Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

猫神様の観光利用

2021-11-23 23:23:08 | 地域から学ぶ

 

 「猫神」については何度か触れてきた。とりわけ飯島町豊岡にある清水坂の猫神は、今回で3回目だろうか。ある原稿の題材にと思い、あらためて写真を撮りに行った。林の中にあって、それでいてやや北向きなため、朝方の早い時間でもなかなかうまい具合に写真は撮れない。ということでフラッシュを利用して撮るわけだが、もちろん自然光のようにはいかない。線彫りされた猫像を浮き立たせるには、陰影を意図的に出さざるを得ない。「清水坂のお不動様 後編」に利用した写真は、カメラからコードを繋げて光を当てたため、いまひとつだったため、今回は二つのフラッシュを利用して、タイマーで撮影した。昔に購入したものだが、いわゆる本体のフラッシュが光ると同時に、別のフラッシュがその光に反応して同時発光するという簡単な付属品。ただし、自動制御しないため、何度となくシャッター切って調整してみたが、やはり自然光のようなうまい具合の写真にはならなかった。勉強不足である。

 さて、あらためてこの「猫神」について周囲で聞き取りをしてみようと思ったが、さすがに詳細を知る人はいない。そんななか、最近「猫神」が話題になっているという。自治会の回覧にこの「猫神」のことが記載されていたと聞き、自治会長さんのところにうかがった。回覧されたものを見せていただいたら、次のようなことが書かれていた。

長野県の伊那谷だけが猫神様が多く、 養蚕の盛んな所には猫神様がいる 養蚕の神様が猫の神様らしい 全国で3千万人いる猫好きな方を巡礼の旅として松川町の観光タクシー会社が中心となって各地を猫神様を巡るツアーを企画した様です

 実は松川町のタクシー会社が猫神ツアーを企画しているという話は、信濃毎日新聞に記事が掲載されていて知っていた。その記事は「「猫神様」ってどんな神様? マルモタクシーが伊那谷でのツアー計画」というもの。11月15日の朝刊に掲載された。そのタクシー会社の企画にかかわった方が、地区内にあった工場を譲り受けて利用するといい、お不動様が祀られている空間の草刈もしてくれるというのだ。ようは地域住民に草刈をしているのはそういう関係の人たちだということを告知するために回覧したという。

 猫神が伊那谷だけに多いというわけではない。とりわけ修那羅峠の安宮神社や、千曲市郡の霊諍山にユニークな猫神があることはよく知られている。さらにこの月末に刊行される『長野県民俗の会会報』には、下平武氏が「蚕神さまとは誰か-伊那谷を中心にした長野県の養蚕信仰-」が掲載されている。そこでは猫神様も扱われていて、群馬県の猫神様の流布について詳しく触れられている。新田義貞の子孫である新田岩松家によって「新田猫絵」というものがお札として流行したという。県内でも新田岩松徳純によって資金稼ぎのため善光寺詣でで猫絵を描いて稼いだという。猫絵に呪術的効果を得ようとした江戸時代の様子をうかがい知ることができる。さらに「唐猫」についても触れており、県内で猫神が流布した一端を紹介している。

 自治会長さんによると、清水坂の猫神もツアーの一部で、すでに国外の猫好きが訪れたとも。猫ブームもあるから、この後猫神はさらにクローズアップされるのかもしれない。


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