漆原将司は、恋した人が自ら命を絶ってことに、大きな衝撃を受け続けていた。
人は、何時かは必ず死ぬ。
そのことは、誰人も否定できない現実である。
だが、彼の恋人がまだ可能性がある若い生命を自らの意志で断つことへの不可解さや違和感には、いつまでも拘りが尽きなかった。
思うに人生の命題とは何か?
勝ち残り生き残ることか?
幸福になることか?
生まれた意味や真理を知ることか?
人は、何らかの使命を持って生まれてきたといえるのではないだろうか。
漆原将司も、衝動的に死にたくなった時が、ないわけではない。
それは21歳の、大学生の時であった。
小田急線の電車が新宿駅に到着した時であった。
多くの乗客は左側のホームへ降りて行った。
だが、将司は右側のホームへ降りたのだ。
その方が、駅の階段に近かったからであるが、それは、紛れもなくルール違反だった。
突然、将司と肩が触れた60代の年齢と思われる人が、「何で右側から降りるんだ」と怒りを募らせ、彼の頬を平手で殴る。
将司は、咄嗟に反撃して、その老人をホーム上に殴り倒してしまう。
彼は高校生から空手を習っていたので、思わず手が反応してしまったのだ。
彼は、その現場をいて目撃した運転手と乗客たちによって取り押さえられる。
そして結局、彼は新宿駅からパトカーに乗せられ、傷害罪で淀屋警察に連行される。
警察に留置されれた彼は「人生、終わったな」と死を思うのであった。
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