とやざき農園日誌

浅間山麓(長野県小諸市)で自然農法による農業を行っています
肥料や農薬を施さず自然の養分循環の中で野菜を育てています

黒ボク土の改良

2018年11月24日 | 日記
タマネギ作付地横の未開拓の黒ボク土エリアに畝が立ち並びました。
夏場、大型の野草が林立していたため、黒ボク土に水が貯め込まれて、周辺一帯がかなり湿気っぽくなっていました。ここの南側(地下水の流れから見て下流側)で栽培した大豆が樹ボケに陥ったのも、このエリアからしみ出した水が影響したと考えられます。現在、西側でタマネギが育っていますが、タマネギには過湿が大敵なので(冬期凍み上がりやすい)、大豆の二の舞にならぬよう、このエリアの畝立てを最優先に行いました。


一帯がよく乾いたおかげで、先日のマイナス5℃の大霜を無難に乗り越え、霜焼けで葉が黄色くなることもなく、順調な生育ぶりです。


さて、黒ボク土の改良は、過剰な土壌水分を排出するために、畝を立てて干すことから始まりますが、単に干しただけでは野菜が育ちません。というのも、黒ボク土は保水力の乏しいアロフェン型粘土から成るため、畝を立てるとパサパサに乾いて、野菜が水分を確保できないからです。

そこで、次の段階として、畝の土壌を構成する粘土をアロフェン型からスメクタイト型に転換する取り組みを行います。
アロフェン型は、黒ボク土に含まれる粘土の型で、粘土の主成分であるケイ酸とアルミニウムの比率がおよそ0.5対1となっています。それに対し、スメクタイト型は、世界の穀倉地帯に見られるチェルノーゼム(黒土)に含まれる粘土の型で、ケイ酸とアルミニウムの比率が2対1です。粘土の保水力は、ケイ酸が持つ親水性によって生み出されるため、ケイ酸比率が高い型ほど、保水力が高い粘土になります。

粘土型の転換を考えるに当たり、自然界のケイ酸の動きをイメージしてみます。
(※ケイ酸は、冷水にはわずかに溶けるだけですが、熱水またはアルカリ性の水によく溶ける性質を持ちます。)

山岳に降った雨水は、岩石層に浸み込んで地下水となります。地下水は、伏流水として山腹を流れ下りながら、先ず、岩石中のアルカリ成分(たとえばカリウム)を溶かしてアルカリ性になり、続いて、ケイ酸を溶かし出します(ケイ酸カリウム水溶液)。伏流水は、傾斜の緩やかな山麓で地表に湧出しますが、地表は植物根や根圏微生物の活動によって酸性化しているため、地表に近づくにつれて中和され、ケイ酸を溶かす力を失います。これにより、植物根圏の直下にケイ酸が集積し、弱アルカリ性~中性の粘土硬盤層(スメクタイト型)が形成されます。植物根圏内では、植物がアルカリ成分とともにケイ酸を吸収するため、酸性かつ、ケイ酸比率の低いアロフェン型粘土が形成されます。ブタクサなどの大型野草が繁茂する場所に、厚い黒ボク土層が存在するのは、大型野草が地中深く根を伸ばしてケイ酸を大量に吸い上げるためです。

このようなケイ酸の動きを踏まえると、畝の粘土を保水力の高いスメクタイト型に転換するためには、そこに育った大型野草の枯れた茎葉を分解し、放出されたケイ酸を粘土に吸収させればよいことになります。
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