天の御柱立つ

 

残暑を忘れたかのように秋が深まってゆく。

９月初旬の瓶ヶ森で、早くも明け方の気温は10℃を大きく下回り５℃を記録した。

この先一週間、平地の天気予報を見ると、最高気温２５℃くらい最低気温１８℃くらいの日が続く。

これは例年なら９月下旬くらいの気温だ。

紅葉は１０℃を下回り、８℃くらいまで下がると一気に進行すると云う。

山地と平地の気温差が、ほぼ１０℃くらい。

このまま推移すると、９月下旬に石鎚山頂付近の紅葉がピークを迎えるなんてことにもなりかねない。

毎年毎年、こう異常気象が続くと、暦の季節感が怪しくなってしまう。

そういえば、北海道の大雪山では早くも紅葉の見頃を迎えているとか。

 

秋の初めは、星空を眺めながら、のんびり瓶ヶ森で過ごそう。

今回も菅さんと海の幸を頂きながら美味い酒を呑むという極楽キャンプへ。

日が暮れると気温は１０℃くらいまで下がる。

温かい格好をして満天の星空の下、舌鼓を打つ贅沢な時間。

やっぱりキャンプは、秋が一番快適。

 

そして昼夜の気温差が大きい秋は、雲海の発生率が高くなる。

なかなかエンジンの掛からなかった山の写真ヤさんも、やっと始動かな？

期待していた雲の海に広がる満天星は残念だった。

でも山の神様は、まったく予期もしない贈り物を授けて下さった。

期待外れのピーカンの夜明けに重い足取りで山頂を目指す。

黎明の空に剃刀のような細い月と明けの明星が掛かる。

山頂の祠で柏手を打ち、お山の神様へ朝の御挨拶。

力ないお祈りに、気分を害されたのか？

その朝は神々の聖地である瓶ヶ森の本領発揮。

神話世界を見せつけられた。

東雲に黎明の朱が走る頃、みるみる羊雲が３６０度全天に広がり始める。

空と地の境から茜の色が走り、それは時間をかけて空を覆う羊の群れを染めてゆく。

見上げる満天をピンクの羊が覆う頃、

天孫降臨。

天の御柱が、すーっと立ち上がる。

ピンクの羊は緋色に染まり、天の御柱（太陽柱）が、輝く雲を突いて高く天上へ延びる。

「おぉーっ」

これほど荘厳な朝焼け雲は、お山へ通い続けた長い時間の中でも一度か二度ほどしか体験していない。

一向にモチベーションの上がらない怠け者に「喝ーっ」を入れるお山の神様からの覚醒の一撃。

さぁ、今秋の石鎚は、久しぶりに頑張ってみようか？