どうしたものか風邪が、なかなか癒えない。 やっと熱が下がり咳が治まったのが土曜日。 月曜の雨は山では雪になるかもしれない。その前に山へ入り愛大小屋の冬支度をしておきたかった。 . . . 本文を読む
その日、市街地は色づき始めた樹々と青空の広がる穏やかな秋の一日が始まろうとしていた。 皿ヶ嶺山麓の集落にかかる頃からポツリポツリ雨が降り始めた。 見上げる稜線には雲が垂れ込め、次第に雨脚が強くなってきた。 . . . 本文を読む
午前三時に目覚めた。
仄かな薄明りが天幕越しに闇の表層から滲むように淡く射していた。
昨夜は日没後、深い霧が降りて、一寸先も定かでない漆黒の闇が山上を覆った。
秋も深まったこの時期、日の出の時刻は六時半と遅い。
まだ夜と朝のあわい、夜の底から曙光の気配を感じるには早過ぎる。
訝しく思い、天幕のジッパーをおろし、光の在り処(ありか)を求めた。
東の山の端に三日月が、ぽかり浮いていた。 . . . 本文を読む