Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

原初の叡智を思考する「古代から来た未来人、折口信夫」

2010-08-09 | 

 折口信夫…まれびと、民俗学者、釈迢空名義の優れた歌人。
 けっこう、私の折口信夫(おりぐちしのぶ)に対する認識は貧困だ。

 本屋でぱらぱら本をめくっていて、この本と出くわした。
 「古代から来た未来人、折口信夫」中沢新一(ちくまプリマー新書)
 
 中沢新一の著作は、「チベットのモーツァルト」から
 その科学と精霊が交感するような刺激的な言説に惹かれて読み続けていた。
 
 本書の序文から「奇跡の学問」と称揚してやまない中沢新一の
 折口信夫に対する傾倒ぶりが伝わってくる。
 それは日本語で語られる美の佳境であり、
 柳田国男、南方熊楠と共に三人の巨人の頭脳と心が生み出した
 日本人に残されたもっとも貴重な宝物であると言い切る。
 ここまで言われると読まないわけにはゆかない(笑)

 なるほど、ここには現在だからこそ共感できるスピリチャルな叡智が溢れている。
 民俗学の師であった柳田国男に否定され、
 当時は理解されなかった折口信夫の思想の先進性に、やっと時代が追いついてきた。

 近代国家誕生のために編まれた「神道」とは別の、仏教伝来によって淘汰されてゆく
 日本土着の古事記編纂以前の「野生の思想」(ヘーゲルの「アフリカ的段階の概念」
 でありアメリカインディアンの「グレートスピリット」でもある原初的叡智)
 に傾倒してゆく折口信夫の思想の変遷が、中沢新一の深い共感をもって語られる。

 折口信夫の代表作であり、松岡正剛が「日本近代文学の最高の成果」
 と手放しで賞賛する「死者の書」(中公文庫)を読みたくなった。

 
古代から来た未来人 折口信夫 (ちくまプリマー新書)
中沢 新一
筑摩書房

 
 
死者の書・身毒丸 (中公文庫)
折口 信夫
中央公論新社

 
死者の書・口ぶえ (岩波文庫)
折口 信夫
岩波書店

 
 

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3 コメント

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蒸し蒸しと寝苦しい夜更けに (misa)
2010-08-11 00:25:36
以前、西冠お花畑にてカタックリさんとランスケさんの文学青年を立証する文面に感心しお互い頷いた事ですが、
きっと本棚には沢山の書籍が並べられているのでしょうね?
私の場合はかなり違って半分遊び心からの本読みと言ったところでしょうか・・・
子育て真っ最中はその類を何冊か買い求め、
写コンにのめり込んだ時期は毎月本屋で食い入るように立ち読みし、
詩壇の世界で遊んだ頃はあらゆる方面の本を手にしたものです
が、基本的には「絵本」が一番のお気に入り
特に「黒井健」のほのぼのしたタッチがたまらなく好きで「手袋を買いに」や「ごんぎつね」などは今でも目を輝かせてみている叔母さんですよ

いつかは、じっくり何もせず読書に更ける時間を持てたらと思うのですが
中々今の状態では難しいようです
今度は、主人がぎっくり腰で動けず・・・
再就職への道が益々遠くなってます

7/25「夏雲沸く」を拝見した時ですが
実はドキドキしてしまいました
何を隠そう。。。雲が大好きなんです
「空の名前」高橋健司
かなり影響されてます



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夏風邪 (ランスケ)
2010-08-11 20:02:40
misaさん、返信が遅くなりました。
ごめんなさい。

仕事を終えて病院から戻ると、いつもこの時間になってしまいます。
入院中の母が夏風邪をこじらせてたようで、酸素吸入と点滴を受けていました。
大事にならなければ良いのですが…

misaさんも御主人が腰を痛められましたか。
お互いに、災いの種がつきませんね(溜息)

私の本読みは習慣ですから、ほとんど教養とは無縁です。
人と喋ることは苦手なのに、活字の世界では饒舌になってしまします(苦笑)
迷惑でしょうが私の本紹介は、「こんな美味しいもの食べたよ」
みたいなグルメガイドだと思って読み流してください。

新美南吉の世界を描いた「黒井健」の絵本は魅力的でしたね。
福音館書店で多くの絵を描いた「林明子」の絵本も好きでした。
他にも岩波書店の「小さなお家」や「夜明け」なんて絵本も心に残ります。
私にとって絵本は、友達へのプレゼントが切っ掛けだったようです。

「空の名前」もちろん私も持っています。
風景や四季の言葉を綴る日本語の豊饒さを、
改めて認識させてくれたベストセラーでしたね。
そして私は昔から「入道雲」が格別好きです(笑)


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お母様、大事にならなければ良いのですが・・・ (misa)
2010-08-12 23:26:46
高知の暑い夏、よさこい一色の幕が降りました。
心配した夜行バスで早朝、長女が帰省し生き生きと動いていたのでしょうか・・・・
「一番の薬やなあ、そんなに嬉しいか?」
と主人に冷やかされてしまいました。

デザイナーとは別の顔を持つ彼女・・
早速持ち帰った道具を取り出し作業に取り掛かる予定が親戚の不幸が有り、初日から喪服姿となりました。
高齢ではありましたが、暑さもかなり影響があったのではないかとのお医者様の診断だったようで本当に「居り様がない」ですね。

今夜は晴れていたら流星が見られる筈・・・
都会生活がすっかり染みついてしまった娘には何よりの癒しとなるのですが
空は生憎うっすらと雲が掛かり、明日夕刻の天狗高原も期待薄の様子
ブサイクなてるてる坊主を吊るして祈るしかありません

ランスケさんの「入道雲が格別好きです」
には思わず顔を覆ってしまいました
何故って本当は私もそのコメントを入れるつもりが抜けていたのですから・・・

もくもくとわくわくと
見ていて何だか元気になっていくんです

へんなおばさんです
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