そもそもの設立概念もおかしかった。既存銀行は基本的に貸出で収益を得ているわけであって、テンポラリーにポジションがタイトなときもあればルーズなときもある。それをタイトな状態が恒常的なものと判断して、貸し渋り対策をコンセプトに設立したこと自体が責任を問われて然るべき。財政のポジションがいくらよくてもマチ金なみの貸出リスクをとるつもりはなかったであろう。
その次に、自動車会社出身者をトップにすえつけたのも無理がある。貸出を伸ばせとミッションを授けられて、本人はそれに忠実に従っただけ。自動車会社出身なんだから、クルマを売るのと同じ感覚になるのはしかたがない。ダンピングをして、借りてくれるとあれば、あとのことも考えずに決裁してしまう。
住宅ローンもそうであるが、事業資金もクレジットというのは完済されてはじめてその評価が下される。耐久消費財やその他の金融商品と同じように、売れれば完結というものではない。
とはいえ、最初からムリがある仕事に、畑違いの経営を任され、今になって経営責任を問われるとは、引き受けた当初は、本人も想像できなかったであろう。
傷が拡大しないうちに手を打ったほうがいい。預金は譲渡して、貸出債権は証券化して売却してはいかがか。優先劣後構造で内部信用強化してもよいが、都がクレジットラインを付与してもよい。都民は嫌がるかもしれないが、実態は銀行を続けている今の状況と同じだ。