注釈の注釈による超現実詩小説
棺詰工場のシーラカンス
【127】一顔レフカメラ・フィルム
定着液を塗布した鏡【146】を引き伸ばし、ロール状に巻いたフィルムを鼻腔に収めた装置が一顔レフカメラである。眼球を模した左右のレンズによって、肉眼との視差がない立体的な映像を記録することができる。コマ数、記録時間、解像度などの諸要素は、フィルムの原料となる鏡のプロファイルに左右される。
撮影者はデスマスク【175】状に凹んだカメラの後頭部に顔を押しつけ、ファインダーを双眸で覗き込みながら、左耳で絞りを調節し、右耳で焦点を合わせて撮影する。別売りの望遠や広角用レンズをはめた眼鏡をかけることもできる。
人間の視覚構造を元にして開発された一顔レフカメラが、人間の頭部を象るのは当然の帰結といえよう。当初はダーツ協会【70】から払い下げられた〈顔もどき〉が用いられていたが、現在は撮影用オリジナルの複製頭部が製作されている。テレビカメラ(【155】を参照)が受けた影響は計り知れない。
リンク元【118】モノクロ映画の撮影・コマとコマとの狭間に欠落していく時間
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