とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

リン酸固定問題の打開

2018年11月18日 | 日記
植物の生育に必要な成分の内、特に重要とされる3要素。窒素、リン酸、カリウム。それぞれの役割は一般に次のように説明されます。
窒素:葉を育てる
リン酸:実を育てる
カリウム:根を育てる

この内、窒素については豆科の根粒菌に見られるように、植物と微生物の共生によって安定的に確保できることが分かっています。また、カリウムについては、草木灰から得られる炭酸カリウムが英語でpotashと呼ばれ、カリウムの英名potassiumの語源になっている通り、古くから、枯れた草木から取り出して利用されてきました。先日の、ブタクサ枯れ枝のph測定からも枯草が多くのアルカリ成分を含むことが確認できました。しかし、残る「リン酸」については、効率的な利用技術がいまだ確立されておらず、一般農地に投入されるリン酸肥料の内、実に80%近くが作物に利用されないまま、無駄に土壌に固定されてしまっている状況だそうです。

ここで、リン酸について国際関係から見てみますと、現在、日本は農業用肥料としてのリン酸を100%輸入に頼っています。リン酸肥料の製造原料であるリン鉱石が日本国内で全く算出されないためです。世界人口増加に伴う農業生産の拡大によって、年々肥料需要が増大していますが、安価に採掘が可能な世界の主要鉱山の埋蔵量には限界が見え始めており、アメリカ、中国などの産出国が戦略物資として輸出の禁止や、高い関税を課すなどの動きを見せています。日本は肥料に加え、食料自体も大半を輸入に頼っていますので、万が一、世界情勢が不安定化した場合、極めて危うい状況に追い込まれることは明白です。そのような事態を回避するため、国としては、資源産出国や食料生産国との友好関係を維持し、輸入を安定させることが重要な課題になると思われますが、一農業者といたしましては、そこに望みを託すよりも「農地で80%のリン酸が無効化されている」という問題に目を向けるべきであると考えます。

「リン酸の無効化」を化学的に捉えますと、アルミニウム(および鉄などの金属イオン)との結合によるリン酸の固定として説明が可能です。健全な土壌において、アルミニウムはケイ酸に包まれて粘土を形成していますが、砂質化(酸性化)した土壌では、ケイ酸が溶脱してアルミニウムがむき出しになり、そこにリン酸が強く結合して、作物が吸収できない状態(不可吸態)になってしまいます。ゆえに、正攻法としては、溶脱したケイ酸を復元してアルミニウムを包み直し、固定されたリン酸を自由にして作物が吸収できるようにする事(可吸態化)を目指せば良いことになります。

<現在模索している「粘土の復元と活用」によって、肥料を施さずとも育つホウレンソウ>
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古代に思いを馳せる

2018年11月17日 | 日記
一昨日、いつものように立鎌で土を耕していると、黒光りする3㎝ほどの石が出てきました。最初、ガラスの欠片かと思ったのですが、手に取ってよく見てみると、なんと黒曜石でした。


先日読んだ「日本の土」によれば、黒ボク土には炭の微粒子が含まれていて、縄文期に行われた野焼きが黒ボク土の形成に深く関わっていると考えられるそうです。


畑のすぐ上に高速道路が走っているのですが、建設前の発掘調査によって、標高700m~800mに位置する浅間山麓湧水帯周辺に縄文集落が発見されています。ひょっとして、その頃に使われた打製石器の破片では?などと一瞬考えてしまいました。鉄器がまだなかった時代、4メートル近くまで伸びるススキ原を開墾するには、火を使う以外に術はなかったのでしょう。鋼の農具を自由に使える有難さをしみじみと感じました。
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タマネギ越冬の条件

2018年11月16日 | 日記
昨日朝はマイナス3℃、本日はマイナス2℃。二日連続で氷点下の強い霜が降りました。
砥石を入れてあるブリキ缶の水に薄氷が張っていました。いよいよ厳しい冬の始まりです。


