![]() | カールじいさんの空飛ぶ家 [DVD]ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメントこのアイテムの詳細を見る |
長年つれそった妻を亡くしたカールじいさんは、いろいろあって思いあまり、家に大量の風船をつけて子供のころにあこがれていた地を目指して冒険の旅に出るのであった……
設定がいかにも出オチっぽいな、と劇場公開時から思っていたが、実際に見てみると想像以上に出オチだった。
冒頭で幼なじみの少女と結婚し、共に老いていく過程を10分程度のダイジェストで見せるのだが、ここの部分はベタながらも、さすがピクサーと思える演出のうまさ。
そこから一人になったカールじいさんが、周囲との軋轢を重ねながらも思い出の家を守ろうとする姿は哀愁を誘い、その悲嘆からドリーム爆発の家が飛ぶシーンまでは、期待を裏切らぬさすがのクオリティ。
しかしここまででまだ20分足らずだが、こんな出オチのような設定でこれから一時間あまりをどうするんだろう? と思っていたら残りはずっと迷走してうやむやに終わった。
そもそも空を飛んで幻の秘境へむけて旅立ったと思ったら、五分後くらいにはその幻の地へ偶然に着陸しているという「おまえそれでいいのかよ」と云いたくなる展開からはじまり、その後は、空飛ぶ家をひきずって歩きつづけるという、全然空飛んでない展開がずっと続くのは「約束が違うじゃないか!」と憤慨したくなる勢い。
その後、秘境で偶然に幻の怪鳥を手なづけてしまい、その怪鳥を追い求めつづけるかつてじいさんが憧れた冒険家と殺し合いがはじまる展開はいったいこの物語がどこへ行きたいのかと終始疑問符でいっぱいだった。
この怪鳥、および勝手についてきた少年とうやむやなままに仲良くなったカールじいさんが、かれらのために思い出の家を手放すシーンがクライマックスだが、子供も怪鳥もうざいばかりであり、なぜどうしていつの間にカールじいさんが思い出の家を手放すほどの絆を築いていたのかまるでわからず、まったく感動ができなかった。
亡き妻との思い出に逃避した老人が、子供や新たな冒険と出会い、思い出を手放すという話の骨格自体はいかにも感動できそうなのだが、やはりその理由となる部分がまったく描写できていなかつたのが問題か。
というか、悪役である冒険家のマンツさん、あっちの方が可哀想で「なんでマンツさんの邪魔をするのん?」という気持ちでいっぱいだった。
怪鳥みたって云ったらホラ吹き呼ばわりされて「じゃあ実物つれてきてやんよ!つれてくるまでこんな国帰らねえよ!」と啖呵を切って出ていったまま、およそ半世紀ほども犬だけを友達に秘境でサバイバルしつづけるとか、意地はりすぎて可哀想。
カールじいさん、なんでそんなマンツさんから鳥をとりあげようとするのん?
そんパラノイアのマンツさんがなにも報われないままに死んで終わったので、非常にあとあじが悪かった。ちょっと人並みはずれて意地っ張りだっただけなのに……
ただメイキングを見たらマンツさんのラストにはスタッフもいろいろ迷走したみたいなので、こんなキャラを出したこと自体が間違いだったのではあるまいか?
出オチの設定を出オチに終わらせないのが従来のピクサー脚本だったが、本作は完全な出オチだったのがやはり惜しい。映像的にもウォーリーやレミーの方が好きだったし、ちょっと乱造しちゃつてるんじゃないかな、という感じ。
エンディングで、実は生きていて…みたいな感じにしてくれないかなと祈る様に観てましたが…
私はカールじいさんも男の子も鳥も犬たちも好きですが、さいごマンツさんが死ぬことにしてしまった制作スタッフさんたちは嫌いです!(>_<)
あとマンツは何人もの命を奪っている以上もはや救うには手遅れでしょう