とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

枯草の分解者 糸状菌

2019年02月10日 | 日記
昨年5月31日に野草地の地際で見つけた菌類のコロニー。例年、梅雨が近付き温度と湿度が上昇してくると、前年の枯草に取り付いて活動を始めます。白い綿のように広がるのはカビの仲間であり、糸状菌に分類されます。

カビ類は、枯草内部に菌糸を食い込ませて酵素を放出し、糖質、タンパク質、脂質を加水分解して、低分子(アミノ酸、グルコース、マルトース、グリセリン、脂肪酸等)にした後、吸収して栄養とします。


米や果実の糖質を目当てに繁殖する麹菌もカビの仲間であり、菌糸は白色ですが、胞子を飛ばす時期になると緑色に変わります。放出された胞子は空気中を漂い、別の場所で餌を見付けると再び増殖を始めます。ただし、カビ類は、セルロースやリグニンなどの繊維質を分解する酵素を持たないため、果肉のみを食べ、外皮などの硬い部分には手が出せません。
<カビに侵されたカボチャの切り身>


カビ類による分解が終わった枯草は、中身が無くなって硬い外皮だけになり、地際へ密着するように積層します。外皮を構成するセルロースやリグニンなどの繊維質は、続いて、シロアリなどの小動物に噛み砕かれて腸内細菌に分解されるか、あるいは、キノコ類(木材腐朽菌、これも糸状菌の一種)に分解されます。多段階の分解を経て、最終的に残った難分解性の有機物質が「腐植」です。腐植は、ミミズや甲虫類の幼虫によって土中に混ぜ込まれ、植物根や根圏微生物の働きを受けて「団粒土」に変化します。
<野草地の土壌構造>


<セルロースやリグニンを消化して育つ秋のキノコ>
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2 コメント

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Unknown (おやま)
2021-01-31 01:10:07
はじめまして。
開墾途中の山間雑草地が同じような状態です。草や落ち葉の地表にびっしり白い綿みたいなのがついています。白絹病かと思って汗っていたのですが、糸状菌のコロニーなのですね!

白絹病と糸状菌の見分け方ってあるのでしょうか?
また、開墾して雑穀や野菜を育てたいのですが
この糸状菌のコロニーはどうしたらいいでしょうか?
土の中にはミミズが沢山います。
もしよろしければ教えて頂けたら嬉しいです。
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Unknown (園主)
2021-03-10 12:59:00
おやま様

コメントを頂いたことに気が付かずご返信遅くなりました。申し訳ございません。

「白絹病」の病原菌も糸状菌の一種と思われます。本来、糸状菌が付くのは植物の遺骸ですので、生きた植物が糸状菌に侵されている場合に、第一の原因として考えられますのは「過湿による根腐れ」です。

山間地は、平地に比べると雨量が多いので、高湿度・高地下水位の土壌環境となっています。樹木にとっては好条件ですが、平地の植物である野菜には水が多過ぎて不向きな条件です。高湿度を解消するには「風通し」を良くしてやります。また、高地下水位を解消する方法としては「畝立て」が有効です。

ミミズは土壌水分が多いほど繁殖しますので、畑におきましては、畝にはおらず、水が集まる畝間にだけミミズがいるくらいが丁度良いかと思います。
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