創作 福子の愛と別離 16 )

2024年07月30日 02時50分05秒 | 創作欄

夜の北の丸公園の桜は、晃と福子の深い思い出となった。

晃は、突然にも能動的となり福子を桜のもとで、強く抱きしめ、彼女の唇に唇を重ね吸ったのだ。

福子は、一瞬その晃の行為には、たじろいのであるが、覚悟を決めて身を寄せた。

「私を、どこまでも愛してくてるのね」福子は喘ぐ声で尋ねる。

だが、何故か晃は無言であったのだ。

そして、二人は愛を確かめあう衝動にかられて西神田の和風旅館へ向かった。

旅館の向かいには、福子の従姉が学んだ私立大学の校舎があった。

福子は、性の行為が終わった後に意を決して自分が忌まわしい宗教団体の3世であることを告げる。

だが、晃はそのことを冷静に受け止めたのだ。

「福子さん、宗教は何のためにあると思いますか?」福子には意外な問いかけだった。

「宗教は、人を幸せにするためのものです。もしも、宗教で不幸になったら、それは宗教の敗北」晃は断言し、福子の眼を射るように凝視する。

そして、晃の強く指摘する言葉は、福子の心に深く突き刺さったのである。

 

 

参考

北の丸公園は江戸時代に江戸城北の丸があった場所で、公園の名称や町名はこのことに由来する。

明治時代からは近衛師団の兵営地等として利用され多くの建物が建てられたが、戦後になり皇居周辺の緑地として活用されることが決定、森林公園として改修が進められた。

旧皇室園地に由来する国民公園皇居外苑の一部に編入され、昭和44(1969)年に昭和天皇の還暦を記念して開園、広く一般に公開された。


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