉える人が好みそうな作風で、「漫画だって凄いんだよ」と云いたい人が描き、云いたい人が読む漫画という印象だ。漫画はくだらぬ読み捨てでいいし、そのままで尊いのだと思うぼくとしては、若造が身にもつかぬ言葉のイメージに振り回されたようなサブカル的作品は読んでいて頭が痛い。

それでも一枚の絵として見たときには息を呑むほどグロテスクな美意識を感じさせる絵が何枚もあるし、作者の技量と趣味の悪さ(いい意味で)は疑う余地がない。
特に解剖されかかったまま生きている?少年のイメージは圧巻であり、剥かれた背の皮が天使の翼のごとく広がっている姿は作者の美意識を強く感じさせるいい絵だ。

中国の寄宿舎を描きたかったのか、纏足カストラートを描きたかったのか、革命後の混沌を描きたかったのか、全然わからない。
主人公が二人になってしまっているのもわからないし、それで話が支離滅裂に分裂してしまっているのもわからない。
これなら素直に短編連作型の作品にして、寄宿舎を舞台に1話ごとにテーマと主人公を変えていけばよかったのに、なんでこんなごっちゃりとした描き方をしてしまうのだろうか?
つうかもっと単純に、主人公二人がなにを考えているのかわからないし、なにがしたいのかわからないし、絵的ながんばりとは裏腹に魅力がまったく感じられなかったのが一番の問題だと思う。
やはりメインキャラの行動原理を明確にしておくのは大切なことだと。
あと、エロとやおいの書き手にはありがちなことだけど、脇役はうまく描き分けられるのに美形キャラは描き分けられないので、見ていてわりと混乱する。

絵描きではあるのかもしれんが、漫画描きじゃねえなあ、この人は。
原作付きの作品書いたほうがいいんじゃないの?それこそ皆川博子の作品を漫画化すりゃいいのに。
皆川博子はこの作品が大好きらしいが、あの人もわりと構成なんか知ったこっちゃないタイプだし、この作品は出来はしっちゃかめっちゃかだが、皆川先生の萌えポイントだけは執拗なまでについているのがわかるので、好きなのは当たり前だろうなあ。

読者に理解させようとしない作品はいかんなあ。
どうやっても理解できないんじゃなくて、作者が努力を怠ったせいで理解できるはずのものが理解できなくなってるってのは、やっぱり良くないよ。

あと、非常にどうでもいいけど、なんで「?」が行頭にくることがやたら多いのだろうか?編集者、ちゃんと仕事しろといいたくなった。

それはそれとして、この纏足のカストラートのシャーロット・リンさん。
パタリロですよね?わかります。



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2 コメント

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Unknown (usa)
2008-07-25 12:12:33
おっとお。
博子ファンの私は当然のように『カストラチュラ』も好きなのですが、うなさんは気に入らないだろうな~という予感は漠然としてました。
おっしゃる通り、言われてみたら確かに意味不明で独善的なマンガですしね。
なんか珍味みたいな…。
ちなみに、単行本『シューメイカー』で『カストラチュラ』以前以後の話が描かれているのですが、シャーロット・リンはさらにパタリロでしたw
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Unknown (うなぎ)
2008-07-26 01:24:14
意味のわからないものは意味がわからない。そう主張していきたいうなぎでした。
やはりどこからどう見てもパタリロですが、歌っているのはクックロビン音頭でしょうか?
いずれにせよ、シューメイカーのシューがシューズのシューじゃなくてシュークリームのシューであることを祈り続けます。
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