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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

描かれた図から見えるもの㉝

2024-06-03 23:25:35 | 地域から学ぶ

描かれた図から見えるもの㉜より

 これまでさまざまな図を示して配置上の方角を捉えながら説いてきた。そろそろトータルに考察する必要があると思うのだが、過去と現在という捉えたかはあまりしてこなかった。今後少しの間、過去の図と現在の図を比べながら、その地域の意識の変化のような部分に焦点を当てていこうと思う。

 1回目は宮田村の観光パンフレットを例に考えてみたい。ここに三つのパンフレットを用意した。古いものから示していこう。

 

 

 「雪形の現れている山々」でも触れたが、「さわやか信州」のキャッチフレーズは昭和時代末から平成の初頭にかけてのものと思うから、もう30年ほど前のパンフレットと推定する。繰り返すがこの手のもの、発行年が印刷されていないのが大きな欠点。したがって正確に「いつ」印刷された物かはわからない。A5版変形の22頁という冊子風のパンフレットは、写真を主体にしたもので、最後に地図を示している。実寸図ではなくイラストであるが、配置上少し傾けている(南側の村境にある大田切川を、左下から斜めに図上に示している)が中央アルプスを上部に配置しており、天竜川や飯田線、あるいは中央自動車道は左右に配置されている。図には北を示すいわゆる方位表示はなく、目標は中央アルプスといった印象を受ける。このパンフレットを発行しているのは、宮田村と宮田村観光協会である。

 


 二つ目のパンフレットはA4版折り込みのもので、平成10年代のものと推定する。企業と商店を位置図に番号を付して示しており、その地図は略図であるが、やはり上を中央アルプス側にしているが、山までは記載せず、山麓までにとどまっている。今回は方位を地図内に示しており、真右ではなく、ほんのわずか上に傾斜している。いずれにせよ、上に山を配置していることは、前例と同じである。前例同様に宮田村観光協会の発行である。

 


 三つ目の地図は現在のパンフレットからである。A4版10ページ立てのもので、裏面に地図が掲載されている。これまでと変わらず、中央アルプスを図上に配置しており、中央自動車道、広域農道、飯田線、国道153号といった交通路線を左右に平行に配置した略図である。実際の図とは異なるが、イメージとして村人が捉えている空間配置と思われる。こうした略図をパンフレットに採用する例が少なくなってきている中で、注目すべき事例と言える。1例目と同様に、この図も方位は表示していない。そして、これもまた宮田村と宮田村観光協会の発行したもの。

 それぞれの時代のパンフレットの表紙と案内図のみここでは取り上げて見た。どの時代のパンフレットも、中央アルプスを図上に配置した一貫した空間イメージが踏襲されている。宮田村だけで過去から現在までのパンフレットを見てくると、何の変哲もなく捉えられるが、一貫して山を図上に配置しているということが特筆できることなのである。それは今後示すほかの自治体の観光パンフレットを見ていただくとよく理解できるはず。

続く


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