Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

緑陰の水音

2010-08-03 | 
 手術後、痛々しかった針や管が徐々に抜かれ、母の容態も安定してきた。
 郷愁の地が、そのまま残されているという朗報が、母の顔に表情を戻し、
 失いかけていた生きてゆくための心の張りを取り戻し始めたようだ。
 面会時間を過ぎて退室するとき見せた手を振りながら「淋しい」
 と哀しそうに微笑む顔に安堵を覚えた…
 (「母の入院」に掲載した能面のように表情を失くした顔が近頃の母だった)

 そして初盆の法事の後、ぽっかり一日空いた。
 弟に連絡して4時前には帰るから母を頼むと伝言。
 思い切って盛夏の山で一日を過ごすことにした。

 選択肢は幾つかあったが、
 第三者に見せることより自分自身が、現在一番撮りたいものを選んだ。
 それは、やはり「森」だ。
 石鎚の山岳風景をテーマとして撮り続ける人は、たくさんいる。
 でも石鎚山系の原生林を撮り続けているのは、私の記憶するかぎり、
 四国の巨樹をライフワークとする石川道夫さんと仁淀川源流域の森と水を
 撮り続ける高知の写真家、高橋宣之さん(私は氏の作風が大好きだ)くらい
 ではないだろうか?(もう一人高知の写真家、前田博史さんも気になる存在)
 そして私自身、森にいる時間が一番癒される。

     
     
     
          
     
     
     

 朝から照りつける陽射しは容赦なく、暑い一日を予感させた。
 ところが皿ヶ嶺越えから山は雲が垂れ込め、すっ涼しいじゃないか…
 石鎚山系も終日雲が覆い、時折夏の陽射しと青空が雲間に覗く。
 こんな霧と木漏れ陽の一日が盛夏の撮影では、ありがたい。
 終日晴天の一日もたまには好いが、やっぱり山は霧が流れたり夕立があって
 潤う樹々や花々が水滴を連ね、雨上がりの空に虹の架かるような変化に富んだ一日が
 気持ち好い(欲張り過ぎか)

 瓶ヶ森まで足を延ばしたため、すっかり遅くなった。
 でも一日快適な、ひんやり山の涼味に浸る撮影行だった。
 蜩(ひぐらし)の残響に包まれながら下山した市街地は「あっあっ暑い~」
 地表から立ち上る暑気に陽炎が揺らぐ…

     
     
             倒れた巨樹に新たな生命が宿る(命は繋がってゆく)



 

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6 コメント

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取り急ぎ・・・ (misa)
2010-08-04 22:10:11
「森」はランスケさんのビタミン剤
眩しい程の緑の光を放ち、源流のせせらぎの水は驚くほど冷たく、
「森」に身を預け、心静かにシャッターを切る瞬間は紛れもなく一人だけのもの・・・・

本当は久々添付メールの予定でしたが(一昨日瓶が森にて夜明けを迎えました)
ブログから森の音が聞こえたような気がして・・

癒されて、穏やかな日々を送る。。ですよね?

また、ゆっくりEメールします

返信する
misaさんの写真世界に期待 (ランスケ)
2010-08-05 00:13:04
瓶ヶ森でお泊りでしたか。
misaさん、だいぶん復調されてきたみたいで安心しました。

夏の瓶ヶ森の朝は、本当に爽やか。
misaさんも清々しい山の英気に触れてリフレッシュですね(笑)

今夏は、たっぷり雨も降ったので源流域の沢も水量豊か、深い緑の森で光と水の煌めきを堪能しました。
そう私自身の心の健康を回復させて、母を見守る日々へ復帰出来そうです。
返信する
堂ケ森~二ノ森~面河 (カタックリ)
2010-08-06 20:47:54
ランスケさん 大好きな森へ思い切って行って
良かったですね~。
素晴らしい写真を見せていただきました。
うっとり~~して見させてもらいました。

数年前の2月末に石鎚山で バッタリお会いしましたね。その時 私の一番大好きなHPは 「石鎚山の四季」さんですと・・・告白しました。どなたかもわからずに・・・。
あの時 「それは 僕です」と言われた時は
びっくりしましたね~。でも 本人にお会いできて とても 嬉しかったことを覚えています。
文学青年のような文章に 素晴らしい写真ですもの。ファンは多かったでしょう。残念でなりませんでした。
また 時々 森へ行って ビタミン補給して
素晴らしい写真を紹介してくださいね。
とっても 嬉しいです。

misaさん 旨いことおっしゃいますね~。
森は ランスケさんのビタミン剤ですか~。
私にとっても 山や森の大自然は ビタミン剤になりますね。misaさんもですよね~。
自分に栄養が(頭にかな~?)ドンドン入っていくのがわかります。フフフ~

私 最近 梅ケ市から 堂ケ森通いをしています。堂ケ森から鞍瀬の頭までの大笹原に魅力を
感じて通っています。
6/24.25に堂ケ森の避難小屋に1泊して 鞍瀬の頭まで行ってお天気が悪かったので 梅ケ市へ下山。(単独)
7/20.21に小屋に1泊して石鎚へ土小屋に下山。
(単独)
8/5.6 中一の男孫を連れて 小屋に1泊して
二ノ森~面河尾根から面河の避難小屋に下り 
小屋で1時間ほど過ごしました。

以前 ランスケさんが 巻き割りや小屋の毛布などを干してくださってたのを思い出し 何か役立つことを思って トイレを使用した際 汚くなっていましたので 私はトイレ掃除を孫は
小屋の土間の掃除をして帰ってきました。
ここに書いたのは 自慢でも何でもありませんが 私は ランスケさんを見習い これを読んだ人が また 見習ってくださったらと思って書きました。
小屋を利用させていただいてる恩返しですね。

帰りは ごみを拾いながら下山。面河登山口よりスカイライン入り口まで歩き この後 二人で ヒッチハイクして たまたま 黒森へ行かれる車だったので 梅ケ市まで送っていただきました。これは 今日のご褒美のような気がしました。また 私も 恩返しをしなっくっちゃ~と思っています。

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私たちは繋がっている (ランスケ)
2010-08-07 00:05:30
カタックリさん、仰る通りです。

私たちは、もっと謙虚な気持ちになれれば、
自然と感謝の気持ちが形に表れてくるはずです。

お盆のこの時期、私という存在があるのは、
父や祖父や祖母そして先祖たちの営々とした繋がりを身近に感じます。
生物多様性と同様に私たちは、決して単独では存在出来ないという
事実に目を向け感謝したいですね。

ちょっと怪しい宗教臭くなってきましたが、
100歳以上の長寿者を疎かにする連日の報道は哀し過ぎます(それと同様に子供を放置した母の悲劇も)
個人の欲望を最優先に解き放ってきた(またそれを煽ってきた)
消費経済社会の当然の帰結だと思います。

いま少し立ち止まって考えるには良い季節(先祖たちを迎える)ではないでしょうか?






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さわやかなコメント (山野貴公子)
2010-08-07 00:43:10
疲れた身体に、それぞれのさわやかなコメントがしみ込んできました。

ありがとうございました。ぐっすり寝られそうです。
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3000m峰完登おめでとうございます (ランスケ)
2010-08-07 18:29:59
山野貴公子(kyoich)さん3000m峰完登おめでとうございます。

最後に日本一の頂に持ってくるところがナイスですね(笑)
百名山という山登りの形態には「どんな意味があるの?」と以前から不思議に
思っていましたが、こちらはシンプルで判り易いですね。

またブログにて3000m峰完登の軌跡を紹介してもらえると嬉しいです。
お疲れ様でした。
返信する

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