とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

リン酸の循環を考える

2018年11月20日 | 日記
最高気温が10℃に満たない日が出始め、防寒していても外作業がきつい時期に差し掛かってきました。土が凍る前にできるだけ立てようと、暖かい陽射しがあるタイミングを活かして新規畝の整備を進めています。

今日は久方ぶりに顔馴染みが畑に現れました。
<セキレイ>


セキレイは肉食性らしく、ちょくちょく畑に来ては虫を捕まえて食べます。地際に生息する柔らかい幼虫の類がお好みで、畝を耕していると近くによって来て、土から掘り出されたばかりのイモムシをつついています。スズメ同様に人里を住処にする野鳥で、大きな物音を立てたりしない限りは、人間を全く恐れません。群れを作らず単独行動をしており、大した度胸だなと、いつも感心します。

セキレイの姿を眺めながら、野生環境におけるリン酸の循環について考えてみました。

リン酸塩含有岩石→粘土(風化と再結晶)→植物(吸収、有機物合成)→虫(食害)→鳥(捕食)→菌(枯草・糞・死骸の分解:発酵)→細菌(更なる分解:腐植化)→粘土(無機化と再結晶)

リン酸は、生命活動の基幹を成し、遺伝子の材料となる核酸、エネルギー代謝の担い手ATP、細胞膜のリン脂質など、生物細胞の主要な構成物質となっています。窒素、カリウムと並び、3大栄養素として重視されるゆえんです。

一般農法では、リン酸供給源として家畜糞を発酵させたものがよく使われますが、野生環境においても、枯草や動物の糞・死骸の発酵物、腐植物などが、同等の効果を発揮していると考えられます。植物は、粘土中の無機態リン酸を独力で吸収するだけでなく、菌や細菌との共生によって発酵物や腐植物から有機態リン酸を吸収できることが、近年の研究で明らかになってきています。

さて、ここで考えなければならないのは、人為が加わった場合にリン酸循環がどう変化するかです。野生環境では、動物による持ち出しがわずかにある程度で、ほとんどがその場の循環として完結していると考えられますが、農地においては、収穫による作物(リン酸集積体)の持ち出しが無視できない影響力を持ちます。例えば、一般農地のリン酸循環を次のようにイメージしてみます。

山岳→リン鉱石(採掘)→リン酸肥料(精製と化学合成)→畑土壌(施肥)→作物(吸収、有機物合成)→人間(収穫、摂取)→下水処理場(し尿処理)→埋立地(汚泥処分)→河川(処理場からの排水、埋立地からの漏水)→海底(養分堆積)→岩石(造岩作用)→山岳(噴火や隆起)

人間活動の拡大によって、地球環境問題としてリン酸循環を考えねばならない時代になったと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする