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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

大晦日に神社をうかがう

2022-12-31 23:48:58 | 民俗学

梅戸神社茅の輪

 夏越の祓に「茅の輪くぐり」をするところは多い、そういう印象があったが、実は近在で茅の輪くぐりをする神社は、そう多くはない、と思う。中崎隆生氏は『伊那路』第62巻5号(平成30年 上伊那郷土研究会)へ「茅の輪くぐり-上伊那の事例から-」と題し上伊那で実施されている茅の輪の事例を報告している。それによると北から松島神社(箕輪町中箕輪)、坂下神社(伊那市坂下)、梅戸神社(飯島町飯島)の三社である。これ以外に実施例がないのかどうかは定かではないが、そもそも前者2例の始まりはそう古いものではないと報告されていて、茅の輪くぐりが比較的新しい行事であるというような報告がされている。

 わたしの印象では古くから(とはいえ明治以降だろうが)行われていたというものだったから、いわゆる浦安の舞と同じように多くの神社で行われているという印象を抱いていた。ところが実際は近在ではそれほど「どこでもやっている」というほどではないのである。半年の穢れを落とすという意味から、年越しの祓でも行われるわけであるが、いわゆる「大祓」にあたる。必ずしも茅の輪を伴わず、「大祓」の儀式を実施されているところは多くあるよう。ということで、ここで報告された三社でも梅戸神社だけは両方行われる。とはいえ中崎氏の報告では7月の祇園の際に10年ほど前から始まったとされており、そう古くから、という書き方ではない。果たして実態はどうなのか…。

 大晦日の様子をうかがいに伊那まで足を延ばしてみた。当初は年末にあたり松飾りの実態を、と思っていたが、梅戸神社に出されていた茅の輪の様子を見て、神社中心に年越しの様子をうかがった。伊那までの間で立ち寄ってみた神社は次の各社である。

伊那市坂下神社、荒井神社、宮花八幡神社、諏訪形諏訪神社
宮田村姫宮神社、北割元宮神社
駒ヶ根市五十鈴神社、大御食神社、中沢香花社
飯島町梅戸神社、七窪神社、芝宮神社、本郷神社
松川町大高日神社、諏訪形神社

以上15社である。茅の輪が見られたのは中崎氏の報告通り、梅戸神社のみであった。報告によれば坂下神社は夏越の祓のみということで、実際のところ今日も茅の輪は見られなかった。梅戸神社の場合、年越の祓の意図で作られるが、そのまま新年まで置かれ、初詣でこれをくぐってもらうようにしている。むしろ氏子にとってみれば初詣、あるいはこのあたりでいう「二年詣り」用とも捉えられる。もちろん世間で言われる大祓が主旨であることは言うまでもないが。

 

梅戸神社で並べられていたダルマ

 さて、梅戸神社では初詣用にダルマがすでに並べられていた。同じような初詣の方たちに縁起物を売る場面は各所で見受けられたが、明確にダルマが売られている、という姿は梅戸神社のみであった。五十鈴神社に用意されていたお焚き上げ用の納め所にダルマがすでにたくさん納められていて、ダルマ背面に「五十鈴神社」の貼り紙がされていて、おそらくここでもダルマが売られるであろうという印象はあった。どれほどの神社でダルマが売られるものなのか、調べてみる価値はあるのかもしれない。

 

飯島町七久保七窪神社

 梅戸神社では鳥居の前に幟があげられていた。いわゆる祭典同様の幟である。この日訪れた神社で幟があげられていたのは、駒ヶ根市の五十鈴神社と、飯島町の梅戸神社、七窪神社、芝宮神社の3社のみだった。伊南地域の神社では幟をあげる傾向があることがわかった。もちろんわたしが訪れた後にあげた神社があるかもしれないが…。七窪神社の鳥居の下にオヤスがいくつも並べられていたのは印象深い。

 最後にもうひとつ、松飾りのことである。いよいよ量販店などで売られている正月飾りが占める割合は、8割くらいに達しているだろうか。そう遠くないうちに、松飾りそのものも絶滅危惧状態に陥るのだろう。あくまでも印象レベルではあるが…。


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