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【277】無口で陰気な架空の女

 透病【158】にかかったのか、ひどく肩がこりはじめて病院に行ったのだけれど、身分証がないからと相手にしてもらえなかったの。その頃はどこにいても雨が降ってくる【279】し、すごく喋りたいのに唸り声しか出なくて気が狂いそうだった。そんなある日、汚れた白衣をまとったどこか中性的な書物と出会ったの。雨が降っていたわ。かなり古い版の〈現代医学事典〉で、時代的に誤った記述が多すぎるためにどぶ川に捨てられたらしいの。でも、そのおかげで硝子の進行をくい止めることができたのよ。少しばかり危ない一幕【280】もあったのだけれど。


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【276】あんたは何をしようとしていた

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