うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

桜ノ雨  原案・halyosy  著・藤田 遼

2014年03月05日 | 読書感想

高校に入学し、なんとなくなりゆきで合唱部に入った鈴。
一緒に合唱部に入った鈴の幼なじみ蓮。
合唱部のムードメーカーである二年生の未来。
三年生の先輩、瑠華。
四人を通して描かれるとある高校の合唱部、一年間の青春模様。
ボーカロイドの同名曲をモチーフに、ボカロキャラたちによる学園生活を描いた青春小説。



よーし、いままで漠然と否定的な気持ちで斜に構えて見ていたボカロ小説を、そろそろちゃんと読んで堂々と馬鹿にするかな!
という気持ちで読んだものの、この作品は原案をもとにもともとラノベ作家だった人がライティングをしているため、特に文章が下手でもなく、さりとてべつに上手いというほどでもなく、ストーリーも特に盛り上がりがあるわけもなく、そもそも原案の曲が「卒業式っぽい曲をミクさんに歌わせた」というだけで、べつに特筆するような世界観のある曲でもなければ印象的なフレーズのある曲でもなく、要するに原案にする意味がこれっぽっちもないというか、ボカロで学園物書くから原案ということにしておこうレベルの、作中のガジェットの一つにしか過ぎないので、つまりこれボカロ小説っていうか、特に内容のない少女漫画的青春ものをボカロキャラということにしてボカロ曲のタイトルつけただけじゃんというものだった。
しかしこれを商業作品としてみると、本当にストーリーがまったくないのでつかみどころがなく、恋愛にしろ青春要素にしろ新しいところや鋭いところのない、なんとなく無難にこなしているだけの内容を、それでも商品としてなりたたせているのは「ボカロ小説です」というパッケージングなので、なるほど、ある意味、ボカロ小説の在り方を体現している気がしないでもない。

ストーリー的には「桜ノ雨」を作った先輩がドイツに留学してしまうので未来さんの乙女心が揺れたりする話だが、個人的にはの曲を作った人がドイツ留学して作曲家になりたいといったら「お前はべつにドイツにいかないで部屋にこもってボカロに歌わせてればいいだろ」といいたくなところが難。
あとはストーリーと関係はないが、ボカロのキャラが自分のイメージと逐一違っているのが意外だった。いや、ボーイッシュなリンとかカマトトぶった清純派のミクさんとかとりあえず無難なお姉さんやってるだけのルカとか、まあ普通の解釈ではあるんだが、なんか微妙に「ぼくのなかのミクさんたちと違う……」という気分になり、自分の中にボカロのイメージがある程度できていることに驚いたのだった。

一本の作品として勝負するオリジナル作品としては物足りなさすぎるが、二次創作と考えれば及第点だし、薄い本に比べればリーズナブルでもあれば全国流通もしているわけだし、ボカロ好きの若い子たちが「ボカロいいよねー」と思いながら読む分にはあっていいんじゃないかな?
という、馬鹿にするわけでなくハマるわけでもなく、一体なんのためにこの本を読んだのだろうか……という気分になった一冊だった。
つまりぼくがぼくにいいたいのは「くだらない動機で本を選ばずに面白そうだと思った本を読め」ということだ。

でもぼくは「ココロ」と「悪の娘 黄のクロアテュール」も手に入れてしまっているので読まねばいけない……いけないのだ!


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