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【120】勝利を収めた・二面・戦争の終結

 終戦記念の祝典として坦子菌類【128】を用いた透化実験が行われた二面と三面には、地表から超巨大な子実体が生え、胞子を撒き散らしながら色を吸収しつくしていった。それは溜息が出るほどに美しい光景だったという。見とれていた住人の半数が胞子を吸い込んで硝子化【158】し、残ったものは他面へ移住して誰もいなくなった。二重の透化が行われていたのである。すべての色が失われると子実体は枯れてしまったが、胞子を入手したいくつかの製薬会社では、手頃な大きさになるまで子実体の改良を重ね、過色症に有効な湿布薬として、あるいは拒色症に有効な頓服薬として販売している。二面と三面【32】大ガラス【192】に住人が戻りはじめて久しいが、地表では顎を上げうっとりとした表情を浮かべて立ちつくす美しいガラスの像を無数に目にすることができる。彼らは、かつて屹立していた子実体や傘の下から降り注ぐ胞子を、今でも見上げているのだ。

リンク元【114】某ファッションブランド・国家・拘束衣・牧場・傷痍モデル

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