①では昭和48年12月に発行された『中央自動車道伊那工事の概要』から駒ヶ根工区について触れたが、伊那工区(大田切川から小黒川)については次のように書かれている。
この工区は、工区両端に客土区間があり、その中間は切盛バランスする。即ち、始点より寺沢高架までが約300,000m3の客土及び北の沢川橋より終点までが約290,000m3の客土となり、その他は道路堀削でバランスする。この道路堀削の土質はローム、土砂、軟岩と多種、多様に分布し、それら相互の関係は複雑である。
路線のほとんどが山麓部を通過し26河川と交差する。この交差構造物の内訳は6河川(太田切川、寺沢川、藤沢川、犬田切川、北の沢川、小黒川)が橋梁であり、その他はカルバート・ボックスで交差する。橋梁基礎としては地形、地質が複雑なため、直接基礎、くい基礎、ケーソン基礎と多種な基礎を採用している。
上部路床材は本線と交差する一級河川犬田切川上流の白沢砂防ダムの、堆積砂礫を使用すべく計画している。
というものである。駒ヶ根から北上すると宮田村からは山麓を走る中央道。小黒川手前の伊那市山本あたりまでは切盛が交互に発する険しい区間であることは、走っていて容易にわかる。カーブがきついのもとりわけこの区間である。もちろん北上と言うことは、上り坂ということになるが、小刻みに上ったり下ったりを繰り返すのもこの区間で、山麓に配置したことがその背景にある。このあたりは、山麓から天竜川までの距離が短い区間で、山麓から天竜川までの地形勾配が強いエリアといえる。小黒川を渡るとその景色は一気に変わり、再び盛り土区間へと変化していく。一転、山麓と天竜川までの距離が、伊那谷でも最も広いエリアへ入っていく。
引き続き箕輪工区についても見ていこう。この工区は前述したような小黒川以北となる。ここから伊北インター南側国道153号交差までをいう。
管内では当工区のロームが最も多く、箕輪工区全土量1,500,000m3のうち約7割の1,000,000m3を占めている。その特性はつぎのとおりである。
イ 統一分類による土質分類MH又はVH(火山灰質粘性土)
ロ #200フルイ通過率70~90%
ハ 自然含水比70%~100%
ニ PI=30~70%
従ってロームは路体用として利用し、路床土は道路堀削の良質部分を全線に運搬する予定。
上記地形、地質に関連して、この地区は降雨等が地中に浸透してしまい排水路の要らぬ地形のため既設の排水工がなく路面排水の流沫がない。従って伊那インターチェンジ周辺の開発にからみ長野県、伊那市の各企業間の共同利用可能な排水路を計画している他、農林省の補助事業(伊那西部開発)で計画する用水路に流下させる計画等、排水計画に種々苦慮している。その他、西天竜用水、西部開発等農業団体との関連工事が多いのもこの区間の特徴である。
土質の専門的数値が示されているが、いずれにしても駒ヶ根工区同様に、意外に“土量”に対して考慮している様子がうかがえる。当然かもしれないが、意外にも映る。また、路面排水の流末がないことに触れている。小沢川以北の扇状地は、西天竜に関して過去に触れてきているように、浸透水が多く、横断する河川も小沢川以南と異なり少ない。畑地帯を突っ切っていく中央道の排水をどうするか、悩ませたことだろう。駒ヶ根工区のような水路橋は少ないものの、大規模用水である西天竜の水路橋が車道上を横切るエリアである。
続く