新たに整備している畝の午前9時半時点の様子。湿り過ぎの黒ボク土が、畝を立てたことで徐々に乾いてきています。写真右手は作りかけの畝で、水分が多く真っ黒、中央は昨日午後に立ったばかりの畝で、まだ半乾きの状態です。


湿っている部分をよく見ると、霜を通り越して凍り付いていました。土壌水分が多過ぎることが一目瞭然です。気温がマイナスになった途端に凍り付くような土では、野菜の越冬は望めません。黒ボク土で冬場ほとんど草が育たない理由がよく分かりました。


同時刻のタマネギ畝の様子。霜に当たって葉が垂れて来ていますが、まだ青々としていて、枯れる様子はありません。


畝表面がしっかりと乾いています。土が空気を含むことによって、冷気を通しにくい断熱構造になっていることが窺われます。このところの暖かさで冬前に育ちすぎな感があり、トウ立ちがやや心配されますが、この様子ならとりあえず越冬は問題無さそうです。厳冬期のマイナス15℃を無事乗り切ってくれることを願います。
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粘土と砂のバランス

2018年11月15日 | 日記
このところ、粘土の調査に集中して取り組んでいましたが、野菜を育てるためにはねっとりした粘土だけがあればいいわけではありません。踏み固められた通路の土は、高い割合でスメクタイトを含む「ひび割れ粘土質」と思われますが、そんな場所に生える草と言えば、例えば

<スズメノカタビラ>


<オオバコ>


踏まれると死に絶える草が多い中、踏まれても踏まれてもめげずに増える逞しい生命力。こう言った草はごくごく浅い位置にしか根を伸ばさず、地べたに這いつくばるように生きています。

植物の根は土中の間隙に含まれる空気から酸素を吸って生きているそうです。粘土質土壌は、粒子同士が団結して硬盤を形成しやすいため、「根の張りやすさ」という観点からは問題のある土壌です。

〇粘土質土壌:養分、水分の保持力は高いが、根が伸ばしにくい
〇砂質土壌:根は伸ばしやすいが、養分、水分の保持力が乏しい

野菜栽培においては、どちらの土質に偏ってしまってもダメで、粘土質と砂質の丁度良いバランスが求められます。どういった割合にバランスさせるかは、野菜の根の深さによって異なり

〇根が浅いもの(タマネギ、ホウレン草、ウリ科など):粘土質が多め
〇根の深さが中程度のもの(ナス科など):中庸
〇根の深いもの(トウモロコシ、大根など):砂質が多め

と言った具合に分類できそうです。実際問題としては、根の深さは土を掘ってみないことには分からないので、単純に根の深さを背丈に比例するものとみなし、背丈を基準に考えても支障はないと思われます。
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カブ畝

2018年11月14日 | 日記
8月下旬に作付けたカブが収穫期です。今年も天王寺カブと大野紅カブの2種類を作付けました。
大根と同様に、カブの畝には畝間の肥沃な粘土をしっかり混ぜ込めていないため、養分不足により外葉の色が褪せ気味なのが残念な所です。


とは言え、カブの太り具合はまずまずの出来です。カブは耐寒性が強いので、12月に入ってもまだまだ太ります。
<天王寺カブ>


<大野紅カブ>


8月に入ってから播種する秋野菜については、基本的に一切除草をしません。特にアブラナ科は生育が早いので、他に先んじて根張りスペースを占有してしまい、雑草が付け入る隙がありません。地力が十分な所では、野菜の下草としてハコベなどの冬草が穏やかに畝を覆います。


ところが、地力が足りていない、つまり、粘土質が少なくパサパサの砂質ばかりの場所では、養分不足で野菜が伸び悩んでいる内に、アレチノギクなどの雑草(春、秋の草)が野菜を上回るスピードで伸びてしまいます。こうなるとついつい除草したくなりますが、雑草を除き、更に野菜を収穫してしまうと、丸裸の状態で畝を冬越しさせることになり、寒風に晒されてますます砂質化が進みます。負のスパイラルに陥らないためには、十分な地力が備わるまで、無理して野菜を育てようとしないことが大事であると感じています。
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