Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

戦争について少し考えてみよう

2010-08-14 | 生活、環境
 うだるような暑い夏の日は衰える気配もなく、
 いや台風通過で湿度が増した分、不快指数が上がったような気さえする。

 NHKの戦争特集番組を時間の許す限り、ずっと観ている。
 シベリア抑留、朝鮮併合、爆笑問題の公開討論に
 昨夜の「色つきの悪夢」カラーでよみがえる第二次世界大戦の記憶…

 決して学校の歴史教科書では教えてこなかった戦争の姿(リアル)を伝える姿勢には
 今迄の戦争追悼番組にはなかった熱意を感じる。
 そして番組を観てきて感じたのは、戦争の姿を伝えるのは「教育」だと改めて実感した。
 
 ちょっと唐突だが番組を観ていて、「イラクの人質問題」を思い出した。
 私にとってあの問題は、ずっと咽喉に刺さった棘のように不快な記憶だった。

 思い出してほしい。
 アメリカ(ブッシュ)がイラクに宣戦布告したことを
 いち早く支持した日本(小泉)は、戦後初めての本格的な海外派兵を行った。

 当時、戦火のなかで活動していたNGOやジャーナリストを人質にとる事件が頻発して
 日本政府も自粛を促した。
 そんな中、「高遠さん」を始めとする数人のNGOがテロリストに人質として拉致された。

 その後の官民上げてのパッシングの嵐が凄まじかった。
 「自己責任」という官製用語が錦の御旗のように翻り、誰もが彼らを非難した。
 下品なまでの誹謗中傷が有名週刊誌の紙面に書き連ねられ目を背けるような
 非道な個人攻撃が続いた。

 あまりもの不快感に、これは変だと私自身、感じ始めていた。
 ベトナム戦争でも危険な戦地へ単独で入り込む個人は多数いた。
 (たとえば功名心に駆られたフリーカメラマンなど)
 あの当時は見過ごしていたのに、今回のパッシングは何故?
 決定的に違うのはイラク戦争には日本が参戦しているという事実だろう。
 (後に政府とマスコミの間に報道に関する密約があったことが露見)

 マスコミの下品さには閉口したが(節操なき正義を振りかざすのはいつものこと)
 それまで日本の良識を代弁していたような知識人が、みな口を閉ざしていることが理解できなかった。

 そんな中唯一「この事態はおかしい」と真っ向から批判したのは、
 当時からイラクを訪問していた池澤夏樹ただ一人だった。
 インターネットの池澤のサイト「インパラ通信」で、彼は発言を続けた。
 フランスのジャーナリスト拉致では官民上げての擁護キャンペーンが行われた。
 確かにフランスやドイツは、この戦争に批判的だった。
 でも、この正反対の反応は何?

 あのパッシングが収まった後、感じたのは、
 この国は前の戦争から何も学んでいない。
 また戦争の統制化になると同じような熱狂に巻き込まれるだろうという感想だった。
 私は、あれ以来「自己責任」という言葉を使うことに強い拒否反応を覚える。
 この言葉を使うことが当時の下品な熱狂に加担したような不快感と気味悪さを伴なうから…

 数ヶ月前だったと記憶しているが
 NHKクローズアップ現代で「高遠さん」の現在の姿が放送された。
 何度も自殺を試みるほど追い詰められた自己否定の日々から這い上がった先は、
 またイラクでのNGO活動だった。
 イラクの人々は高遠さんのことを忘れていなかった。
 温かく迎えられたイラクで高遠さんが再生を図ることに安堵を覚えた。

 戦争は個人の尊厳を踏みにじり、殺人と破壊と熱狂が世界を席捲する。
 昨日の番組で若いタレントさんが発言していたが、
 ドイツでは、あの戦争の非道さをデイベートも含めて徹底的に教育する。
 翻って日本は非道さに目隠しをして戦争を正当化し自虐的歴史観と
 真実を子供たちに教育することを否定する。
 戦争のリアルを知らない子供たちが多数を占める日本は、
 きっと、また同じ過ちを繰り返すことだろう。
 
 あえて誤解を承知で極端な言い方をすれば戦争の英雄は平時では「殺人鬼」であり
 戦争の熱狂は、洗脳された「カルト教団」の集団自殺でありサリンをばら撒くテロだ。
 戦争を決して美化したり正当化してはならない。

 図らずも「イラク人質問題」で露見したように、
 この国の政治家やマスコミと多くの国民は、前の戦争からほんど学んでいない。
 戦時下になると同じ「熱狂」にきっと巻き込まれだろう。
 今までほとんど関心が薄かったが「憲法9条」は唯一のセーィフティネットであり
 過ちを繰り返さないための足枷だったと痛感している。
 どんなに不完全であろうと、この憲法を守らないと悲劇は何度も繰り返される。
 そんな危機感を覚えた一週間だった。




 
 
 
 


 

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